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04

さて、勝つには勝ったが手傷を頂いちまったな。

俺なりに全力で野生を開放して我武者羅に大暴れしたものの、ラノベ主人公みたいにチートで無双するような展開にはそうそうなるもんじゃないようだ。

ともかく血を止めるためにも傷口を塞ぐようにしつつジッとしてよう。

その間に襲われたりしたら……その時はその時だ。


「……あの」

「!」


不意に俺でも分かる言葉で声がかけられる。

少々驚いたが、この世界において言葉がわかるってことは……。


「同族、か?」

「ええ、そのとおりです……ご、ご無事ですか?」

「ああ、なんとかな……」


俺の問いに安心したように一匹のリザードが現れる、他のが土色をしてるのに対して深緑の独特な色の奴だ。

そして声の感じからして、とても大人しそうな印象を受ける。

あと妙にいい匂いがする、食性の問題か或いは……。


「ここらのリザードはメスであっても単独行動なんだな」

「えっ、他の地域だと複数行動なんですか!?」

「場所によるかな」


と言うのは知らないが、カマ掛けてこのリザードがメスだという事は把握した。

例え別種でもメスだとフェロモンかなんかで判断できるって事なんだろうか……まぁ、一応覚えておこう。


「俺はブラックリザード、この土地の者じゃないが……あんたは?」

「プランターリザードです、この近辺で植物を食べて生きています」


プランター……フォレストの亜種だろうか、少なくとも草食らしいことは分かった。

大人しくて草食って言うと、数が多かったりより大型なイメージあるが……この子は俺より小さいな。

どうすっか……プランちゃん(命名)でいいかな。


「ならプランちゃん、あんた近くで他に同族と遭遇したりしてないか?」

「プラ……?えっと、先ほどたまたま遭遇したフォレストリザードがいましたけど」

「どっちだ?」

「すみません、人間らしき気配がしたためバラバラに逃げましたので……」


……そっか、あの時の奴か……もう少し早く出会えてれば救えたのだろうか?

いや、狼四匹葬ったくらいで過信すんな俺。

人間が恐ろしいのは元人間の俺が良く知ってるだろうに。


「なら探すのも手間か、諦めよう」

「その、ブラックさんは何故同族を探しているんです?」


俺の言動に興味がわいたのか、プランちゃんは俺の傍に寄って来る。

うん、良い匂い。


「群れを大きくするためさ」

「む、群れ!?」

「リザード族絶滅の危機みたいだし、ここは一致団結していこうと努力をしようとね」


人間に旨みのある獲物と認定されてる以上、単独行動なんて狩ってくれと言わんばかりの愚かさだ。

弱いならば弱いなりに身を寄せ合って、協力しないと。


「そうですか……群れ……」

「どうだろう?プランちゃんも来ないか、俺の群れ……まだ俺含めて二匹しかいないけど」


俺とオーさんの二匹、正直群れと言えない何かだ。

しかしこれでも普通のリザード族には第一歩だ。


「そんな……私小さいし、ブラックさんに比べたら非力ですよ?」

「だからこそだよ、弱いから群れるんだ……生きる為に」

「生きる、為に……」


プランちゃんはしばし考え込んで、意を決したように頷いた。


「分かりました、私も連れて行ってください!」

「ふふふ、歓迎するよ」


まだ満足できる結果とは言えないが、とりあえず目的は果たせたようだ。

少し、安心した。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






血が止まってから俺はプランちゃんを仲間に加えて、一緒に狩った狼をオーさんが待つ拠点へと運ぶ並びになった。

と言っても非力なプランちゃんと同数持つのは、なんかプライドが許さなかったために俺が三体分運んだ。

彼女は気を使って心配してくれたが、手負いリザードでも案外何とかなるものだ。

もしかしたらブラックリザードってタフな種なんだろうか?


「オーさん、帰ったよ」

「おお、良く戻った……ほう、よもやプランターリザードを連れ帰るとは……」

「お、オールド……フォレストリザード……!初めて見ました!」


待ちわびたようにオーさんは出迎えてくれたが、プランちゃんを見て目を見開くくらい驚いた様子だ。

そしてそれはプランちゃんも同様であり、オーさんに対して好奇の目線を向けている。


「もしかして、珍しいのか?」

「プランターリザードは卵が美味だと人間や他の魔物に狩りに狩られとったからな、とっくに絶滅しているもんかと……」

「リザード族でオールドに到達できるのはほんの一握りだそうで、まして私たちに次いで狙われやすいフォレストリザードでとなるとほんとに……」


俺の運がいいのか、それとも邪龍の眷属としての力なのか……何にしても、激レア二体を引き当てているようだ。


「じゃがおぬしも大概じゃがのう」

「ブラックリザードと言う種は、全く聞きませんし……」


あっ、そうなの?

だったらレア同士引かれあったとするべきか。


「ふむ、これも何かの縁ってわけだ……今後も群れとして仲よくしようぜ」

「異議はないのう」

「はい!是非に!」


こうして俺の群れがほんのちょっとだけ大きくなった。


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