表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その世界は本物ですか?  作者: おでん
第一章:『記憶と記録』
2/23

第2話:エリスと能力

ちょっと長い間出してなかったですね。

楽しく読んでくれると幸いです

(`・ω・´)ゆっくりしていってね!



新しく書き直しました!

綺麗になりましたのでよかったら見てください!


青空の下でガラガラと車輪の音を立てながら馬車が動き、周りの景色を私は見渡していると前方に人がフラフラと歩いているのが見えた。


「人?」

そしてその人の向かい側に緑色で太り気味の体に豚のような顔で棍棒を手に、ノッしりと歩きながらフラフラと歩く男性の方へ向かっているのが見えた。


「あれって、オーク? ミレイユ、助けなくちゃ!」

私がそう言いながらミレイユの方を見る。

幸いオークは走っては向かっていない。


「アレは……もう無理」

ミレイユは無表情で言う。

まだ傷もなく、手遅れには見えない。

なんで見捨てようとするのか私には理解できなかった。


「無理って、なんで!?」

私は男性を助けたい一心で聞いたがミレイユは首を横に振るだけだった。


「アレはもう助けた所で無駄なの、だから関わるだけ……」

そうミレイユが言うと私はミレイユに頼らず男性を助ける事にし馬車から降りた。


「勝手な事してごめん、でも……やっぱり見捨てれない。 何故だか心の何処かでそう思ってるの」

私は男性の元へ走り出した。

心の何処かで思うこの気持ちに少し違和感があるけど、今は気にしていられない。


「ちょ、ちょっと時音」

ミレイユは呼び止めたが私は気にせず男性のもとに向かった。


男性がオークに気が付いたのか男性は尻餅をつきガクガクと体が震わせていた。


「う、うあああーー、られかーーらすけれーー!!」

男性は滑舌悪く大声で言う。


私は男性の前につくと男性はニタニタと笑っている事に気が付いた。

なんだか不気味だ、精神が参ってるのかもしれない。


「あ、あの、大丈夫ですか?」

私は気味が悪いと思いながらも声を掛けたが男性は私を認知できていないのか、こちらを全く見ない。 しかし突然私の真後ろに移動した。 オークに恐れ私に隠れているのか。


「欲しい……」

そう男性が呟くと私は男性の方を見た。


「え?」

後ろを振り向くと男性は思ったより距離が近く私は少し驚いた。


「ち、近いですよ……」

私は顔を赤くして少し離すように誘導するが、その瞬間男性が私に抱きついた。


「ちょ、な、何をしてるんですか!? はなして!」

私は振りほどこうと暴れるが上手く力が出せず私は仰向けで倒れ男性が私の上に乗るように倒れた。


「うへ、うへへはへへ?」

男性は狂気じみた顔をしながら笑う。

この人正気じゃ無いの?


「い、いや、はなして!」

私は恐ろしくなり涙目で必死に振りほどこうとするが力もでない状態で押さえ込まれている状況からして私は抜け出せない事が分かってはいたが、私は諦めずに振り解こうとした時、男性の顔が歪みグチャっと音を立て赤い液体を撒き散らしながら吹き飛んでいった。


「え、あ……」

私は目線を少し上の方に上げるとオークが私の上にいた。 そのオークは棍棒を上に振り上げていて、今にも振り下ろしそうだった。


「や、やぁ……」

恐怖で声が出せず身体が動かなかった。 そして恐怖と共に棍棒が振り下ろされ、私はもう死ぬかと思った時、光る青い玉が棍棒にあたり軌道がズレて棍棒は私の頭の右側の地面にバギッと音を立て地面に当たる。


「逃げて!」

ミレイユの声が突然聞こえ、私はミレイユの声を聞いた安心感か、身体を動かせるようになっており身体を起こしてオークから距離をとった。


私はミレイユの方を見ると何かを唱えていた事に気づき私は時間稼ぎをしようとした瞬間、オークがこちらに凄いスピードで飛んできた。私はそれを何とか避けようと足を動かした時、まだ体が本調子にはなってないのか足がよろけ、つまずいた。 その時、顔すれすれに棍棒が顔を横切り、私はそのまま尻餅をついて倒れた。


