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8 孔子様

 遠い昔、古代中国に時空の歪みが発生し、ある人物が飲み込まれた。

 ある人物とは、かの有名な思想家、儒学の祖、他ならぬ孔子様その人である。

 孔子様が飛ばされた先は、ビルが立ち並ぶ現代社会、風紀の乱れた、ある大都会であった。

 孔子様は気付くと、エスカレーターの上に乗っていた。ゆっくりとした速度で、着物姿に冠をかぶった、生真面目な姿が運ばれていく。

 やがて、孔子様は顔を上げた。その瞬間、その目がカッと見開かれた。

 エスカレーターの数段上を、ショートパンツの若い娘が、適度な肉付きの白い足をさらしながら、また、やはり適度な肉付きの丸い尻の輪郭をあらわにしながら、ゆっくりとした速度で、運ばれていくではないか。

 この扇情的な光景に、やはり儒学の祖孔子も人の子、劣情を催しただろうか。目の前の光景に狂喜乱舞し、その目を血走らせただろうか。いや、そうではなかった。

 孔子様は娘の後姿を眺めながら、厳かな口調でこう呟いた。

「過ギタルハ及バザルガ如シ……」

 見せ過ぎはかえって興醒めする。

 これこそ真理! これこそ君子の言! さすがは儒学の祖! 孔子様のおっしゃることは深い!

 孔子様は、娘がエスカレーターを降りるまで、その後姿を眺め続けた。

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