08
ハーフの兄妹アニーとイモトを仲間にしつつ、念願のスライムを撃破した俺たち。
肉食の二匹の為にもと、帰り際に遭遇した猪の魔物を難なく倒して回収。
それから意気揚々と拠点に戻った。
「それは大変じゃったのう、よくぞ無事じゃった!」
「でっけぇな、じいちゃん!」
「すごーい!」
現在オーさんはアニーとイモトを絶賛孫可愛がり中だ。
何だかんだ群れの一員になった途端、ぼっちが寂しく感じたのかもしれない。
俺の前世で爺さんに会った記憶はないが、いたならきっとこんなだったのかも。
と、過去に思いを馳せているとプランちゃんが声をかけてきた。
「ブラックさんは子供好きなんですか?」
「ん?まぁ好きっちゃ好きだな」
相手するのは一苦労だけど、嫌な気分にはならない。
両親にとって俺はどんな子供だったのかは分からないけど、もし俺に子供がいたとしたらしっかり相手してやりたいな。
「私も、子供が好きなんです……一時期ですけど、一緒に行動したフォレストリザードの子がいたもので」
「へぇ、どうして今は一緒にいないんだ?」
「子ども扱いされるのが嫌だって、自立したいから一緒にいないでと一方的に逃げられちゃいました……ちょっと複雑でしたね」
「オス?メス?」
「オスでしたね」
リザードにも思春期があるんだな、オスとしてメスにくっついてるのはプライドが許さん!みたいな?
その子が無事大人になれることを祈ってるよ。
「……いつか……」
「ん?」
「いつか、私も……」
それからプランちゃんは黙り込んでしまった。
何となく突っ込んで聞くのは野暮な気がしたので、俺は疲れを癒すために横になった。
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暗き森の隣の森。
その中心には大きな穴がある。
中では無数の影が蠢いており、周囲には木以外存在していない。
――――それは巨大なアリの巣。
彼の者らは着々と勢力を伸ばしていた、主たる女王のエサを確保するために。
そしてそのエサの確保場所に、あの暗き森も含まれているのだ。
――――攻勢だ、蹂躙だ。
彼の者らは忙しなく動いている、気が高ぶっている様子だ。
侵略の日は刻一刻と近づいてきていた。
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「「「狩り制限!!?」」」
「申し訳ありませんが、決まりですので」
ガーンだな、もう狩り系の依頼が受けられないなんて……。
そりゃ生態系の維持ってのは理屈で分かるよ、けどこれじゃ今後は採集とか村の仕事の手伝いとか地味で旨みのない依頼ばっか受けなきゃいけなくなる。
「どうすんのランド!目標あと少しだったのに!」
「落ち着くのである、カルパ殿」
「でも……!」
俺のパーティのカルパとシャーウッドさん、新人だからと揃って田舎の村落であるここに修行目的で派遣された同士だ。
街のギルドで活動するには、最低でも辺境のギルドで販売される中での最高クラスレベルの装備を整えてなければ話にならんそうだ。
だからみんなで協力して色んな魔物を狩って、そしてリザード狩りが一番おいしいってことで積極的に狩ってきた。
けれどあと少しで装備が新調できるってところで、この足止め。
運がないとしか言いようがない。
「悔しいけどシャーウッドさんの言うとおりだ……文句言ったって俺らのノルマ達成が早まってくれるわけじゃないんだからよ」
「うぅ……やっとここから脱出できるって希望が持ててたのにぃ」
「気持ちは痛いほど分かるのである、吾輩もいい加減街に戻りたいのである」
同じくだ、帰れるなら帰りたい。
けどどうしようもない……だったら、せめて少しでも早く帰れるように雑事に勤しもう。
俺はそう諦めていた。
しかしここで助け舟が出された、つい先ほど残酷な現実を突きつけたギルドのお姉さんからである。
「……ここだけの話なのですが、朗報があります」
「……えっ、朗報?」
「ほう」
「それは一体……?」
彼女の説明によるとこうだ。
最近“黒亜の森”にて珍しいまだらのリザードの幼生が確認されたという報告があり、ギルド側は非常に興味を示している。
未知の存在の為にぜひ捕獲したいが、他の村や街のギルドに万一情報が伝わると色々面倒が起こる。
故に秘密裏に冒険者に捕獲を依頼したい、成功の暁には多額の報酬を用意する準備がある。
「まだらのリザードの幼生……」
「捕獲……」
「多額の報酬……」
やるしかない、一刻でも早く街に戻りたい俺たちにとっちゃこの上ない話だ。
俺たちは決して周りに気取られないように、お姉さんからギルドの依頼を受注した。