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93 露出の動機
街に露出狂(40代独身童貞無職)が現れた。
「やだ、なにあれ」
「おじさん、はだかだー」
「しっ、見ちゃだめ!」
「おい、あんた、何やってんだ?」
「……」
露出狂は答えない。ただ、不可解な笑みを浮かべるばかり。
と、そこへ――
「動くな、止まりなさい! 止まらんと撃つぞ!」
通報を受けた警官がやって来た。
露出狂は、
「……」
何も言わず不可解な笑みを浮かべていた。
そして舞台は取調室へ移る。
「……」
「あんた、どうしてあんなことをしたんだ?」
「……」
「どうして全裸で街を歩いたんだ?」
「……」
露出狂は答えない。手錠の鎖がジャラリと鳴り、何も履いていない尻の下のパイプ椅子は硬そうだ。
「答えろ!」
「……」
刑事が机をバンと叩き、立ち上がる。今にもつかみ掛からんばかりの剣幕だ。
この時、終始不可解な笑みを浮かべていた露出狂の口が小さく動いた。
「……てやりました」
「なに?」
刑事の表情が一層険しくなる。
「……しくてやりました」
「なんだって?」
刑事が耳を近づける。
「いいねが欲しくてやりました」
「……!」
刑事は驚きで目を見張った。