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はい、よーいスタート(サラマンダー編)

アントクイーンを倒し、存在進化を果たした俺。

素体が貧弱なリザードから、激強なサラマンダーへと変貌した。

非常に喜ばしきことだが、だからと言って余裕持ってはいけない。

すぐにでもやるべきことがある。


ーーーーお腹が減ったのだ。


いや、決してふざけてなどいない。

存在進化にエネルギー消耗したせいで、お腹が空き空きなのだ。

このままでは腹が減って死にそうだ。


『すまない、ちょっと食事に入る』

「あっ、はい、どうぞ」


パトリシアは俺に対して、完全に畏まってしまっている。

まぁプランちゃん曰く、サラマンダーの威圧感半端ないみたいだからね。

突然変異の上位種だけある。

と、話はさておき飯を食おう。

今回の飯は~。


ーーーーアントの卵ぉ~(CV青狸)


多分前世だったら絶対食わない類、しかしこれには利点がある。

それは生きてる餌であり、魂が回収でき、沢山あるってことだ。

クイーンの置き土産、ありがたく頂戴する。

モグモグ……ツルンとした触感、プチッと爆ぜる感じはイクラにも似てる……けど大きい。

味は……エビだな!ちょっと苦みあるけど。

食べるたびに、捕食で魔力が流れ込んでくる。

これは良い、量としては多くないが塵も積もればなんとやらって感じだ。

俺は腹を満たそうとバンバン食っていった。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







卵たちを食い切ったころには、魔力もある程度入りつつ腹も満たされた。

ただリザード時よりたくさん食べないと、満たされない感あるな……うん。

満腹になった俺にプランちゃんが声を掛けてきた。


「ブラックさん、ここどうします?」

「ん?ああ、そっか……もうクイーン居ないんだし、好きにしていいのか」


だったらここを新しい拠点にしよう、いつかは洞窟が手狭になるとは思ってたし。

ただここを新しい拠点にしようって考えが浮かばなかった辺り、俺も大分切羽詰まってたのかね。


『決めたぞ、ここを我ら眷属とリザード族の群れの拠点とする』

「分かりました!」

「は、はい!」

「ガウ~!」


よし、少しづつ調子戻って来たかな。

頭も冷静になってきた。

ここで次に俺がやるべきことは……俺は自分の中に意識を集中する。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


サラマンダー【龍王の眷属】


スキル<自前>

ホーンストライク 尻尾で強烈な攻撃を加える

ホーンバニッシュ 頭部で猛烈に突き上げ、吹き飛ばす

豪火       強力な火炎を吐き、燃やし尽くす

再生       傷の治りがかなり早くなる

念話       他者の心と直接語ることが出来る


火炎魔法LV1(熟練度0)

バーニング    狙った場所に火炎を起こす、飛距離が長くて火力も調節が可能


スキル<魂>

光合成      光を受けている状態で水を飲むと、体力が回復 【花の魔物】

胞子の息吹    大量の胞子を吐き出す、主に目くらましに使用 【キノコの魔物】

バインドボイス  魔力の籠った咆哮を上げる 【鶏の魔物】

ブーストタックル 自身の瞬発力を引き上げて突進をかます 【猪の魔物】

強酸液      強めの酸性の液体を吹きかける 【ソルジャーアント】

毒液       蝕んで相手を弱らせる毒の液体を吹き出す 【アントエリート】 

捕食       生物を喰らう事で体内に巡っている魔力を取り込める、死体では効果なし 【アントクイーン】     

魔力の糸     自らの魔力で形成した糸を用いる 【芋虫・蜘蛛の魔物】


火魔法LV2(熟練度53)

