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89 歩き読書

 ドン!

「いて!」

「……」

「おい、お前」

「はい?」

「んだよ、いってーな。お前、俺にぶつかりやがったな。転んじまったじゃねえかよ。どうしてくれんだ?」

「すいません」

「てめー、しかもただぶつかっただけじゃなくて、歩きながら本を読んでやがったな。そういうの、まじで迷惑なんだよ。前方不注意にも程があるだろうが」

「すいません」

「土下座だ! 土下座しろ、この野郎!」

「すいません。それはご勘弁を」

「なんでだよ? 土下座して謝れよ?」

「すいません。薪が落ちるので」

「薪? 薪が何だよ? 不注意で人様にぶつかっておいて土下座もしねーのか? てめーはそんなに偉いのかよ? そうだ、名を名乗れ。てめーの名前を教えやがれ」

「二宮金次郎です」

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