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第2話 Youth・Stray・Labyrinth(Ⅱ)

 場違いな所に呼び出されてしまった。

 話がある、そう言われてやってきた会社の下の喫茶店。はっきり言って気まずい。周りのテーブルを見渡してみても席は全て老若問わず女性ばかり。その一角で僕は、胡散臭さマックスな出で立ちの男性と額を突き合わせているなんてシュールでもコメディでもなく、もはやホラー展開であろう。にも拘らず、ホラー展開の元凶たるこの男性は一心不乱にパンケーキを口いっぱいに頬張っている。


「このパンケーキってなぁ確かにうめぇんだが甘過ぎていけねぇ。あぁそこの姉ちゃん、悪ぃけどこの空いた皿全部下げてくんねぇか。んで、この店のパスタ全種類持って来てくれ」


 かしこまりましたぁ、と満面の円顔で伝票を書きながら厨房へと駆け込む足取りは僅かだが宙に浮いているように見えた。


「てゆーか、どんだけ食べれば気が済むんですか!」

「そう言うなよ。ここンとこまともに飯食ってる暇が無くてな。おかげで胃の中がサプリまみれだ」

「何してたんですか……」


 相変わらずだなと呆れていたが、急にケイさんの目に鋭さが宿る。


「何って言われりゃ、まぁ、取材だな。追っかけてたんだよ……フェイを」


 眼光鋭いままテーブルいっぱいに並べられたパスタをすすりあげるその姿をはたして笑っていいものだろうか。いや、ここは堪えよう。


「調べていけばいくほどヤツが何者なのか分からなくなっちまってな。ん、んめぇな!」


 おそらく、この三ヶ月の間にケイさんはヤバい道を歩いてきたのだろう。レイアさんに言われた事を思い出すが、口いっぱいにミートソースパスタを頬張る姿からはおよそ想像できるものではない。


「それで、話っていうのは何ですか、ケイさん」

「んあ?」


 既に数皿分を平らげている彼の前には、まだプレートがいくつも並んでいる。どれだけ食べれば彼の胃袋は満たされると言うのか。

 数度の咀嚼を済ませ、傍らのグラスに入った水を一気に飲み干し一旦の落ち着きを取り戻したケイさんが口を開く。


「話っつーか、お前らに渡しておこうと思ってな」


 投げ渡されたソレは一枚のマイクロチップだった。


「これは……?」

「かろうじて入手できたデータだ、モバイルにでも入れておけ」


 早速自分のモバイルへデータを転送している僕を尻目にケイさんが話を続ける。


「当時のニュース記事だが、まぁ取りあえず日付を見てみろ」

「日付……ですか?」


 データ転送が完了したモバイルの画面には写真等は無かったが、記事の中にあった日付は『宇宙暦701年6月27日』とあった。


「随分と古い記事ですね……」


 フォークの尖端で記事の先を読めと促され、目線を進めていくと驚くべき人物の名が記されていた。


「同名の別人……という可能性はありませんか?」

「最初は俺もそう思った。だが、その記事のタイトルを見てもそう言えるか?」

「タイトル?」


 半信半疑のまま────いや、正確には僅かな信憑性は感じていたのだけど────言われるままに見出しから黙読していくうちにソレは確信へと変わる。角度を変えて見てみてもどうやったって目に入る『ホムンクルス』の六文字とその名前から想起される人物は一人しかいないのだから。




【惑星ロキにある王立遺伝子工学研究所の主任研究者であるフェイ・シルフォイ博士による、人類初のホムンクルス精製実験が無事に成功を果たした】




 見出しからのネタバレ感も、その記事が約500年前という事実が全ての感覚を狂わせる。それもそのはず、つい三ヶ月前に僕達は、この記事で称賛を浴びている人物と邂逅を果たしているのだから。

 テーブルの上のパスタをあらかた片付けたケイさんは、メニュー表を眺めながら通りすがるウェイトレスにデザートのオーダーを済ませる。まだ食べるのか……


「ホムンクルスの精製実験……それにこのフェイという名前……これってやっぱり……」

「俺達の知るフェイ・シルフォイ、だろうな」

「でもこれは500年も前の記事ですよ!? あり得ないですよ!」


 僕達が対峙したフェイは、年齢的には見たところ僕よりも少し上、ケイさんやアインさんと同じくらいだと思われた。しかしこの記事が本物だとするならば、フェイ・シルフォイは過去の人物となる。ならば、僕達の知るフェイ・シルフォイと同一人物であるはずが無い。


「お前が何を思っているかは聞かずとも分かる。何でヤツが500年も前に存在していたのかってのを俺なりに考察してみたが、辿り着いた答えは……」


 耳を貸せというジェスチャーに応えて聞かされたケイさんの考察に僕は文字通り我が耳を疑った。

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