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俺たちは突然、強敵に進行を阻まれた!!
……なんてことはなく黒亜の森に無事たどり着いた俺とアンは、早速元拠点である洞窟へ来た。
三匹だけでしっかり守り切れているか若干ながら不安であったが、なんて事はなく無事な様子だった。
「オーさん、アニー、イモト、帰ったぞ!」
「おお……その呼び方を知っておるという事はブラックなのじゃな?」
「え!?マジであんちゃん!?」
「また変わってる!!しかも人間普通に連れてる!!」
「まぁまぁ!沢山いますです!」
多少の混乱はあったものの、三匹は俺の話を聞いて、受け入れてくれた。
アニイモ兄妹は新天地にワクワク、オーさんは長く住んだ洞窟に名残惜しそうに別れを告げ。
既に暗くなってきているが、完全に夜になる前に三匹を連れて黒亜の森を後にする。
次は眷属三名に留守を任せてある新たな拠点に向かうのである。
恐縮するアンを背に乗せ、アニーとイモトを乗せたオーさんと共に歩き出した。
なおついでに食料確保のための狩りもこなした。
「む、あれは厄介な……もう倒したんじゃな」
「あいつはオレの尻尾のかた……溶けた……」
「見て、狼が沢山……もう全滅!?」
「ブラック様、グリーンフライが……糸で華麗に捕獲とは、鮮やかなのです!」
トカゲとドラゴンの中間っぽいサラマンダーになり、様々な魔物の魂スキルを得た俺。
この辺りの魔物は悉く雑魚になっており、知能の高めな奴は姿を見た瞬間逃げ出す始末。
だからこそ魔力の糸が非常に役に立った、虫系の魔物とかはその場で食って捕食により魔力を得たりもしていた。
美味い美味い、二重の意味で。
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新拠点にたどり着くころには完全に夜になっており、巣穴の中も周辺も真っ暗だ。
俺やリザード達は夜目が効くっぽいが、人族のアンはその限りではないらしい、例の食糧庫の事を思い出すのか震えていた。
その為俺は左右の角の間から火炎魔法バーニングを出し、灯りとして巣の中を進んだ。
それに対してアンは黙って俺の身体に、自らの体重を預けてきた。
こうやって信頼が増してくれるのは、嬉しい限りである。
『ただいま!プランちゃん、群れは無事だったぞ』
「ブラックさん、おかえりなさい!オーさんもアニーくんもイモトちゃんも無事でよかった!」
「おかえり、ブラック!そっちが群れの面々ね」
「ガウ!」
「獣人か、初めて見るのう」
「あの獣初めて見るね!」
「狼よりでかいし、強そうだよな!」
ようやく俺の仲間が全員合流出来た、これで群れとして再始動だ。
まずは腹ごしらえという事で、狩ってきた獲物や食糧庫の奴らを調理して皆で食事をすることにした。
魔物を捌いて肉にするのはパトリシア、火で焼いて調理するのはアンに任せた。
「え、えっと……」
「パトリシア様、でしたですね?目覚めてすぐの無礼、申し訳ありませんです」
「え?い、いやいや!大丈夫だよ、あんな事あった後だしさ!気にしてないよ!」
「良かったです……これからは共にブラック様の眷属であり、元人間側の存在としてあの方を支えて参りましょうです!」
「うん!あたしもブラックにはかなり恩義があるからね、もちろんそのつもり」
「ふふふ、そうですシア様とお呼びしてもーーーー」
二人は出会いこそ良くなかったが、既にアンが落ち着いていて余裕が出来ていた。
似た立場だった事も手伝って、共同作業の中で少しずつ仲良くなっていったようだ。
二人によって出来上がった熱々の肉やキノコ、野草は非常に美味しかった。
火が通るだけでここまで料理の質が上がるとは、やはり火は偉大だ。
他の皆も同意見で、野生に生きてきたリザード達も喜んでいた。
『さて、食事も終えた……ここらで今後の方針を固めよう』
俺の念話を聞いて、全員が耳を傾ける。
まだまだ数は少ないが、群れとしては大きくなったし多様性も出てきた。
それぞれ出来ることが違うだろうから、まずは俺が基本的に役割をあてがって意見があれば聞くという事を伝えた。
出た結果はこちら。
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プランターリザード(プランちゃん)とマウンテンベア(ミミ)→狩りと野草の採取
パトリシアとアントワーヌ→人里での活動(拠点用資材購入やそのための資金入手)
オールドフォレストリザード(オーさん)→拠点警備と清掃
ハーフリザードキッズ×2(アニーとイモト)→周辺警戒と伝令
サラマンダー(俺)→戦力確保、群れの拡大
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恐らく現状これが無難と思われる。
現眷属たちが新たな眷属を増やすと、魔力が溜まりづらくて進化が遠のいてしまう。
ここは捕食という便利な手札があって魔力回収効率が良く、群れ最強にして長の俺が眷属を増やす方が後々を考えると合理的だろう。
オーさんは年だからあまり無理はさせず、身軽なアニイモ兄妹は色々と頑張ってもらう。
これで全員異論は無かったため、方針会議は終了。
既に夜も更けているので、お疲れな皆は次々雑魚寝を始めていく。
人族と獣人族のパトリシアとアンは、ミミの身体を使わせてもらって眠った様子だ。
……ただ一匹、違う子もいるわけだが。
「ぶ、ブラックさん……その……!」
プランちゃんだ。
アント族と言う脅威は退けた、そしてプランちゃんの例の告白について俺はよぉく覚えている。
それに戦いが終わったら好きなだけ乗っていいって約束もしてた。
リザードからサラマンダーにはなったが、種としては近しいしいけるだろ多分。
「うん、良いよ……皆の睡眠の邪魔しちゃ悪いし、離れた横穴にでも行こうか」
「……ふ、不束者ですが……」
「こちらこそ、前世でも経験ない事だからよろしくな」
緊張した面持ちの彼女を落ち着かせるように頬ずりしてから、俺たち二匹は暗闇に消えていった。
子・づ・く・りっ、しまっしょ☆(フォイ!