体調が戻ってないのは不幸中の幸いってやつだったのかな。


尻餅をつきながら安心しているとオークの下に魔法陣が広がった。その中に私の足も入っていたから私は危ないと感じ足を急いで陣の外に出すと、同時に魔法陣の範囲内にイカズチが落ち、オークは消滅した。


私は息を整え立ち上がり、ミレイユの側まで歩いた。


「あ、ありがとう……」

私は恐る恐る言うとミレイユは杖を地面に落とし両手を私の両肩に置くと真剣な顔で言葉を放った。


「どうして、どうして武器もないのに助けに行ったの! なんであんな危険な事をしたの!!」

私は体をビクつかせた。

勝手なことをしたのは分かってる、ミレイユがいなかったら私は死んでいた。


「あの人を……助けたくて」

私が小さな声で、あの時思った事を言うとミレイユは私の肩をさらに強く掴む。


「あの人はもう無理って言った、それに貴方が死んだら元もこもない!」

ミレイユがそう強く言うと私は顔を下げたまま上がらなかった。


「ごめんなさい……」

ミレイユは手を離して杖を拾った。


「いくよ」

ミレイユが言葉を発すると私は男性のことを思い出し、振り返った。


「彼はもう死んでる」

その言葉を言うと言う事は本当にどうしようもできないのだろう。

私はミレイユの言葉どうりに馬車に乗り、馬車は動き出す。


ガタガタと揺れる中、私は気まずいまま景色を見ていた。


このまま気まずいのは、やだな……、ちょっと話しかけてみようかな……。

私はチラチラとミレイユを見ると横目で、こちらを見ていたのに気が付いた。

その瞬間ミレイユは目線を前方に戻した。


え、めっちゃ見てた……まだ怒ってるのかな。 そうだよね、許してもらえないよね。


私はジーっとミレイユを見つめているとミレイユが突然こちらを見て口を開いた。


「ねぇ」

突然の声に私はビックリした。


「な、なんでしょう」

私は辺な笑みを浮かべながら聞くが、ミレイユは顔を再び逸らした。


あっちもあっちで気まずいのかな?

私は勇気を出して喋りかけることにした。


「あの!」

「ねぇ」

同時に声を発してしまった。


「な、ななななに!?」

私は焦りながら聞く。


「い、いや、そっちから」

ミレイユは私に譲ろうとするが、明らかにここはミレイユが言った方がいいと感じた。


「わ、わたしはいいよ!」

私は全力で遠慮し、手のひらを前に出し、左右に傾けながら言った。


「いや、そっちから」

ミレイユも譲ろうとしている、どうやらどちらも譲るのを譲る気がないようだった。

譲るのを譲る気がないって、不思議な言葉だな、と密かに思った。


「「じゃあ」」

二人は再び同時に声を発した瞬間、私はやらかしたと思った。


こうなったら私から言うしかないのか。


「「私から言うよ!」」

おどろく程に被る。

ミレイユは頭を下に下げ、人差し指を小さく動かしていた。


「ミ、ミレイユ?」

私はミレイユが何をしているのか気になり覗き込もうとするが何か光っている事しかわからなかった。


「ん」

ミレイユは右手を私の方にサッと払うと青色に光る文字が目の前で止まる。


「これは……」

よくわからない文字だが何故だか読めそうだった。


「えっと……言葉で言うと同時に言ってしまうから文字で言う、さっきは言いすぎた、ごめん」

私はそれを読んでホッとした。

そして私が読むと文字は空中へ消えて行った。


「わ、私もごめんね」

私はミレイユの方を見て謝り、ミレイユはそれを聞いたのち頷いた。


「ありがとぉうぅ〜〜!!」

私は嬉しくてミレイユに抱きついた。


「んぐっ! く、くるしい……」

ミレイユは抱きつかれ少々鬱陶しいと思っていそうだったが今はこうしていたい。


「よかった……」

私はミレイユから離れて取り敢えず落ち着いた。


しかし次の瞬間、目眩がした。

嫌な予感がする……。



ーーーーーーーーー



次に目を開けると草原がただ広がっていた。

なびく風、揺れる草、流れる雲、奥にはエルガンと思われるものがある。

しかし、そのほかは何もなく、私1人しかいないみたいだった。


「……」

孤独感が押し寄せてきて手を強く握ると、手のひらにチクりと痛みを感じた。


なんだろう。 手を見るとミレイユの持っていたロケットがあった。

何故こんな所に、何で私が持っているのか。

何もわからない、思い出せない。


他に自分に変化がないか探すと、腰に剣を付けていた。 その他は特に何ともない。


この夢は何なんだろう……。

これは……そもそも夢なのか?


