20
今日一日で二人目の人間の殺害。
慣れたくはないが、恐らく今後幾度も経験しそうだ。
パトリシアの時は近くに敵がいたから考える暇がなかったが……今回はそのパトリシアの為にも早々にトドメを刺した。
傷だらけで瀕死の少女を見たパトリシアはガチで同じくらい苦しそうに胸を抑え、少女の救いを求める声に謝っていたのだから……こんなん長引いたら心が病む。
ただその結果パトリシアに強いショックを与えてしまった、もうちょっと考えてやるべきだったかもしれん。
そんな彼女に、俺は自分なりの答えを返すしかなかった。
「ごめん……感情に流されて、嫌な事言っちゃった……」
パトリシアは良い子だった、素直に謝れるのは非常に好感が持てる。
俺は彼女に親愛の頬ずりを行いつつ、クイーンの食糧である瀕死の魔物たちを見据える。
お前たちも苦しいだろう、今楽にしてやる。
そしてスキルと魔力を俺に寄越し、共に奴を倒そう。
俺は毒強酸液ブレスで薙ぎ払い、瀕死の魔物たちを殺害していく。
「「「……」」」
後ろで眷属三名が唖然としているが、これは仕方ない、ほんま仕方ないんや。
ずんずん魂が俺に吸収されていき、食糧たちの生命反応が見当たらないことを確認して自分の中に意識を集中する。
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B・グランドホーンリザード【龍王の眷属】
スキル<自前>
ホーンストライク 尻尾で強烈な攻撃を加える
ホーンバニッシュ 頭部で猛烈に突き上げ、吹き飛ばす
念話 他者の心と直接語ることが出来る
スキル<魂>
光合成 光を受けている状態で水を飲むと、体力が回復 【花の魔物】
胞子の息吹 大量の胞子を吐き出す、主に目くらましに使用 【キノコの魔物】
バインドボイス 魔力の籠った咆哮を上げる 【鶏の魔物】
ブーストタックル 自身の瞬発力を引き上げて突進をかます 【猪の魔物】
強酸液 強めの酸性の液体を吹きかける 【アリの魔物上位種】
毒液 蝕んで相手を弱らせる毒の液体を吹き出す 【アリの魔物特上位種】
魔力の糸 自らの魔力で形成した糸を用いる 【芋虫・蜘蛛の魔物】
火魔法LV2(熟練度53)
バーン 狙った場所に火を起こす、威力は低く戦闘には不向き
ファイアボール 火球を作って飛ばす、魔力次第で化ける
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どうやら遭遇していない魔物も紛れていたようで、4つも魂スキルが増えている。
……いや、実質魔物から得たのは3つか。
唯一火魔法というのは、おそらくさっきの女の子のスキルだろう。
明らかに魔法使い然とした格好だったし、髪の色に良く似合った魔法だ。
しかしここに来て魔法とは、リアルな世界にいた俺からすると非常に嬉しい。
……ただ若干惜しいが、とりあえずクイーン戦まで借りるだけにしよう。
縁があればまた使える日も来るだろう。
『我が眷属よ、存在進化に必要な魔力は溜まったが?』
『まだそれにはおよびません、我が君……決着をつけてからそうさせていただく』
『ほう、良い心掛けだ……だが油断するなよ』
龍王様も多少は心配してくれているようだ。
ありがとうございます、俺頑張るよ。
俺は死屍累々な食糧庫をプランちゃん、パトリシア、ミミを伴って出る。
目指すは女王の部屋だ。
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アント族たちへの対処も皆慣れた物で、俺が何もしなくともザクザク倒す。
それだけじゃなく、魂の還元で魔力も順調に増えていることだろう……将来が実に楽しみ。
調子よくずんずん進んでいると、ついに目的地に到達した。
凄まじく広く、中にはアント族のツルンとした卵が沢山とアントエリートが十体。
そして彼らの後ろにいらっしゃるのが、アントクイーンだろう。
唯一持っている羽を振るわせて、俺を威嚇している。
やはりそこまで上位種となると分かるんだな、何が一番危険なのかが。
「あれがアントクイーンですか、大きいですね」
