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84 職業不詳

 沈黙が支配する取調室で、二人の男が向かい合っている。

 聞こえてくる音といえば、パイプ椅子に背を預けた刑事が、いらだたしそうに机を指でコツコツと叩く音だけだった。

 被疑者とおぼしき男は固く口を閉ざしている。

 やがて刑事が口を開いた。

「昨日、正午過ぎ、二十代女性が住むアパートのベランダにて、被害女性の下着数点を物色していたところを、巡回中の署員によって現行犯逮捕。この事実に間違いないか?」

「ああ、そうだ。間違いない」

 意外にもはっきりした声で、無精髭の被疑者が答えた。

「犯行動機は……学術的興味から? って、なんだこりゃ? この供述は確かにお前がしたものか?」

「そうだ」

 無精髭の男が少し笑ったように見えた。

「それで、職業は……職業不詳ってことでいいのか?」

「違う」

 無精髭の男の目がキラリと光った。

「違う、だと?」

 刑事の目が険しくなる。無精髭の男は両肘を机の上に置き、両手を口元で組み合わせた。そして、帽子の縁の陰で静かに両目を光らせつつ、こう言った。

「俺はトレジャーハンターだ」

 刑事が目をみはった。そして額に手を当てて、深い、深い、ため息をついた。

「それは、つまり――」

 刑事が目線を上げ、射るような視線を投げた。

「余罪があるということか?」

「……」

 トレジャーハンターは答えない。無言の内に肯定してみせたも同然だった。

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