06
翌朝。
狼の肉は食べきっていたため、プランちゃんが近場で採取してきた植物を食べた。
オーさんの種であるフォレストリザードは雑食らしく、ブラックリザードの食性は分からないけど少なくとも食べられなくはないと感じられた。
強いていうと青臭かったので、積極的に食べたいものではないって感じだが。
「今日はどうするんじゃ?」
「無論狩りと群れの拡大です、再度留守をお任せしたい」
「構わぬよ、じゃが……」
俺の願いにオーさんは異論はなさそうだったが、ゆっくりと視線を動かした。
その先にはプランちゃんがいて、首を捻っている。
「この子はどうする?」
「一緒に来てもらいます」
「えっ!?」
彼女は驚いて即座に俺を注視する。
「わ、私足手まといになりそうですけど……」
「俺この辺の地理詳しくないし、案内を頼みたいんだ」
「そうなんですか?うぅ、でも……」
どうやら狩場に赴く事に不安なようだ。
だが仕方ないな、命を失うかもしれない場所だ……。
「留守を守るとして、万が一戦いになった時にオーさんの邪魔になっちまうかもしれない……かと言って食料調達を任せても、そこを別の魔物や人間に襲撃されるかもしれない」
オーさんは強いだろうがあの体格だし、洞窟内だとプランちゃんを巻き込むのを気にして全力が出せなさそうだ。
そして単体行動をとると、その瞬間良いカモに逆戻りだ。
合理的に考えて俺と一緒の方が、助かるし助けられる。
「群れになったのはつい昨日だ、だから色々考えちまうだろうけど……」
「はい……」
「信じてほしい、俺には仲間が……君が必要だ」
邪龍の眷属であろうと俺一匹じゃ、きっと生き抜くのは困難な道だ。
だから冗談抜きで俺は仲間を欲してる。
その気持ちをありのまま伝えたが、プランちゃんはいたく動揺した。
「ひ、必要……本当に、ですか?」
「ああ、本当だ」
彼女の言葉に決して迷わず答える。
するとずっと固まって微動だにしていなかった、深緑の尻尾がゆらゆら揺れ出した。
「分かりました、ブラックさんを信じます!」
「ありがとう」
なんとか説得に成功した、今後も同族関係の構築は色々骨が折れそうだと感じた。
なお後ろでオーさんが楽しそうにニヤニヤしていたのが、ちょっと腹立たしかった。
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プランちゃんをお供にし、俺は暗い森を突き進む。
同族探しはもちろん重要だが、今回のメインは他の魔物を狩って有用な魂を見定めることだ。
還元時の魔力量や刻まれたスキル、それが分かれば狩る優先順位がつけやすい。
「……血の臭いが強くなってきましたね」
「この先ってことだな、狩り場は」
魔物の生息数が多く、特に生存競争が厳しい場所……だから狩り場。
狩り場には人間もリスクが高いと滅多に近づかない、だからこそ俺の修行場にはもってこいだな。
もちろん死のリスクは避けられないが、生きてりゃどこだってそうだ。
「ギチチチチチッ!」
「キャアッ!?」
「プランちゃん、下がってな」
「は、はいぃ!」
早速獲物がお出ましなようだ、見た感じ大きなアリと言った外観の魔物だ。
リアルと習性が同じなら森の付近の地面に巣があって、そこから女王の為のエサ集めでもしてるって感じか。
アリは俺を見つめて口で威嚇をしている、しかしのんびりやる気はない。
俺は威嚇など意に介さずに、速攻で尻尾を奴の顔面に叩き付ける。
「----!!!」
「ひえっ」
「思ったより硬かったみたいだが、片目はいかれたか?」
片目がひん曲がり、顔が若干へこんだアリは怒った様子だ。
サイズとしては俺より一回りから二回りほど小さい感じだが、元を考えると恐らく捕まったら余裕でブン投げられそうだ。
そんな奴が案の定怒りに任せて突っ込んできた、ならやるべきは……。
「もういっちょ!」
後ずさりつつ回転を加え、今度は逆向きに尻尾を振るう。
遠心力に相手の力を活かしたカウンター、先ほどのダメージも加えてアリの頭は完全に潰れてしまった。
アリは強いと思う、だがそれは数で押したときの話だ。
一対一なら、そこまで危惧する相手じゃない……種によるだろうけども。
「こんなあっさり……」
「真正面からだと苦戦したろうけど、ちゃんと俺たちのの利点を生かせば良い」
「利点ですか?」
「この長い尻尾だよ」
リーチがあり、それなりに頑丈。
結構優秀な武器だし、他の魔物ではあまり使えない戦法だろう。
某怪獣王もよく使う手でもある。
「考えてみたこともありませんでした……ブラックさんって頭がいいんですね」
「生き残るのに必死なだけだよ」
流石に元人間だからなんて言えない。
冗談と取られる可能性もあるが、本気に取られたら警戒されて不安な関係に逆戻りだ。
「さぁて、まだ一匹狩っただけだ……警戒しながらどんどん進むよ」
「あっ、はい!」
プランちゃんは慌てて俺に追従する。
まだ狩りは始まったばかりだ。
ブクマ、評価ありがとうございます
これからも精進します!