58 不登校児と熱血教師
不登校児のもとに、担任の熱血教師がやって来た。
熱血教師が不登校児に語りかける。
「お前が学校に来なくなって、もうずいぶん経つな」
「……」
「新しい学年の始業式が終わって間もなく、お前は学校に来なくなってしまった」
「……」
「先生は寂しいぞ」
「……」
「お前がどんな理由や思いから学校に来なくなったか、それは俺にはわからないが、一つ言えることがある」
「……」
「学校はお前が思っているより、ずっと楽しい場所だってことだ」
「……」
「そろそろ運動会だな」
「……」
「運動会も、きっと楽しいぞ。例えば騎馬戦。先生が作戦を考えるから、お前らはその指示通りに動くんだ。なに? 作戦を考えるのが一番楽しいところだから、そこは子供たちにやらせてほしいって? いやいや、それは違うな。まず先生である俺が楽しまないと。俺が楽しいってことは、お前らが楽しいってことだろ?」
「……」
「それから、文化祭。文化祭では何をやろうか。俺が芸術監督をやるから、お前らは俺の指示通りに動くんだ。俺の脚本・演出による、演劇とかいいかもしれないな。いや、待てよ」
「……」
「そうだ! いいこと思いついた! 俺が作った詩を、お前ら全員が朗読するんだ。お前には特別にソロパートを用意してやる。きっと楽しいぞ」
「……」
「そして、最後には感動の卒業式が待っている。一年間の楽しい思い出と、俺と別れる寂しさとで泣き笑いしながら、お前らは俺に感謝の言葉を言うんだ。一人一人心を込めてな。俺はその時のために教師をやっていると言っても過言じゃない。楽しいを通り越してエクスタシーさえ感じるだろうな」
「……」
「どうだ? 学校生活は楽しいことばかりだろう。苦しいことなんて一つもない。なにしろ俺がいるからな」
「……」
「お前がどんなに暗い気持ちで下を向いていようと、俺がお前を無理矢理明るくして上を向かせてやる」
「ぼくは……」
「ん?」
「ぼくは……」
「どうした?」
「ぼくはあなたが嫌なんですよ!」
「なっ……なんだって!」
熱血教師は驚愕した。