「アントエリート並みって聞いてたけど、さらにちょっと大きいかも」
「グウウウウウ……!」
「「「「「「「「「「シィギィ……!」」」」」」」」」」
「「……」」
やつらと俺たちの間に緊張が走る、俺とクイーンだけは黙って互いを見据えている。
どちらが先に指示を飛ばすか……対応次第で、どっちが優勢になるか決まる。
しかしクイーン、かなり知能が高そうだな……慎重に俺を観察している。
怪しい動きを見せたら即座に攻撃させる気だ、ならば。
『皆、黙って聞くんだ』
「「「……」」」
『奴は間違いなく俺の動きによって、自分達の動き方を決めようとしている……だからこそ、俺が合図したら虚をつくためにいったん下がれ』
とりあえず、それだけ伝える。
俺の念話に気付く様子はないため、この手のを感知する能力はないとみるべきだな。
だったら楽なものだ。
俺は密かに口内に魔力の糸を生成していく、そしてそれらは編み状に組みあがっていく。
勝負は一瞬、気を抜かず機会を待つ……そして。
『いまだ!!』
「「「!!」」」
「「「「「「「「「「!!!?」」」」」」」」」」
合図と同時に俺は魔力の糸を解き放つ、それは十体もいたエリートを包み込むには十分な量だ。
惜しむらくはクイーンまでは届かなかったが。
糸に絡まったエリートたちは、必死に糸を何とかしようと噛みついたり強酸液を掛けたりする。
しかし俺の魔力で編まれた糸はそうそう簡単には壊れず、寧ろ仲間に強酸液が掛かってダメージが入る始末。
これにはクイーンも予想外だったか、少々固まっておられるようだ。
俺はそのまま両前脚を上に掲げ、火魔法ファイアボールを作りだす。
「ブラックさん、それって!」
「う、うそー!?」
「ガオ!?」
これには背後の仲間も驚きだ、言ってなかったし仕方ないな。
どんどん大きくなったファイアボールを、俺は奴らに向かい放った。
火球が押し出されて、飛んでいく。
スピードとしてはあまり早くはないが、糸につかまった状態では逃げようがない。
そのまま何事もなくぶつかり、火が燃え広がる。
「圧倒的ですね」
「無敵だねぇ」
「ガウガウ……」
俺の作戦になすすべなく悲鳴を上げて焼かれるエリートたち、自慢の毒も今はどうしようもない。
さて後はクイーン……なんて少し考えていると、クイーンがおかしな行動をとった。
なんと焼かれてるエリートたち向かって飛び込んでいったではないか。
これはまさかの胸糞BADENDなのではないか……?
そう思ったが、そんなことはなかった。
「な、何してるんですかあれ!?」
「燃えながら、食ってる!!?」
「グオオッ!?」
そう、クイーンがエリートたちを食べはじめたのだ……まだ生きてる上に、自分に火が燃え移ってるってのに。
どんだけ食い意地張ってんだよと突っ込みたくなったが、どうやら事情があったようだ。
燃えながらむしゃむしゃしていたクイーンが、段々と大きくなっていく。
これはまるで魔力を得ているかのようだった。
暫くして火が消え、クイーンの真っ黒だった体色が真っ赤になっている。
そしてなにより、明らかに大きくなっている。
『これが、クイーンが生きたまま生物を食う原因か』
「ど、どういう……?」
『おそらく生物を殺さず捕食すると魔力を得る的なスキルを持ってるんだと思う』
そこら辺は俺たちに似た何かなのかもしれんが、自分自身がリスクを避けて強くなれる……まさにクイーン向けのスキルだろう。
しかし今回ばかりは追いつめられたからか、奴は自分がダメージを負いつつ部下を失っても魔力を得ようと躍起になって起こったのだろう。
彼らは女王を守れて本望と取るべきか、頑張ってたのに食われて無念と取るべきか……まぁ、どうでもいいことか。
俺がそんな事を考えていると……。
「フォギイイイイイイイイイイ!!」
凄まじく怒りの声を上げるクイーン、猛烈な勢いで突撃してくる。
俺は即座に毒強酸液ブレスを吹きかけるが、勢いが止まらずそのまま互いに組み合う。
「シャガアアアアアアアァ!!」
「フォギイイイイイイイイイイ!!」
猛烈なパワーでガンガン噛んでくるクイーン、滅茶苦茶痛いが痛がってる場合じゃない。