「ごめんなさい……」

私は何かを喋った。 私は何も喋ってない……。

勝手に口が動いていたのだ。


「約束……守れないよ……」

泣いている、自分が泣いていた。

私は何で泣いている? 何をしている?


突然地面が揺れた、それは地震ではなく誰かが、何かが歩いている揺れだった。


いつの間にか前方にオークがいた。

見覚えがある。 あの時のオークだ。


「ミレイユ……何処?」

ミレイユが見当たらない、オークがこちらに走ってくる、嫌だ。 いやだ!


私はオークから走って逃げた。

走っているのに距離が縮まる一方。


「だ、誰か! 誰か助けて!」

助けを呼んでも誰も来ない、ただ声が響く。

まるでこの世界に私とオークしかいないようだった。


「一か八か……」

私は走って逃げれない事を知ると剣を抜き、オークに向け構えた。


「大丈夫、やれる……」

私は自分を信じて前へ走り出した。


「やあぁぁぁーー!!」

勢いをつけて剣をオークに向けて振り下ろす。


しかし次の瞬間、腹部に激痛が走る。

オークの棍棒を食らっていた。


「え゛お゛っ……」

吐きそうだ、痛い。

私は地面にうずくまった。

何故直撃したのかわからない、確かに私の方が早かった。


オークの影が視界に入ると私は剣を咄嗟に振るが、激痛が再び走った。

右手から剣が離れ、腕が捻れていた。


「……ぁ……あぁぁ」

声が出ない。 痛い。

私はオークを見ると、オークは全く別の方向を見ていた。

私は同じところを見ると人が立っていた。

涙で目が霞んで見えないのか人影としか認識できなかった。

しかし、希望が見えた私は人影に縋った。


「た、たすけてぇー!!」

私はありったけの声で助けを呼んだ。

しかし、人影は遠ざかって行く。

何故、助けを求めているのに……。


「な、なん……で?」

私は、へたり込むと頭の何処かで理解していた。

このシーン、この場所。

まるで、ついさっきの事のようだ。


もしかして、私はもう……。



『イカレテイル?』



ミレイユが言っている手遅れってやつなのかな。


あぁ、そうだ、きっとそうだ。


「あは、あははは……」


「あっはははははは!! あはははははーー」


私の笑い声が静かな世界に鳴り響く。

そして、それはオークによって、終わりを告げた。



「あはは……あははは」


「ねぇ、奇妙な笑いして抱きつかないでくれる?」

私はミレイユの声に我に帰った。


「あ……れ?」

私は周りを見渡し、周りの状況を確認した。

さっきのは夢だったのか?


