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09

「……何やら妙な感じがするのう」

「はぁ……昨日遊びすぎて身体痛めたんじゃ?」

「いやいや、そうじゃなくてのう……まぁ、気のせいなら良いのじゃが」


翌朝、起きがけにそんな事をオーさんが言っていた。

俺は全くそんな感覚はないが……野生の勘と言うものが存在するなら、森で何かしら変化があるってことなんだろうが。


「ブラックのお兄さん、またアリだよ!」

「3体ぐらいまとまってやがる!」

「そんな……」

「やれやれ……プランちゃん、背後の警戒は頼むぞ」

「はい!」


今回はオーさんを除いた四匹で行動、これ以上数が増えるなら拠点を変えることを検討している。

現状それぞれの役割分担は、足の速いアニーとイモトが斥候、俺が戦闘員、プランちゃんがバックアップだ。

そうして少しずつ狩りが安定してきたころ、段々とだがアリとの遭遇率が高まっている。

昨日は一体で遭遇したが、今日は二~三体で行動している。

……オーさんの勘が杞憂で、アリと頻繁に遭遇してるのはたまたまであってほしいと願う。


「アニーとイモトは撹乱、油断して掴まるなよ」

「「アイアイサー!!」」

「「「ギチチチチチッ!」」」


どうやらこっちへわざわざやって来たようだ、なら対処させてもらおう。

アニーとイモトの黄色い体色は隠密には不利、しかし撹乱だと目立つため有利となる。

二匹が素早く駆け回ってアリの注意を引いて、そして俺はその隙を突く。

自らの中で意識を集中、昨日倒した猪の魂に刻まれたスキル……使わせてもらう。

“ブーストタックル”、強化された瞬発力で一直線に突進する物理スキル。

爆発したように飛び出した俺は、撹乱されたアリ一体を難なく吹き飛ばす。

そこで残り二体が俺の存在に気付くが、構わずもう一体のアリの顔下に噛みつく。

体格的には俺が圧倒的に有利だ、噛みつき咥えたままアリを持ち上げて抵抗しづらくする。

怒って突っ込んでくるアリの足に、アニーとイモトが齧りつく。

勢いを殺されたアリは動きが鈍り、そこへ持ち上げているアリを投げ飛ばす。

理解している兄妹は避けれるが、アリは無情にも叩き付けられる。

後は瀕死に二体に得意の尻尾薙ぎでトドメを刺す。

何度も何度も殺りあう為、この手の動きには大分慣れた。


「お疲れ様、二匹とも良い働きだよ」

「ブラックのあんちゃん!」

「ボクたち頑張ったよ!」


アニーイモト兄妹が俺の顔に自分たちの顔を擦り付けてくる。

リザード的愛情表現らしい、二匹に出会ってから知ったことだ。


「プランちゃんもありがとな、おかげで安心して狩りが出来る」

「そんな私なんて、えへへ……」


プランちゃんは大人しい性格ゆえか、自分から愛情表現をすることがない。

だから俺の方からやっている、群れなら皆平等に。


「そろそろ腹ごなしと行きたいが、アリしかないな」

「アリかぁ、酸っぱい汁が出るんだよなぁ……」

「でもたまに甘いからボクは好き!」

「私には無縁の話ですねぇ……」


肉食と草食だと、そこら辺意見を共有できないよな。

俺は一応雑食だから分かる、酸いも甘いも。

それから他愛の話をしつつアリをモグモグしていると、不意に意識が落ちた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






『目覚めよ、我が眷属』

『!』


なんだかデジャブだ……と思ったら龍王様に呼び出しをされたようだ。


『いかがいたしましたか?』

『お主に朗報だ、一定の魔力と条件を満たした故に進化できるぞ』


やったぜ。

けれど思ったより早かったなぁ……いや待て、焦るな。

相手は邪龍、俺を誑かそうとしてる可能性もゼロじゃない。


『それは一体どのような?』

『ふふふ、流石に警戒するか……安心せよ、デメリットはない』


話によると俺が尻尾薙ぎを多用していることが、魔物であるリザード族としては特異なんだとか。

それで尻尾をより攻撃的かつ頑丈にした進化が可能らしい。

進化と言っても尻尾が変異して新しい自分のスキルが付与されるだけで、進化のツリーとしては変化はないそうだ。

疑ってごめんなさい、龍王様……。


『では今より進化を開始する、進化先は“(ブラック)・ホーンテイルリザード”だ』

『ははっ!』


おお、結構強そうな感じな名前……!

とか思ったらまた意識が落ちていった。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「ブラックさん?」

「おおうっ……どうかした?」

「何やらボーッとされてましたよ」

「ん、ちょっと考え事してただけさ」


起きるといきなりプランちゃんの顔があったので、驚いたが何とか誤魔化した。

しかし進化したのかと尻尾を確認したけれど、特に変化はない。

まさかドッキリ?そう言う趣向なの龍王様……とか思った次の瞬間。


「グッ、ガガガガガガガガガッ!!!?」

「キャアアッ!?」

「うぇえええっ!?」

「何これ!?ブラックのお兄さんが燃えてる!」


イモトの言う通り、俺は現在全身が黒い炎に包まれていた。

熱い、熱い、熱いィ!

すいまっせぇーん!!進化とか言われて内心クッソ喜んで調子に乗ってごめんさひぃぃいいいい!!


「いやぁあああ!!ブラックさん!そんな……嫌です!死なないでぇ!!」

「何が起こってんだよぉ!?」

「お水!お水どこぉ!?」


ああ、こんな事なら高望みなんかせずに地道に頑張っときゃよかった。

さらばだ、アニイモ兄妹、プランちゃん……そしてオーさ――――。

……ん?なんだかもう、熱くないぞ?

強いて言うなら何かが被さっててむず痒い、邪魔これ。


「「「……え?」」」


阿鼻叫喚だった三匹が俺を見ながら固まる。

被さっていた物がズルリと抜けた直後のことだった。

何だろうと振り返ると、その目に映ったのは俺の抜け殻と太くなり立派なトゲトゲが生えて頑丈になった尻尾だった。


「……進化した」

「「「ええええええええぇぇぇ!!?」」」


改めて言おう、やったぜ。


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