7、鍋は二日目も美味いっていうだろ?つまりそういう事だ。
投稿時間が二時間ほど遅れましたが、槻谷 充希です。
最近自分の部屋が暑いな~と思っていたら暖房で26°でした。
妹の嫌がらせでした。許すまじ。
いつもよりちょい長めですが楽しんでいってくれたら幸いです。
綾瀬達と合流すると小日向のド派手な洋服が俺を出迎えた。なんか黒ベースに髑髏マークがついてるシャツとジャラジャラしたチェーンのついた短パン。金髪が映えると言えばいいのか?……なんか、一昔前のチャラ男みたいだな。
「小日向……それで今日一日過ごすのか?」
「当たり前ジャン?ってか、それはこっちの台詞的な?」
「パーカーの下に白Tシャツ、ジーパンで悪かったな。」
自分でも子供っぽいというか……ダサいのは分かる。だが、動きやすさやストレスを考えると自分が楽なこのコーデに落ち着いてしまう。これはきっと何かの力が働いているんだ。そういう事にしよう。そしてやっと俺の名前を覚えてくれたみたいだ。以降のボケは右手が飛んでいくからな小日向?
「服装の事はいいから出発していいか?」
ここで時間を無駄にすると明日までに集落に着けなくなってしまうので先を急ごうとしたのだが……
「私たちの服装はコメントをくれないのね……」
綾瀬さん?聞こえないように言ってるようだけどきこえてるからね?それを言うと気があるみたいだから言わないのよ?変な期待させるよりかはいいと思うのだが?落ち込ませないためには何かコメントしたほうがいいのか?……ここは文系脳に頼るか……
「……綾瀬さんは何着ても似合うよ?」
「……そういう時は可愛いって言ってほしいのよ?」
知ってて言わないのだよ。それと隣の成白がなんかこっちをみて、もじもじ?いや、ウズウズしてるのだが?これは……褒めなければならないのか?……褒めればいいんですね?
「あぁ……成白?」
「……な、何?」
「えっと……可愛いよ?」
「…………」
真っ赤になって、黙ってしまった。それと同時に隣の綾瀬から押しつぶされそうなほど怒気を感じる。この怒気に反応したら俺は終わってしまう気がした。いろいろな意味で。
「何故、私には『似合ってる』で成白さんには『可愛いよ?』なのかしら?そこのところを詳しく説明していただきたいのだけれど?」
「……さぁて、そろそろ出発しないとなぁ!!」
「ちょっと!きいてるの!?」
聞いててスルーしてるの!!この後、無事出発できた。到着後めちゃくちゃ怒られたのは、また別のお話……
― ― ― ― ―
さて、綾瀬から小一時間お説教を受けた後、俺はテント設営の為に成白たちの元に戻った。案の定小日向はテントを張る努力もしていなかった。やっぱこいつ嫌い。俺はテントを張ってから小日向を収納。その後夕食の準備に取り掛かった。今日は猪鍋になった。現段階で作れる美味いものは俺の頭の中にはこれしか残っていなかった……美味しいから許して……
「……こんなもんでいいかな。」
「柾人君、今日も?」
「そうだけど、やっぱり食べづらいか……?」
「ちょっとね……」
「そうか、昨日は醤油ベースだったから今日は塩ベースだったんだが……」
「もちろん、美味しいから食べるからね!?」
食べてはくれるようだ。よかった……料理にこだわりはない方だが流石に食べてもらえないのは心に来る。
「明日は違う料理がいいかな……」
「分かった。何か用意しておくよ。」
三日連続鍋は普通に手抜きになるしダメだよな……とにかく何か考えておかなきゃだよな。
「とにかく皆に食べさせてから寝かせないとな……」
なんだか世の中のお母さんの苦労が分かった気がする……多分もっと苦労してるんだろうけど。そんな事を考えていると匂いにつられたのか綾瀬達が集まった。
「できたかしら?……って、また熊鍋なの?」
「熊じゃない。猪。」
「猪!?……食べられるの?」
「食べられないものは鍋にしない。」
そのまま夕食を済ませ、就寝――したかったのだが、珍しく眠気が来ないので夜風に当たって少し涼むことにした。
「……落ち着くな。」
一人になれる時間がなかったせいか自分と向き合うことが酷く懐かしことに感じてしまった。これを感傷に浸るというのだろうか……違うね。知ってた。意識が散っていたせいですぐ隣まで魔獣が来ていることに気付かないでいた。ハナツンされて気付いたけど。
「どうした?お前も寝れないのか?」
返答がないと分かっていても問いかけずにはいられなかった。
「主が、寂しそうにしていたら近くにいる。それが眷属の義務……違うな、権利ではないのですか?」
「そんな堅苦しく考えなくて……え?」
「……何か可笑しな事を言いましたでしょうか??」