「そろそろ着くよ」

ミレイユの家が見えてきた。

さっきのが夢で本当によかった……。


私は深呼吸をし、落ち着いた後ミレイユに聞いた。


「一度寄ってまた何処か行くの?」


「行かないよ、今日はもう終わり」

村の中に入り馬車を家の前で止めた。


「着いたから、そろそろ離れて……」

ミレイユは暑苦しいと言わんばかりの顔で言うと私は抱きつくのをやめた。


「先に中に入ってて」

私はミレイユの言う通り荷台から降りて家の中へ入った。

「お邪魔しまぁ〜す……」

私はおそるおそる入り、玄関のところで足を止めた。


「おかえり、そしていらっしゃい」

ミレイユのお婆さんが中から出迎えて来てくれて、無事な私を見て安心した顔を見せ、座布団の方へ向かい座った。


「中にお入り」

私はその言葉に甘えて入り座布団に座った。


「あの、おばさん」


「なんだい?」

優しく聞き返すお婆さんに私は今やってる薬を配る事を聞く。


「なんで、薬を配っているんですか?」

ただ、単純に気になる。


「薬を配っているのは私の意思ではないよ、ミレイユがやりたいって言うから私は手伝っているだけだよ」

話が少し違う気がするが、おそらくこっちが本当なら恥ずかしいから話したくなかったんじゃないかと私は思った。


「ただいま」

ミレイユの声が聞こえ入り口の方からやってきた。


「何の話?」

ミレイユは少し気になっていたがお婆さんが首を横に振ると気にしなくなった。


「そっ……」

ミレイユは座布団に座り私の方を向いた。


「まだ話してなかった事があった」

話してない事、他に何があるんだろう。


「魔法の他に能力がある事は話してないよね」

能力、超能力? 異世界物でよくある特典ってやつだろうか。


「転移者だけが使える能力だよ」

予想はおそらく当たっていそうだ。


「私も能力使えるの!」

今まで普通はできない事ができるようになるのは、とても楽しそうな事だ。


「使えるよ、今からどんな能力か確かめる」

私はワクワクしていた。


「一旦外に行こうか……」

ミレイユの言葉に私は頷き駆け足で外に出た。 ミレイユも私の後を歩いて追いかけた。


「さて、能力を発動させるために注意する事が二つあるよ」

ミレイユは腰に手を当てた。


「一つ目は発動させる時、私は少し手伝うけど場合によっては爆発系とかいるから、もしもの時は自分の身は自分で守ること」

能力で自滅する恐れがあるって事だろうか。

少し怖くなってきた。


「二つ目は一つ目に比べて、誰でも言えるから大事だよ。 発動させた後、能力を押さえ込む時、場合によっては私は手伝えない時があるから、その時は自分の感覚を信じてやる事。 能力を使い続ければ死んじゃうから気をつけて」

思ったより簡単ではなく不安になってきた。


「じゃあ行くよ」

ミレイユは両手を前に出し、手を開き、手の平を私の足元に向けると足元から魔法陣が現れた。


心の準備が出来てるわけではないけど、頑張るしかない。


魔法陣の光がだんだんと強くなり私は目を瞑った。


「眩しぃ……」

私は目を開ける。


何ともないみたいだ……。


「ねぇ、コレって……」

私は異変に気がついた。

周りを見渡してビックリした。 雲、風、飛ぶ草、生えてる草、全てが止まっていたのだ。


「凄い……」

私は宙に浮かんでいる草を手に取るととても軽かった。

そして、とても硬かった。

半分に切ろうとしても、びくともしない。


「あっ」

止まっているのはもしかして。

私はミレイユの方を見たが止まっているようだ。


「この感じなら能力は時を止める能力なのかな?」

私はミレイユに近づき手を振る。

反応がないのは分かりきっていた。


「能力は分かったから後は解除するだけ……」

私は解除と心に唱えたが辺は変わらない。


不思議なポーズや、よくわからない言葉、色々試したが全く効果がない。


やばい、このままでは死んでしまう。

説明通りなら、このままの状態は死を意味するらしい。 実際頭痛がする。


「どうしよう……」

取り敢えず考える。

息が段々荒くなっていく事しか分からない。


「はぁ……時間が……」

視界がぼんやりしてきた。

何とか……。 なん……とか……。



ーーーーーーーーー


意識が遠のく中、不思議な感覚を私は覚える。


何の感覚……。


「貴方ならきっと大丈夫、私はそう思うよ」

誰かの言葉が聞こえる。

コレは……走馬灯? でも、全く覚えがない。 それに見るものじゃなかったっけ?


「私なら、信じてくれた……貴方の言葉に……私は」

心から願う気持ち。 誰の気持ち?

