表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説集10 (451話~最新話)

一度の願い

作者: 蹴沢缶九郎

突然の嵐で乗っていた船が難破し、たった一人無人島に漂着した男がいた。命は助かったものの、自ら置かれた状況に、男は憂い絶望していた。

生き抜く術を持たない男が途方に暮れ、浜辺をさ迷っていると、何処からか流されてきたのだろうか、足元の砂に半分程埋まった黄金のランプを見つけた。男は何かにすがる様にランプを掘り起こすと、手に取り、まじまじと見つめた。ランプは妖しく光り輝き、その光にはどこか人を魅了する力があるようだった。

思わず男はランプを二度三度と擦ってみた。その行動に何の意味があるのか男自身にもわからなかったが、何故かそうしなければいけないような、そう思わせてしまう不思議な力がランプにはあるのだった。

男がランプを擦った次の瞬間、ランプから煙と共に魔人が現れ、男に言った。


「私を目覚めさせたのは、どうやらお前のようだな。礼に一つだけ願いを叶えてやろう」


魔人の言葉に男は喜びの声を上げた。


「やった!! それは本当ですか!? これで助かるぞ!! 僕をこの無人島から救ってください!!」


男の願いを聞いた魔人は意外そうに言った。


「これは驚いた。そんな願いでいいのか? 金持ちにでも、不老長寿でもいいのだぞ。叶えられる願いは一つだけなのだ、よく考えろ」


「とんでもない!! こんな無人島で金持ちや不老長寿になっても仕方がない!! …実は、僕は今日この無人島に漂着しまして、早くここから脱出したいのです」


「…本当にその願いでいいのだな?」


魔人の問いに、


「是非その願いでお願いします!!」


と、男が答えると、魔人は指先から光を発し、光に包まれた男の身体は半透明となり、徐々に無人島から移動していった。

男が無人島から消え去る間際、魔人は不思議そうに男に言った。


「しかし私には理解出来ない。脱出しようと思えば、自力で脱出出来たのではないか?」


と男の後方を指差し、潮が引き、本島と陸地が繋がった無人島の光景を見た男は、何やら魔人に向かい叫んでいたが、全てが遅く、消えゆく身体では言葉も魔人には届かなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ラスト、男の叫びが聞こえてくるようでした・・・・・・。 非現実なのに、がっかり感はリアルで面白かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