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07

狩り場に入って暫く経った。

あれから狼やキノコの魔物をそこそこ狩ったが、まだ同族には会えていない。

てっきり人間に狩られやすいから狩り場で過ごす奴が多いのかとも思ったのだが、そういうわけでもないらしい。

まぁ人間だろうが、魔物だろうが殺されることには変わりないが。


「キノコ、美味しかったです……まだ戻らないんですか?」

「ああ、まだだ」


嬉しそうに尻尾を揺らすプランちゃん、よかったね。

まぁ俺もその横で狼肉をもりもり食べて満足したけども、まだ切り上げるわけにはいかない。

昨日見た中で気になっている魔物……あのスライムらしき生物を、俺は現在捜索している。

厄介な相手な気はする、しかし見た目的に魔力を多めに持ってそうな予感があるのだ。

もしそうだったのならば、ぜひ今後優先的に狩っていきたい。


「……そういえば全然同族に会えませんね」

「そうなんだよな、そっちも気がかりで----」

「誰か、助けてぇええええ!!」

「「!」」


若干同族については明日に回そうと考え始めた矢先、助けを呼ぶ叫びが聞こえた。

俺もプランちゃんも間に合うよう祈りながら急いで駆け出した。

たどり着くと、そこには二匹の子供のリザードとスライム型の魔物と言うお目当てがまとめて目に映った。

だが喜ぶ暇もなさそうだ、片方の子供の尻尾がスライムに飲み込まれて消化されだしている。

飲まれてる方は泡を吹いて気絶していて、もう片方は涙を流して必死に威嚇していた。


「大丈夫!?」

「えっ!?ああ、よかった!お兄ちゃんを助けて!ボクを助けるために……うぅぅ……!」


どうやら兄弟……いや、匂いからして兄妹か。

兄が妹を助けるために頑張ったんだろう、健気な。


「プランちゃん、その子は任せた」

「はい!」


時は一刻を争う、俺はすぐさま接近してアニー(命名)の尻尾を身体から分離……と言う名の引きちぎりを行った、でぇじょうぶだ!時間が経てば再生する!

後ろでイモト(コモドドラゴンのライバルとは無関係な命名)が悲鳴を上げた、ちょっと罪悪感。

一方でスライムはと言うと、俺は眼中に無く引きちぎったアニーの尻尾にまだ夢中なご様子。

やはり頭は良くないっぽい。


「チャンスだが、正攻法だと難しそうだ……よし」


俺は自分の中で意識を集中する。

すると狼数匹分の魂、そしてキノコの魔物数体分の魂が並ぶ。

狼たちは即刻魔力還元のためカジカジ、一方キノコは面白いスキルが刻まれているようだ。

“胞子の息吹”、おそらく主に目くらましや威嚇に使うスキル。

使う前に倒せたために詳細は分からないが、スライムには有効打に思えた。

早速キノコの魔物の魂に触れる、すると魂が俺に宿った。


「バアアアァァァァァァ!!」

「「えっ!?」」

「!!!」


後方待機中のリザード二匹が驚愕し、スライムは突然のことに大混乱。

身体がゼリー状のスライムの中に胞子が大量に流れ込み、色が変になっていく。

どうやら慌てたのか、コアらしき球体上の物が外に逃げ出てきた。

その機を逃すわけがない。


「シャガアアアアアアア!!」


先ほど若干手に入れた魔力によりパワーが底上げされている俺。

今まで以上の速度で駆け寄り、噛みつき、噛み砕く!

肉弾戦しか能がないリザードでは出来ないこの芸当、邪龍の眷属で良かったと改めて思う瞬間だ。

結果球体上の物は本当にコアだったようで、スライムは跡形もなくなってしまった。


「ふぅ……狩った狩ったぁ」


俺がホッと一息ついて振り返ると、プランちゃんとイモトは呆けたように口を開けている。


「どうかしたのか?」

「どうしたもこうしたも……ブラックさん、“ブレス”吐けるんですか!!?」

「えっ、ああ、うん」


迂闊だったか?

この世界で“ブレス”ってどんな位置づけなのか良くわからんからなぁ、反応に困る。


「“ブレス”をこの目で見られるなんて……感激です!」

「お兄さんすごい!」

「お、おう」


とりあえず悪いことではなさそうだな……帰ったらオーさんに聞いてみるべきか?

なんて考えを巡らせながら辺りを見渡し、転がるアニーを見つけて回収した。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「ありがとう!ブラックのあんちゃん!」

「ありがとう!ブラックのお兄さん!」

「どういたしまして」


しばらくしてアニーが目を覚ましたので、何があったのか説明した。

すると二匹とも入たく感謝してきた、こういうのも悪くない。


「けどどうして狩り場に?草食の私も場違いだけど、子供が入る場所じゃ……」


プランちゃんの質問ももっともだ。

身体が大きくなった後なら分かるが、それでも厳しいのに子供が来るならば自殺と変わらない。


「分かってるよ、けど他にしょうがなかったんだ!」

「ボクたち肉食のリザードだから、狩り場意外だと食料があんまりいなくて……」


ほう、肉食のリザードもこの森にいるのか。

てっきりフォレストとプランターが、この森のリザードなのかと。

そう意識して見ると色合いが土色と黄色のまだらだった。


「そういえば見たことない見た目かも……あなた達って?」

「あっ、言ってなかったっけ」

「オレたちはジャーニーリザードとフォレストリザードの合いの子、らしい」


ああ、なるほど。

ジャーニーという事は長距離移動する渡り鳥みたいなリザードなのだろうか。

そして旅先で出会った同族のフォレストリザードと交尾した結果、それがアニーとイモトの二匹。

うん、そりゃ見たことあるはずないわな……たまたま出来たハーフなんだもの。


「父方の血のおかげでボクたち足が強くて、追いかけたり逃げたりするの得意だけど……同時に肉食性も受け継いでたみたいで」

「肉を得るには狩らなきゃいけない……だからここに来たんだ、結果はこのざまだけどさ」


アニーはなくなっている尻尾の方を見せる、血は止まったようだが痛々しい(ちぎったのは俺だけど)


「お兄ちゃん……ボクら二匹、これからどうしたらいいのかな?」

「……分かんねぇよ」


悲嘆にくれる兄妹。

やはりリザード族、ハーフと言う常識外の存在であろうと群れの概念はないらしい。

まぁ兄と妹で一緒にいるだけ賢明か。


「お前らは勘違いをしているぞ」

「「えっ?」」

「もう二匹じゃないぞ、五匹だ」


アニーとイモトはキョトンとしている。

俺は現在群れを作っていること、そしてそれを拡大するために同族であるリザード族を集めていることを説明した。

すると真剣に話を聞いていた二匹は、俺への距離を詰めてきた。


「本当に、オレたちを群れに入れてくれるのか!?」

「ボクたちまだ子供だし、迷惑かけるかもしれないよ!?」


アニーもイモトも尻尾をブンブン揺らし……いや振っている。

今までさぞかし苦労したことだろうな。


「構わん、大歓迎だ」


二匹は一斉に俺に飛びついた。

やれやれとプランちゃんに視線を向けると、口元を緩めながら優し気にこっちを見ていた。

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