不思議と共感できる。


「こたえたい……」

私と、もう1人の誰かの声が響き合う。


ーーーーーーー


「げほっ! げほっ!!」

突然気持ちが楽になり、涼しい風が肌を撫でる。

周りは既に動き出していた。


「でき……た……」

私は安心した。 そしてミレイユの心配そうな視線を最後に、意識が途切れた。


ーーーーー


「うん、できたみたいだけど。 結局どんな能力かわからない、起きたら聞いてみる」

話し声が聞こえる、ミレイユの声だ。


「ミレイユ、本当にやるつもりなのかい?」

悲しげな声が聞こえる、お婆さんの声だ。


「やる、それしかないから……」

このまま盗み聞きするのは、なんだか後々気分が悪くなりそうだ。


「おはよ……」

私は体を起こし言葉を放った。


「あ、おはよう」

優しくミレイユが返す。

周りを見ると布団が敷かれていて左から私、ミレイユ、お婆さんと並んでいた。


「寝てた所悪いけど、今日はもう遅いし寝る時間だよ」

多少眠いし、きっと寝れるだろうと私は思った。


「で、時音……。 能力どうだった?」


「あぁ〜……能力ね、うん、時を止める能力だったよ」

寝起きだからか、頭が回らない。 あまり元気が出ない……。


「そう、わかった……。 今日は疲れただろうから休んで」

その言葉に甘えて私は再び寝転がり目を瞑った。


「お婆ちゃん、明日……あの里に行くよ」

あの里とは何処だろう。 続きを聞こうとしたが、私は意識をなくした。


ーーーーーーー


「毎度大変な事だな、律儀に正攻法で進んで、馬鹿を見なければいいけど……。 いや、もう見ている気がするが」

突然知らない人の声が聞こえる、声が加工されてるようで、男か女かもわからない。

誰……。 コレは夢だと理解している。

疲れてるの、少しは休ませて……。


「疲れているのは理解している、だから夢の中に現れたんじゃないか」

真っ暗、姿が見えない。 誰なの?


「さぁ、誰だろうね……。 この世界の人達が大好きな、時が来たら分かるってやつだよ」

何のために私に、私の夢に?


「途中まで目的は同じだと思ったからね、私は貴方を手助けする。 そして貴方は知らない所で私の手助けをする、そんな関係、そして目的」

言っている事がよくわからない、わからない。


「わからなくて当然、貴方は産まれたばかりの赤ん坊みたいなものだからね」

何を……言っているの? 何を知っているの?


「私は、ある程度なら知ってる……。 残念だけど教えられない」

私にどうして欲しいの?


「簡単だよ、君達の目的を成してくれれば、私の目的が近づく」

私達の……目的?


