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翌日、プランちゃんの様子をちょっと見てからペッシュに出発した。

お腹の感じは特に変化はなく、体調も良好らしいので安心して留守に出来る。

何しろ相手は俺が得意じゃない水中の強敵だ、プランちゃんの状態をずっと気にしてたら戦いに支障をきたしそうだしな。

新たな子供の為にも、決して負けられない。

パトリシアとアン乗せて移動中にそんな事を改めて決意していたが、ここで“魔力探知”が反応を見せる。


『二人とも、川沿いより数三十……来るぞ』

「三十かぁ、随分大所帯」

「そしてこの辺りとなりますと……何となく察せれますです」


奇遇だなアン、俺もそうなんだよ。

昨日の今日だ、何か行動を起こそうとしてもおかしくはない。

反応のする方に目を向けると案の定である。


『殺セギョ!!』

『仲間ノ仇ギョ!!』

『蜥蜴ト人間ガナンボノモンギョ!!』


どうやら先日追っ払った奴らが、殺した魚人族の仇として俺を狙ってるらしい。

全く、あれだけ力を示したのに……命が惜しくないようだな。


『槍部隊ハ前ヘ!魔法部隊ハソノ後ロ!ソシテソノマタ後ロニ弓部隊ギョ!』


槍持ちが二十、魔法と弓が五ずつ。

脅威には感じないが、魔法と弓に細工があるかもしれない。

念には念を入れて、徹底的に全滅させよう。


『パトリシア、隠蔽で気配を消して後方から弓部隊の襲撃』

「了解」

『アンは魔法の防御と迎撃を、お前ならたやすいだろう?』

「もちろんです」

『俺は槍部隊を貰う……行くぞ!』


各々散って戦闘開始。

魚人族の槍部隊は構えをとりながら迫ってくる。

その横を気配を消しているパトリシアがそろそろと移動。

魔法部隊は杖を構えている。


『スプラッシュ!』


一斉に多量の水しぶきが襲ってくる。

それに対してアンが前に進み出て杖を構える。


「防がせていただきますです!」


マジックバリアを展開、水しぶきたちを防ぎきる。

そして即座に魔法を打ち出す。


「ファイアボール!」

『スプラッシュ!』

『矢ヲ放ツギョ!』

『援護する、クリエイトファイア……ランス!』


アンのファイアボールに対して、五匹分の水しぶきと矢。

これだと撃ち負ける可能性があるので、槍術の為に練習したランスを作って速攻で放つ。

ファイアランスはファイアボールを追い抜き、魚人族の矢を焼き落とし、水しぶきと激突。

消えたものの、ファイアボールを通す隙を与えた。


「そこです!」

『ギョギョギョ!?』


ファイアボールは魔法部隊に向かって落下、奴らはマジックバリアが使えないらしく、逃げるのに遅れたため直撃。

火に焼かれて転げまわっている。

釣られて弓部隊が混乱しているが、そこをパトリシアが見逃すはずがなく。


「はい、いただきぃ!」

『いつのまギョエエ!?』


後方の大混乱、けど槍部隊は乱れずにこちらに突っ込んでくる。

どうやら槍部隊は相当訓練を積んでいると見た。

俺はアンの前に進み出て、槍部隊に対応する。


『性懲りもなく攻めてくるとは、愚か成り!』

『コノバケモノギョォ!』


元人間としては、魚にまんま手足が生えたようなお前らに言われたくない。

俺はホーンストライクでリーチを制して先手を取る、槍部隊の前衛は崩壊。

負けじと奴らは槍で何度も突いてくるが、硬い鱗と甲殻に弾かれて刺さらない。

だったらと余裕を持って前脚で攻撃を加える、人ふるいで一匹が余裕で吹き飛ぶ。

ここで何故前脚での攻撃に拘るのか、疑問がある様子のアンが目に入る。


ーーーーその答えはリザード時代に経験した強化進化にある。


前脚による攻撃を多用していたら、頭や尻尾のように強化として新たなパーツが生えるかもしれない。

それがもし翼だったら、ドラゴンになれる道に一直線だ。

俺はその望みにかけて、前脚を多用しているのだ。

前脚の攻撃が効き辛い相手には、角や尻尾や豪火の出番だが。


『ヤメルギョオウアッ!』

『死ニタクナイ……死ニタギョボボボボボボッ!!』


逃げ出そうとする奴は、パトリシアやアンによって狩られている。

哀れにもこの程度の戦力で勝てると思いあがった貴様らの自業自得だ。

潔くその魂を差し出せ。

……おお、今の龍王の眷属っぽくていいね。

なんてくだらない事を考えているうちに、魚人族の部隊は全壊した。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






パトリシアとアンと共に、漁師の町ペッシュ周辺の狩りへ出て早二日。

ステファニーは二人が俺の眷属だと伝えると、素晴らしい!と積極的に仲良くしだした。

二人としても悪い気持ちじゃなかったため、三人はすっかり馴染んでいる。

特にステファニーとアンの気の合いようは強く、俺の事でよく話をしてるのを見る。


「あの方がいなければわたくしもステフもいなかったです、共通の恩人です!」

「まさしくそのとおり、サラマンダー様は本当に偉大な方でございます!」


アンの忠誠心とステファニーの信仰心、似て非なるが二人は共感している。

一方でパトリシアは二人に共感はしてないらしく、その話題には参加しない。

代わりに俺の近くに寄り添ってくる。


「あ、あたしはさ……あそこまで声を大に出して色々言えないんだけど……分かる、よね?」


不安げに見上げてくる彼女に、分かってるとは返さず黙って頬ずりをする。

すると決まって嬉しそうに微笑んで頬ずり返してくれる。

猫は気まぐれ、女心は秋の空……変に飾った言葉よりかは、パトリシアは行動で示す方が喜ぶ。

俺にとっては二人は大事な眷属だし、ステファニーは町との縁を作るための橋渡し役で護衛対象。

しっかりと守らなくては、男……もといオスが廃る。

不意に魔力探知に反応が出る、ラーバグという水棲昆虫のタガメっぽい奴だ。

大きさ的にデカく、前脚攻撃だと黙らせられない……ってことで尻尾でぶちのめそう。

俺は近づいて体液を吸おうとしてくるラーバグに、ホーンストライクからのホーンストライクという強烈なに連撃をかます。

最近魔力が増えて大きく身体能力が上昇したためか、以前出来なかったようなテクニカルで素早い攻撃が可能になったのだ。

ラーバグは対応しきれず、二発とも頭部に命中して首ちょんぱ。

倒れ伏して俺に魂を捧げた。


『我が眷属よ』


あれ?

何故このタイミングで来なさった、龍王様。


『いかがいたしましたか?』

『我が話しかけるとなると、おぬしも大体察しておるだろう……強化進化の条件が整ったのだ』


……なんですと?

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