78 ちゃんとした客
トゥルルルル。トゥルルルル。
『はい、こちら、パソコン通販ショップクラッシュ、販売受付担当の田中です』
「どうも、お忙しいところ恐縮です。僕は吉村という者です。新しいノートパソコンを購入させて頂きたいのですが」
『はい、かしこまりました。どのような構成のノートパソコンをご希望でしょうか?』
「はい、まずOSが○☓△、CPUが☓○△、ストレージは○△☓、メモリが○△GBのものをお願いします」
『はい、かしこまりました。では型式は○△☓-☓○○でよろしいでしょうか?』
「はい、それでお願いします」
『それでは、住所と電話番号、メールアドレスをどうぞ』
「はい、かくかくしかじか」
『はい、ありがとうございます。それでは発送の手続きをさせて頂きますね』
「よろしくお願いします」
『……なんだか』
「はい?」
『いえ、なんだか、ちゃんとしたお客さんて久しぶりで』
「ちゃんとした客が久しぶり、ですか?」
『はい、大きな声でクレームを怒鳴って来られるお客様とか、私が女性と知ると、なんの電話と勘違いしているのか、セクハラじみた言葉をかけて来るお客様とか、色々なお客様がいらっしゃって、だから、吉村様のようなちゃんとしたお客様は、実は久しぶりなんです』
「そうですか、それは大変ですね」
『すいません、仕事の愚痴なんか言ってしまって』
「いえ、お気になさらず。ご心中お察しします」
『ふふ、本当にちゃんとしたお客様ですね』
「いえ」
『それでは、パソコンの発送させて頂きます』
「はい、ありがとうございました。失礼します」
『失礼いたします』
プツン。
「ふう……」
薄暗い部屋の中で、スマホを片手に、裸形の男がゆっくりと椅子から立ち上がった。
吉村泰三。三十二歳。独身。派遣社員。
女性相手の電話では、常に全裸と決めている。




