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67 ルール違反

 権堂は一人の体育教師である。権堂はとある高校で生活指導を担当している。

 四月。桜舞い散る校門で、権堂は登校して来た生徒たちと挨拶を交わしている。

「おはよう」

「おはようございます」

 権堂の挨拶に、どの生徒も真面目そうな顔で挨拶を返す。服装もしっかりしており、制服のブレザーにも乱れはなく、校則通りの着用方法が守られている。

 このことに、権堂は心からの満足を抱いていた。権堂は秩序が守られることを何より重んじている。

 規範や法を守ること。これこそが、人が人として生きていく上で最も重要なことであると、権堂は考える。法を重んじ守ること、そのことが人を人たらしめるのだ。法を守れないこと、それはすなわち、自身の自身に対する敗北であり、法を破るということはつまり、自らが人を辞めて獣に堕ちるということを意味してはいないか。権堂は、己の生徒には遵法精神を第一に考える立派な大人に育ってほしいと、常日頃考えているのであった。

 と、不意に、権堂は鼻をひくつかせた。

(この匂いは……)

 それは、権堂が最も嫌う匂いであった。この匂いを嗅いだ瞬間、権堂の心中にあったそれまでの満足は、たちまち激しい怒りに取って代わられた。脳内で闘争を司る興奮物質が過剰分泌される。この感情は紛れもない義憤であると権堂は思った。

(うまく隠して誰にもバレないと思っているかもしれんが、この権堂を欺くことはできんぞ)

 権堂は大股で歩き出した。そして、今まさに校門を抜けて、学校の敷地内に入ったばかりの女子生徒に近づいた。

「おい、お前」

「はい?」

 女子生徒が振り向き、権堂が手を伸ばす。

「白以外の下着は校則違反!」

「キャー!」

 権堂は女子生徒のスカートを思い切りめくった。




「つまり……」

 薄い光しか差さない取調室で、机の向こうから刑事が冷ややかな視線を投げて来る。

「お前は独特の嗅覚を使って、被害者の女子生徒の下着の色が白でないことを察知した。と、そういうことか、権堂?」

「……はい」

 権堂がうなだれながら返事をする。灰色の取調室の中にあって、その顔色は蒼白だ。

「不正の匂いだか何だか知らないが、匂いで女子高生の下着の色を嗅ぎ分けるなんて、お前は変態だな、権堂」

「……」

 刑事がため息をつき、肩をすくめる。

「言っておくが、権堂。スカートめくりは犯罪だ。社会のルール、迷惑防止条例という法に背く、刑法上の立派な犯罪なんだよ、お前がしたことは」

「……」

「ケダモノだよ、お前は」

「……」

「それで? お前は結局、何を見た? 犯罪行為をして、つまり、スカートをめくった結果、どうだったんだ、権堂?」

 権堂が少しためらいながら答える。震える唇が言葉をつむぐ。

「……黒でした」

「クロはお前だよ、権堂!」

 ガタン。刑事は荒々しく机を叩いて立ち上がった。

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