第零話
────敵が近い。そう察知した俺は、隣にいるミリルの安全が最優先だと考えた。
「ミリル、逃げろ。さっき通ったときに見えたシェルターがあっただろ?あそこなら大丈夫だ、アーマードを使った防壁だった。あれなら奴らにも対抗策はない筈だ。俺は加勢に行く!」
一刻を争う事態だった。前線に守りを固めなければその後ろにある避難区域までやられてしまう。
そう思い、前線に向かって駆け出そうとした瞬間、
「ま、待って!せめてこれを持って行って!」
そう言ったミリルから紅い石を渡された。
「それを持って言って。その石には────」
「すまない、説明を聞いてる暇はない!早くシェルターに行け!大丈夫だ、ミリルが作ったアーマードなら使い方は分かる!」
明らかにさっきより近くで鳴り響いた爆音を聞き、俺はレッグ専用のアーマードを使い、全速力で前線へと駆け抜けた────
この日、俺達は敗北した。前線にいた敵は囮で、本望の敵の攻撃部隊は、俺達の遥か上空を悠々と通り越し、避難区域を集中的に攻撃、その攻撃はこちらの重要施設を破壊、大地を抉り、崩した。ましてや対抗手段が無いはずのアーマードの防壁さえも破壊した。
たったの1戦で、圧倒的有利だった俺達は、圧倒的不利になった。
そして圧倒的防壁の中にいたミリルとも、連絡は取れなくなっていた。
最強無敵と唄われ、勝利の要と言われていた兵器、アーマードの破壊という現実によって、俺達には絶望に浸る道しか、残されていなかった。