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57 帝王の昼食
余が弁当箱のフタを開けると、そこには驚くべき光景が広がっていた。
「ほう、ローストビーフか」
箸で一切れローストビーフをつまむと、口へ運び、そしゃくする。たちまち魅惑的な味わいが余の口の中でいっぱいになった。ワサビのピリリとした辛みが、肉の旨味とソースの甘味とを充分に引き立てている。最高のごちそうと言ってよかった。
「うまい」
余は舌鼓を打つ。シェフは今回も最高の仕事をしたようだ。
「美味であるぞ」
白米を一口、ローストビーフを一切れ。次々と口の中へ運んだ。至福の時はいつまでも続くかと思われた。ところが――。
ドン! ドン! ドン!
聖域の静寂を破り、扉が激しく叩かれた。
「何事だ!」
余が叫ぶと、余の城の扉の向こうから怒気をはらんだ声が返って来た。
「いつまで入ってんだ、この野郎!」
余は瞠目する。
「俺はウンコが漏れそうなんだよ!」
「……」
余は断固たる拒絶の意思を示して黙り込む。開け渡してなるものか。
白米を一口、ローストビーフを一切れ。さらに口へと運んだ。
便所飯。それが余のスタイルであり、日課であった。




