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56 不可解なベクトル~ニュートンの仮説における一つの反証の発見
その時、ニュートンの目の前でリンゴが落ちた。
風もない果樹園。
それは彼にとって一つの天啓であった。
その途端、彼の類まれなる頭脳は高速で回転を始め、この下向きに働く力、リンゴを落下させた力への関心、新しいアイディアの着想、そんなものがぐるぐると渦巻くある種の炉のようなものとなった。
万有引力。
すべては一つのリンゴの落下から始まった。
ニュートンは駆け出した。興奮と共に果樹園を走り抜け、住みかへと急いだ。
ドアを開け、机へ向かう。この画期的な考えを早くノートへ書き留めなくては。
この考えは世界を変えるだろう。僕が新しい扉を開くんだ。
不敵な笑みを浮かべ、ニュートンはノートへ走り書きをした。
その日、ニュートンは深い満足とともに、ベッドで眠りについた。
しかし、その翌朝。
「おかしいな……」
真横に跳んだ小便が汚したトイレの壁を見ながら、しきりに首をかしげるニュートンの姿がそこにあった。