「忘れたの? 魔王を倒すでしょ」

魔王を、倒す。 確かに転移者は魔王を倒すものだけど……。


「ま、私は気長に待つよ……。 と、そうだ」

えっと、何で抱きついてるの? 見えないけど、感覚で抱きつかれているのだとわかる。


「別に……私にも、癒しが欲しいなって。 いいでしょ、ちょっとくらい」

悲しいの? 何で、そんなに……。


「はい、ありがとう。 理由は教えないって言ったからね、じゃあ……頑張って」



貴方は……。


ーーーーーーー


「夢……」

目を開けると外の光が部屋へ入り明るく照らしていた。


周りを見渡すと、既にミレイユとお婆さんがいない。


「早起きなんだな……」

私は立ち上がり玄関の方へ歩き出した。


「何処行くの?」

ミレイユの声が後ろから聞こえる。

私は振り返った。


「あ、ミレイユ外にいるのかと」

私は部屋にいることを知ると外に出る事をやめた。


「そっ、ねぇ時音、お腹は空いてないよね」

意識してなかったから気がつかなかったが確かに空いてはない。


「まだ馴染んでないんだね」

馴染めばお腹が空いて普通に食べられるようになるのだろうか。


「あれ、お婆さんは?」

そう言えばいないなと思い聞く。


「今外に出てる、私達は山に行くよ」

昨日行っていた里の事だろうか。


「わかった」

私は準備が終わるまで座布団に正座で座る事にした。


「夢が気になる」

私は呟きながら夢の事、今までの事を思い出した。


今回見たのは、痛みもない、むしろ……少し安心するような。 そんな夢だった。


自分から夢を見る事は出来るのだろうか、今は目眩なんてしないけど、やってみよう。


目を瞑り、さっきの夢を思い出す。

目眩がする方は、痛いからやりたくはないかな。


…………。


何も起きない。


「おーい」

ミレイユの声に目を開けると顔があった。


「ミレイユ?」

私は準備が出来たのだと思い立ち上がろうとしたが足に刺激が走る。


「あ、足が痺れた……」

ビリビリと擽ったい刺激が足に走っている。


私は取り敢えず座った状態で足を真っ直ぐに伸ばした。


「うぅー、くすぐったい」

私は我慢しながら治るのを待った。

しかし、刺激は少し強くなった。


私の足をミレイユが触っていたのだ。

すっごく擽ったい。


「んん!ちょ、足に触らないでよ」

私の反応が面白いのかペタペタと手で触るのをやめなかった。


「えいえい」

ミレイユは少しニヤつきながら触る。

尋常じゃない程擽ったい。


「ちょ、やめ、やめてってば、うぅぅ」

私は必死にこらえたが、すぐに限界がきた。


「もう!!」

私は我慢ができず涙目でミレイユを突き飛ばして言う。


突き飛ばされたミレイユは、えへへ、と笑っていた。


「えへへ、じゃないよ! くすぐったいよ!!」

私は少し怒り気味に言うとミレイユは微笑んだ。

私は嬉しそうなミレイユから、そっぽを向き痺れが少し治った足で立ち上がると家の外に出た。


それに続きミレイユも一緒に外に出た。


「ごめんね」

ミレイユは両手を合わせながら謝ってきた。


「別に、いいけどさ……」

私自身そこまで怒っている訳でもない。


「そんな事より、いくんでしょ?」

私は馬車の荷台に乗り込みながら言う。


「うん、行こう」

ミレイユも乗り込み、馬車は進む。


村を出て、ガタガタと音を立てながら新たな地へと向かうのだ。 なんてね。


「あ、そうだ」


「なに?」

私は後ろから顔を出した。


「能力について言ってない事が一つあった」

なんだか危ない事じゃないといいんだけど。


「能力の代償についてなんだけど……」

代償、代償? 能力使うのに代償なんてあるの? つまりポンポン使えないって事?


「貴方の場合、寝てる間に調べたけど。 多分記憶が代償だよ」

とんでもない代償だ。 予想以上で怖くなってきた。


「え、じゃあ私は既に記憶が無くなってる部分があるって事?」

最初に発動させた時、どこかの記憶が亡くなったって事だろうか。


「多分そうなんだけど、私には調べようもないから……自分で理解するしかないんだよ」

私が亡くした記憶、何処の記憶なのだろう。


「わからないぃ……」

私は頭を抱えた。 全然分からない。


「ま、そう言っても亡くなってる本人は余計にわからないか」

ミレイユは何かを考えていた。


「あのタイミングだと、あり得るのは二つで一つ目が大丈夫だと言う事は……」

何か亡くなる部分が特定出来るのだろうか。

いや、そもそも何で特定できるんだ? 同じ能力を持った人が知り合いにいるのだろうか。


「エルガンで何したか覚えてる?」

そりゃ覚えてるよ。 つい最近の事だし。


「お爺さんの民家に行ったんだよね」


「何をしに?」

何を、って……何しに、行ったんだっけ?


思い出せない。 わからない……。


「わからない……」

一部分だけ記憶がない。 不思議な感覚だ。


「薬を届けに行ったんだよ」

そう言われれば、そんな気も……する?


「まぁ、今回は特別な件で実際は時間を操ってる間の記憶をよくなくすらしいよ」

なかなか使いこなすのに難しそうだ。


「まぁ、能力はいつの間にか馴染んでるものだって」

誰からそう聞いたのかは気になるけどミレイユが言うなら、そうなのだろう。


「上手く使えるか不安だよ……」

私は空を見上げながらそう言うとミレイユは私の手の上に手を置いた。


「大丈夫、私がついてる……」

私は微笑みミレイユに抱きついた。


「わわ、いきなり抱きつかないでくれる?」


「はーい」

私はそのまま離さなかった。


「全く……」

こうしていると、落ち着く……。

ずっとこうしていたい……。


ーーーー


ずっと、ずっと一緒に……。

私は貴方のそばにいる、貴方も私のそばにいる。


私達は助け合う関係なんだから……。

時音……、私は、貴方を……。


ーーーー


「何か言った?」

今、何か聞こえた気がした。

聞こえたのか、感じたのか、よくんからない不思議な感じだ。


「え? 別に何も?」

不思議な顔をしている。

おそらく本当にわからないのだろう。


「ならいいや」

私は目を瞑った。


「そっ」


涼しい風が肌を撫でる。


今はそれだけを感じる……。

こう言う時間が、個人的には結構好きだ。



もしかしたら一ヶ月投稿になるかもしれません。

頑張って早く出しますが、これからもよろしくです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