37 デイドリーマー
その日、エースストライカーが三点を決めた。
試合後のインタビューで記者が言った。
「すごい大活躍でしたね。見事なハットトリックでした。どうしてあんなスーパープレーができたのでしょうか?」
「それはもう、ファンの応援があったからです。会場に来てくれたみんなの声援が、僕に力をくれました」
「会場には地元の少年サッカーチームの子供たちも駆けつけてくれたそうですね。会場の、そしてテレビの前の子供たちに何かメッセージはありますか?」
「はい、そうですね。夢を追い続けろ! この言葉を贈りたいと思います。僕も子供の頃からの夢を捨てずに追い続けて来たからこそ、今の自分になれたと思います。みんなにも夢を諦めないでほしいですね」
「そうですか……うん、そうですね……」
記者は何か考え込む素振りを見せて、しばらくしてから口を開いた。
「実は私も、今でこそしがないスポーツ記者をやっていますが、子供の頃はサッカー選手になるのが夢でした。今、あなたは夢を捨てるなとおっしゃった。それはつまり……」
記者の目は異様な輝きを帯び始めた。
「私にも夢を捨てるなということですね! 私は帰ったらトレーニングを始めます。新しいサッカーボールを買って、まずリフティングの練習から始めます。壁パスもやります。オーバーヘッドシュートの練習もやります。いつかあなたのようなエースストライカーになる日のためにね!」
記者の言葉に、エースストライカーは唖然とした。そして、やがて、
「ぷっ……くっくっくっ……あっはっはっ! あっはっはっはっ!」
笑い出した。おかしくて仕方ないという様子で笑い出した。
「あっはっはっ! サッカー選手になるのが夢って……俺みたいなエースストライカーになりたいなんて……その年で夢がどうとか……そりゃお前……いくらなんでも……」
エースストライカーは真顔になった。
「寝言は寝て言え! このアンポンタン!」
「な、なんだって……!」
夢追い人は衝撃を受けた。




