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225 石の形

 古代ギリシャのどこかの街で。


 広場に真っ昼間の陽光が降り注いでいる。

 大きな大理石の塊を相手に、その彫刻家は格闘していた。大勢の群衆が見守る中、その見るからに頑固そうな日焼けした額に汗を浮かべつつ、必死でノミを動かしていた。

「石にはそれぞれなりたい形というものがある」

 低くよく通る声で彫刻家が群衆に語りかける。

「石にはもともと、こういう形になりたいという形がそなわっているのだ。それは筋骨たくましい英雄かもしれないし、深い叡智を秘めた老人の胸像かもしれない。真の彫刻家は、石の声に心の耳を傾け、そしてみずからも心の声で石に語りかける。石よ、お前はなにになりたい? お前が隠しているお前の本質、お前の根源的衝動、欲求、憧れはなにか? そんなふうに石と対話し、石本来のあり方を見いだし、実現する。それが真の芸術家、真の彫刻家の仕事だ」

 彫刻家は険しいしわを眉間に刻みつつノミを動かした。

「真の彫刻家は、魂を削る思いで石を削るのだ。だが、これにはそれだけの価値がある……」

 彫刻家の作業は仕上げの工程に入ったようだった。ノミとヤスリの音が聞こえて、やがて、彫刻家の口元に満足げな笑みが浮かんだ。

「そら、できた!」

 彫刻家が叫び、群衆が一瞬息を呑む。

「こ、これは……!」

「なんということだ!」

 驚きの声を上げる群衆の方を向き、彫刻家は胸を張った。

「これがこの石の本来の姿だ!」

 陽光降り注ぐ広場の中央に、下品で卑猥な裸婦像が出現していた。

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