表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/221

51 腹から声を

「面! 面! 面! 面!」

 ある剣道場で、剣道着姿の少年が一人、素振りを続けている。

 静かな剣道場に、少年の声が響く。木刀が空気を切り裂く音がしばらく続き、そして、

「声が小さーい!」

 少年の木刀が何者かの木刀によって叩き落された。少年の背後から滑るような動きで現れたその何者かとは、

「声が小さーい! 気合が足りん!」

 この剣道場の師範であった。師範は少年を怒鳴り続ける。

「腹から声を出せ! 腹から声を! そんな気合じゃ敵はひるまん!」

「……わかりました」

 少年はそう言うと、剣道着の前をはだけた。白い肌があらわになる。

「貴様、何をやっている?」

 剣道師範がけげんそうな顔をする。少年は答える。

「腹から声を出す。やってみます……こふぅー」

 突如、辺りに異様な気配が立ち込め始めた。黒いもやのようなものが少年から立ち上り、そして――。

「ハジャンダルジャルンギュルス!」

 白目をむいて少年が叫ぶと、少年の腹に横一文字の裂け目が生じ、その裂け目が、くぱあっ、と開いたかと思うと、赤い舌のようなものがレロレロと動き、そして、

「ぼああああああっ! ぼああああああああっ!」

 腹から声が出た。身の毛もよだつおぞましい叫び声だった。

 剣道師範はぶるぶる震えた。

「なんだ、何が起こっている? なんなんだそれは?」

「ハジャンダルジャルンギュルスだ」

 おぞましい腹の口がおぞましい声で答える。

「いや、名前を聞いたわけでは……ああ、なんてことだ、なんてことだ」

 剣道師範は尻もちをついた。

「ぼあああああっ! ぼああああああっ!」

「なんてことだ! なんてことだ!」

 剣道師範は小便を漏らした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