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17 新しい家族
街の片隅に、オッサンが一匹、捨てられていた。
オッサンは冷たい雨に打たれて、ダンボール箱の中で震えていた。
時折、オッサンが哀れな声で、
「くぅーん」
と鼻を鳴らしても、通りかかる人々は誰も止まらず、誰も関心を払わなかった。
雨が降り続き、オッサンが震え続ける。
すると不意に、雨がやんだ。いや、雨がやんだのではなく、黒い傘が、オッサンに差し掛けられた。オッサンが顔を上げると、スーツを着た、サラリーマン風のオッサンが立っていた。サラリーマン風のオッサンは言った。
「お前もひとりぼっちなのか?」
捨てられたオッサンが、
「くぅーん」
と鼻を鳴らす。
するとサラリーマン風のオッサンは、
「うちに来るか?」
と笑いかけた。
捨てられたオッサンが、
「くぅーん」
とまた鼻を鳴らす。
こうしてオッサンはオッサンを連れ帰った。
「まずは体を洗わないとな」
オッサンがオッサンに片目をつぶる。
雨は降り続けた。しかし、今は冷たくはなかった。