バーン 狙った場所に火を起こす、威力は低く戦闘には不向き

ファイアボール 火球を作って飛ばす、魔力次第で化ける


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


俺は自分のスキルを確認しつつ、アントの魂達を還元する。

僅かな魔力を次々溜め込みながら、一つ気づいた。

一応火魔法を数度使用したにも関わらず、熟練度が上がっていない点だ。

魂スキルだからと言うならば、熟練度が高い相手の魂を保有する必要がありそう。

或いは熟練度ってのは簡単に上がらないものなのか……。

まぁどちらにしても、検証は新たにLV付きスキルを得てからにする。

俺は少女の魂に、先程得た魔力を注ぎ込む。

卵で得たそこそこあったであろう魔力が空になる直前に、眷属化が可能になった。

ふむ……やはり魔法が扱えるだけあって、所持魔力も高いらしい。

と、ややあって魂が光を放って新たな(けんぞく)が現界する。


「う……ん?」


まだ目覚めたばかりで、どういう状況か判断がつかずにキョトンとしている様子の少女。

赤い髪を三つ編み二つ結びのおさげにしており、地味な色合いのローブとは対照的な感じ。

外観年齢的には12~13才と言ったところだが、何処となく気品も感じる。


「あっ、この子は……!」

「……はっ、貴女は!」


パトリシアが気づいたのか、少女に近づく。

しかし少女は素早く後ずさり、構えをとっている。


「近づかないでほしいです!」

「な、何で……」


どうやら相当警戒している様子だ。

そこで俺はふと思った。


『あの時助けを求めたのに断られたから、ショックだったんじゃないか?』


念話でそう伝えると、パトリシアはハッとしたように俺を見た。

声には出なかったが、『それだ』と口にしている。


「わたくし、怖かった、苦しかった……なのに、なのにぃ……ッ!!」


どんどん瀕死の時の情景が浮かんできているのか、感情が高ぶって涙が流れ出す。

致し方ない、こんな幼げな少女が死の淵に追い込まれていたのだ……パトリシアに非がなくとも、ついつい怒りや悲しみが湧いてしまうのだろう。

そしてその感情を一身に受けるパトリシアは、どうしたらいいのかパニック状態だ。

泣かれるのに弱いのか、俺に助けを求める視線を寄越す。


『なるほど、まるで燃え盛る火のような奴だ』

「----ッ!?こ、この声は……」


少女は死の直前、俺の『助けよう』と言う声を聞いた。

恐らく強く印象に残っているだろうが、声の主が何処にいるかまでは判断がつかないようだ。


『後ろだ、もっとしっかり目を凝らせ』

「後ろで……す……?」


急いで振り向いた少女、途端に俺の身体が目に入る。

その視線がゆっくりと上がっていくと、お互いに目が合った。


『覚めたようだな、娘よ』

「あ、あ、ああ……ッ!」


目を見開いて、彼女は俺を見ている。

致し方ない、リザード系だがリザードらしからぬ威圧感がある魔物だしな。

彼女の反応は当然----。


「う、うつくしい……です……!!」


お?


「うつくしいですぅ!真紅の鱗に黒い甲殻!すべてを圧倒するオーラ!そして何より……見た者を(ことごと)く焼き尽くしそうな、その瞳!!」


ちょっとこれは。


「……お、お名前を……お聞かせくださいませ……です……!」

『……種族はサラマンダー、今は仮にブラックと名乗っている』

「サラマンダーのブラック様!!ああ……素晴らしいですぅ……」


予想外、です……。

彼女は胸を抑え、その髪と同じ赤い瞳を爛々と輝かせている。

てっきり驚愕や恐怖などのマイナスイメージになるかと思ったんだがなぁ。

どうやらこの子は、特殊なタイプらしい。


『娘、今度はそちらが名乗る番だ』

「はっ!?わたくしとした事が、大変失礼しましたです!」


恍惚とした表情が、一気に引き締まって佇まいを直す。

そして少女は優雅に一礼した。


「わたくしはアントワーヌ・ベルリオーズ、ご気軽にアンと呼んでいただけますと幸いです」

「ベルリオーズ……!」

『知っているのか!らい……パトリシア!』

「数々の優秀な火系魔法使いを輩出して、帝国で名を馳せてる名家だよ!」


となると、かなりのお嬢様か!

通りで何処となく気品があると思ったが……これは思わぬ拾い物だ。

パトリシアももちろん優秀だが、この子……アンは将来有望だ。

俺は期待に胸を膨らませた。

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