ダスト ~青柳充の終わりなき旅~
※この物語は『ダスト』を読んでからに読んでください。
目の前に広がるのは青く澄み切った空に鳶が飛び回っていて、稲穂が風と共に踊っているようだ。
川がゆっくりと流れ、カエルが仲間を探すように鳴いている。
ここは超がつくほどの田舎町。
スーパーはあるもののコンビニはない。
高校はあるものの大学はない。
家はあるものの隣が1キロほど離れている。
畑の真ん中で汗を垂らしながら必死に土を耕している金髪の青年は「青柳 充」。
大企業の社長を持つもののその性格がゆえにモテモテとはいかなかった高校生活を送ってきた。
彼には1つ、目標がある。
一言で言えば人探しである。
どこにいるか、どんな格好なのか。
身長、顔立ち、癖など覚えていることはほとんどない。
覚えていることと言えばカップルであることと、彼の人生に大きな分岐点を作り、多くの感動を与えた人物達であることだけだ。
彼の原動力は覚えていない記憶を知りたい。それだけだ。
人探しをして早3年、ヒントすら見つからないでいた。
今は祖母の家の農業を手伝いながら時折人探しを続けている。
「ばーちゃん?そろそろ時間だからもう行くね」
畑を駆けて家に入ると玄関で作業着を脱ぎ、大きめのバックパックを背負って自転車に乗った。
畑を見ると作業を休めている祖母が手を振っている。
快晴の空模様の中をペダルを強く回して目的地へと向かった。
小一時間かけて隣町に出て、バスに乗り込む。
そこからまた1時間。吐き気に襲われながらバスに揺られて空港へ向かった。
飛行機に乗り、たどり着いたのは北国、北海道だった。
肌寒く、もうすぐ雪が降りそうな様子がある。
何故ここに来たかと言うと、目標達成のヒントがあると思われるからだ。
向かったの函館。
ここではかつて大火災があり、僕が住んでいた紅蘭市と似たような事が起こっていたからだ。
栄えてる街から山の方へ行くと1件の家があった。
表札らしきものには『季弥音』と書かれてあった。
訪ねることに躊躇していたら1人のおばあさんが出てきた。
「あなた、光を浴びた人だね」
こちらを向いて不思議なことを言った。
「そこの少年だよ。7色の光を浴びてしまって自分を失ってしまったんだね」
手招きをされ、それに釣られて山の奥の方に行った。
ひとつの石碑の前で止まり星座をした。
「影のものよ。そなた達が放った光が世を乱してしまい、その乱れを正そうとする者が現れた。そなたが遺したものを残された私が代わりに授けます。安らかなる眠りにお戻り下さい」
そしてお経を読んだ末、石碑に置かれている巻き物を渡してきた。
「ここにお前さんの探している答えがある。たどり着いた先には何があるのか分からない。だが、後悔はしないはずだよ。さ、もうお帰りなさい」
来た道を帰り、夕暮れのバス停で巻き物を開いた。
そこにあったのは大きな絵と箇条書きで書かれた年間表があった。
そして最後に青柳充へと書かれた文があった。
「充。全てを忘れて新たな道を進んでいると思うけど、もしもこれを読んでいるのであれば一つだけ伝えたいことがある。」
赤字で書かれ、震えた字で
「愛されながら塵になれて、お前に会えて良かった。」
僕の涙が元々巻物にあった丸いシミの上に垂れていった。
バス停のベンチに座り、紙とペンを出した。
ベンチの後ろ。誰にも気づかれないだろう場所にひとつの手紙を置いた。
風で飛ばされないよう、少し大きめの石に充と書いて手紙の中心に置いた。
「俺もお前に愛されていてよかったよ。また会おうな、」
自転車で紅蘭市へ戻って行った。
後ろについてきている影が僕の背中を守ってくれているように思えた。
その影は炎のように少し揺らめいた。