俺は角でブンブン振って対抗し、お互いダメージを負って離れる。
だがこのままやられるのは癪なので、離れた直後にブーストタックルで突撃。
それを分かってたとばかりに、思った以上の身軽さでヒョイと回避された。
ブーストタックルは勢いが強いので、止まるまで時間がかかる。
その終わり際の硬直を狙ってか、回避を終えたクイーンが迫る。
けどそれを読んでない俺じゃない、伝家の宝刀ホーンストライクを回転蹴りのようにカウンター気味にぶちかます。
どうやらこれは読み切れなかったのか、クイーンは諸に喰らってふっとび悶絶。
チャンスと見た俺は、ファイアボールを唱えて火球を作り出した放つ。
悶絶中のクイーンに直撃した。
「やった!」
「直撃ぃ!」
「ガウ!」
俺の眷属たちが喜んだ声を出す、しかし予想外のことが起きた。
燃え盛る火の中、傷はあるものの火傷らしい火傷もなくクイーンが出てきたのだ。
……そういえば、毒強酸液ブレスを直撃してたはずなんだが。
それでも全く問題なしに動いてきた。
「フォギイイイイイイイイイイィ!!!」
怒り満点の真っ赤なクイーンが猛スピードで突っ込んでくる。
毒も強酸も火も効いている様子がない、こいつどんだけ適応性能高いんだよ!ふざけんな!
俺は咄嗟に身を引いたが、それが運悪く奴の牙が俺の首に来ることを許してしまった。
「ガ、ガガガガガ!!?」
「ギギギギギギギギィ!」
「ブラックさん!!」
「ブラック!!」
「ガウガ!!」
『く、来るんじゃない!!!』
「「「!?」」」
くっそ痛い!くっそ苦しい!正直助けてほしい!
けど万が一コイツの攻撃対象が俺以外になった場合を想定すると、間違いなくどうしようもないのは想像がつく!
考えろ!こんな状況から逆転できる一手を……!
必死に考えているとふと、前世で見た怪獣映画が頭を過った。
時間がない、一か八か!
俺は尻尾を動かすと、そこから魔力の糸を生成することを意識した。
するとしっかり糸が出てきた。
魔力の糸は俺の思考通りに動き、奴の首を絡めとる。
「グ、ガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ギ、ギギ!!?」
俺の首とお前の細首、どっちが脆いかな!!?
俺は尻尾に力を入れて、思いきりグイッと奴の首を引く。
すると瞬時に絞まった糸にクイーンが凄い力で引っ張られる。
奴の首からメキメキと音が出る。
だが同時に奴の牙が食い込んでいる俺の首も痛みが走る。
めちゃくちゃいたあああああああああい!!!
だが俺は勝利を確信していた。
ーーーーブチィッ!!
何かが千切れた音が、響き渡る。
途端に体に掛かっていた力が緩まる。
「ガァッ!!」
俺は未だに首に食いついている、クイーンの牙を手で取り除いてブン投げる。
ゴロゴロと奴の頭が転がる。
やれやれ、首から血が出まくっててボロボロだ。
戦って分かったが、魔力的に拮抗してても向こうの方が明らかに格上だった。
正直一瞬負けるかもしれんと思った。
俺は命を救ってくれたともいえる、食糧庫の魔物たちと少女に心で感謝すると立ち上がる。
そしてーーーー。
「シャガアアアアアアアァ!!!」
いつも以上に気合入れて勝利の雄たけびを上げた、ああ~のどが痛いんじゃ~。
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「ブラックさん!」
『プランちゃん、すまんね……久方ぶりに大苦戦だよ』
「ええ、最初に会った時以来かもですね……」
『ああ、そうだったな……』
最初は狼にすら苦戦していた俺だが、それも過去。
思えばクソデカいアリの女王を倒せるとこまで来てしまったのか……。
「首大丈夫なの、ブラック?」
『ぶっちゃけ大丈夫ではない、だから念話で話してる』
「そんな状態なのにでっかい声出すからでしょうが……もう」
『改めて勝った実感が欲しかったんだ』
勝利の雄たけびは戦の華だしね。
まぁ、やるべきではなかったかもしれんけど。
「グル……」
『心配かけただろうか、すまんな』
「ガウ!」
『おっとと、傷は舐めると響くから勘弁!!』
ミミってそういえばメス?オス?
