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19 お前に言われたくねえ
チャラ男が歩きタバコをしながら、街を散歩している。
タバコをふかすうち、タバコはどんどん短くなった。
もちろんチャラ男は携帯灰皿など持っていないし、わざわざ喫煙所を探して然るべき場所に捨てたりもしない。
チャラ男はタバコをポイ捨てした。
すると、どこかから、
「おい、そこの若僧」
と呼び止める声がした。チャラ男が振り向いたが、そこには誰もいない。
空耳かと、チャラ男がけげんに思っていると、
「タバコのポイ捨てはいかんだろうが」
と、やはり誰かの声がする。チャラ男は辺りを見回したが、声の主を見つけられない。
すると、
「ここだ、ここだ」
と足元から声がする。見下ろしてみると、
「俺だよ、俺」
声の主は、放置された犬のクソだった。
「街を汚すな。タバコのポイ捨てはいかんだろうが」
うんこはそう言って笑った。
踏まなくて良かったとチャラ男は思った。