3 三流武術師範
道場で、武術師範とその弟子たちが鍛錬に励んでいる。鍛錬の途中、武術師範は弟子たちを集めて講釈を垂れ始めた。
「いいか、弟子たち、よく聞け。突きは武術の基本中の基本。これがなっていない武術家は実戦ではくその役にも立たない。腰から拳を吐き出すつもりで、全身の力をまっすぐ伝えろ。拳にすべての力を集約させるのだ。まあ、もっとも、三流の武術家に突きをさせると、拳がぶれて力が分散されてしまうわけだが、一流の突きは……!」
武術師範は突きを繰り出した。
「まったくぶれない」
武術師範は得意げに笑った。その突きはぶれまくっていた。
武術師範は講釈を続けた。
「それから、蹴りも基本中の基本だ。これがなっていない武術家は、やはり、実戦ではくその役にも立たない。相手の顔をなめるようにして蹴り上げろ。足の甲にすべての力を集約させるのだ。まあ、もっとも、三流の武術家に蹴りをさせると、体の軸がぶれて力が分散されてしまうわけだが、一流の蹴りは……!」
武術師範は蹴りを繰り出した。
「まったくぶれない」
武術師範は得意げに笑った。その蹴りは軸がぶれまくっていた。
弟子たちは何も言わなかったが、それぞれ顔を見合わせて、内心、
(三流三流って、全部あんたがやってることじゃねえか……)
と思っていた。