「……話せるのか?」
「ええ、勿論。主はすでにご存じかと思っていたのですが……」
「初耳だよ!?みんなの前でしゃべらないし。知能は高いと思っていたけど、此処までとは……」
いきなり話し出したことで若干取り乱してしまった。しかし、意思疎通がとれるのは大きいよな……
「ちなみに、みんなの前で話さないのは、なんで?」
「……主から許可がないのと、私達は主以外の人間に触れられることを好みません。主の反応から察するに、主の世界には言語を話す魔獣はいないのでしょう。珍しい物を見た時に人間は触れようとします。それが嫌なのです。」
「確かにな……ん?なんで俺が別の世界の人間だって分かったんだ?」
「主には、魔力がありません。この世界の人間は赤子でさえも魔力をもっています。つまりその法則が当てはまらない主は別の世界の人間。異世界人となります。」
「そういう事か。」
ここまでの知能があって俺に負けたのか……本能には勝てないってことか?犬は金属音嫌いだしな……
「そうそう、声の件だけど、みんなの前で出してもいいよ。触られることに関しては……擬人化ってできる?」
「擬人化ですか?……できなくもないですが……」
「やってみてくれないかな?」
「……仕方ない主さまですね……」
煙と共に現れたのは犬耳と尻尾の生えた美少女だった。
「…………」
「……あの、主?あんまり凝視するのは……恥ずかしいのでお止め下さい……」
美しい。その一言でしか言い表せないほどだった。俺は初めて息を呑むという事を経験した。それと同時に目の前の美少女が裸であることに気づいた。それもそうだよな……変身前服着てなかったし。風邪をひいたら可哀想だしパーカーを渡し羽織らせてから話を続けた。
「お前って女の子だったんだな……」
「……ご存じなかったのですか?少し悲しいですね……」
「ごめん。」
「……いいですよ、別に。私は魔獣ですしね。」
そう言う彼女はどこか悲しそうだった。これからは俺だけでもこの子と真摯に向き合うことにした。
「……ところで、この耳と尻尾は消せないのかな?」
「耳に関しては出来なくもないですが、尻尾に関しては無理ですね。」
「理由を聞いてもいいかな?」
「……尻尾は私達魔獣のアンテナの様なものです。これが無くなれば仲間の位置の把握、魔力循環などの様々な事が実行不可になってしまいます。」
「……そうか、そんなに重要な部位なら無理強いは出来ないな……」
魔獣とみんなが意思疎通できればよかったのだが……
「分かった。みんなの前では普通に魔獣の姿のままでいてくれ。」
「いいのですか?」
「勿論。それに、その姿を維持するのは辛いんだろ?」
「……なぜそれを?」
「簡単な事だ。その姿になってからのお前は呼吸が早かったからな。」
それだけの事か?と思われがちだが生き物を観察する上で、呼吸というのは結構重要だったりする。風邪を引いたときに呼吸が辛くなるのは脳が酸素を必要として呼吸を早くする指令を出すから。とか。
「……やはり、主はすごい御方ですね。」
「俺よりすごい奴はこの世界に……いや、あっちの世界にごまんと居るよ。」
「主より凄い人間が……凄まじい世界ですね……」
「そんな事無いよ?あっちの人類は失敗ばかりだしね。政治利益の為だけに国同士で滅ぼしあうんだから。」
「……どの世界も人類のやることは変わらないようですね。」
「こっちもか……でもこっちなら何か変えられるかもな。」
「そうですね……」
心地よい沈黙が二人の間に流れた後に気づいた。
「……そういえば、お前の名前決めてないな……」
「……名前ですか?主が呼びたいように呼んで下されば私は幸せですよ?」
「そういう訳にもいかないだろ……じゃあ、ミミ。」
「……?ミミ?それが私の名前ですか?」
「そうだよ。今日からよろしく。ミミ。」
「……有難う……御座います……」
ミミは泣きながら感謝を伝えてきた。そのあとはミミが泣き止むまで待った後二人でテントまで戻り、別々に眠りに就いた。
次回も楽しみにして……え?
次回の準備はしてるのかって?そんなの……してると思うのかい?
計画性ゼロの作者が書き溜めをしてるとでも?
否である!!
読者の皆には鮮度最高のぴちぴちの状態の小説を読んでもらいたい。
つまり作者は基本的に書き溜めをしない!!
更新が遅いのは基本的にこの書き溜めをしないというところが大きいのだが、作者も頑張って書きだめをしようとしているのだが、ほかの作品が気になって読みに行ってしまうなんて読者の皆様に言えるわけがない。
……こんな長い茶番みたいな後書きをよんでくれてありがとう!!
次回もお楽しみに!!