9 孔子様と痴漢
車輪がレールの上を走る、規則的な金属の音が聞こえている。
ある日、孔子様が電車に乗っていた時の話である。
混雑した車両の片隅で、サラリーマン風の若い男が、女子高生に痴漢を働いていた。
男は、女子高生の胸を執拗にもんでいる。その弾力を楽しむように、執拗にもみしだき、両手で執拗にもてあそんでいた。
やがて、耐えられなくなった女子高生が振り向き、弱々しい声で、
「や、やめてください……」
と言った。その目は、羞恥と恐怖のため、涙で潤んでいた。
しかし、男は行為をやめない。それどころか、さらに執拗に女子高生の胸をもみしだいた。
ところが、その時だった……ガッ! と何者かが男の股間を後ろからつかんだ。
男の股間に激痛が走り、驚愕と共に男が振り返ると、
「だっ、誰だあんたは?」
そこにいたのは、着物姿に冠を被った古代中国風の男。儒学の祖にして、我らが孔子様であった。
何の感情も読み取れない、厳めしい無表情で、孔子様はさらに力を込めた。
「や、やめてください!」
男が悲鳴を上げる。その目は、痛みと恐怖のため、涙で潤んでいた。
「やめてください!」
男が再び叫ぶ。しかし、ここでやめる孔子様であろうか。正義の怒りと共に、孔子様は叫んだ。
「己ノ欲セザル所ハ人ニ施スコトナカレ!」
パキイッ! 孔子様は男の金玉を握り潰した。