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55 線香花火
夏の夜。二人の恋人たちが、小さな公園で花火をしていた。
暗闇を線香花火の光がかすかに照らす。
ふと、彼氏が言った。
「線香花火ってさ」
「うん」
「なんだか、命に似てるね」
「命?」
「そう。一生懸命火花を散らして、でも、最後には燃え尽きて消えてしまう。そのはかなさが、なんだか命に似ていると思うんだ」
「言われてみれば、そうかもしれない」
「僕も君も、いや、どんな命だって、はかないながらも、一生懸命になって燃えている。だから、命は尊くて、大切にしなくちゃいけないんだ。そう思わないかい?」
「そうね」
ぷぅーん。パチン!
「どうしたの?」
「いや、蚊が顔に留まって」
「潰したの?」
「ああ、潰した」
「……」
「……」
「花火……」
「ん?」
「線香花火消えちゃったね」
「ああ、消えた」