パトリシアから聞いてないんだよなぁ……あとで聞いとこう。
さて、ひと段落着いたし皆に待ってて貰うように言って意識を自分の中に集中する。
浮かび上がる魂たち、その中にクイーンも追加された。
その魂に刻まれたスキルは……。
捕食 生物を喰らう事で体内に巡っている魔力を取り込める、死体では効果なし 【アントクイーン】
やはりこういう物だったか、しかしこれって魂を魔力に還元するのと被らないな。
ともすれば戦闘中に捕食すれば、魔力の上昇がより捗ると言うものだ。
『どうやら時が来たようだな、我が眷属よ』
早速龍王様が声をかけてきてくださった。
ぶっちゃけ進化も身体が滅茶苦茶に熱くなるけど、首の痛みがなくなるだろうから非常に歓迎したい。
なにより、進化先が気になる。
『はい、存在進化をさせていただきたい』
『ふふふ、では進化先がいくつかあるから紹介しよう』
『なるほど、ぜひ』
首が痛いからと焦って決めてはいかんな……慎重に選ぼう。
そうして龍王様から掲示されたのは、こちら。
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【進化先その1】純粋な上位互換
D・グランドホーンリザード【龍王の眷属】
入手スキル 麻痺牙・麻痺液
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純粋な上位互換だけあって手堅く強いな。
欠点はリザード族から変わらないから、このままリザードで終わりそうな進化先って気がしてくるくらいか。
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【進化先その2】速度重視
ブラックラプトル【龍王の眷属】
入手スキル ステルス・スプリント
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ラプトルってことは、あの小型の肉食恐竜かな?
スキルは便利そうだが、ドラゴンに派生しなさそうなのがな……。
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【進化先その3】得物を扱える
ブラックリザードマン【龍王の眷属】
入手スキル 槍マスタリLV1・水泳LV1
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お、リザードマン!
人型だけあって人が持ってそうな、LVのついたスキルがゲットできるんだな。
これはこれで魅力的。
ーーーーだが、ドラゴンに至れる感がない。
いや、これはあくまで俺の先入観で語っているに過ぎない。
けれどどうしてもな……これらの先でドラゴンになれる感覚がしない。
うーん、難しい難しすぐる……選択がし辛い、しにくい!
他にもあるかもと思ったけど、龍王様三つの紹介からダンマリだし……。
ここは腹を括るべきか、と思ったのだが。
『む、すまんがもう一個あった』
『えっ』
そんなご無体な……いや、あって良かったって思っとこう!
さぁ、そのもう一個の正体とは……!!?
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【進化先その4】突然変異【進化条件:グランドホーンと名のついたリザード族、ブレス経験あり、火系統のスキルを所持】
サラマンダー【龍王の眷属】
入手スキル 再生・豪火・火炎魔法LV1
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これでしょ。
いや、これ以外ないってどう見てもさ!
スキル三つもある上に、どれも強そう。
再生は恐らく自分の傷を早く治すって感じのスキルだな。
豪火は多分ブレス系だな、条件にもあるし。
そして火炎魔法、少女が持ってたらしき火魔法の上位互換だろこれ。
『龍王、ティアマト様』
『どうした、我が眷属よ』
『わざとですか?』
『さぁ、何のことだか分からんな』
またまた、とぼけちゃってぇ……。
あくまで最初に掲示した三つでも、俺の先入観やらが間違っていて、ドラゴンになれる可能性が0じゃなかったかもしれない。
けど最良の結果にはなりえなかっただろうと確信できる、最後を見てしまった以上は。
『決めました、サラマンダーにします』
『……おぬしも運がいい男だ、ではいくぞ』
『はっ!』
『今よりお主はサラマンダーとなる』
その声を最後に意識を現実に引き戻す。
そしてプランちゃん、パトリシア、ミミに警告する。
『今から迅速に俺から離れろ、巻き込まれるぞ』
「ッ!はい、わかりました!」
「え?わ、わかった!」
「ガウ!」
よし、これでどんだけ炎が出ても大丈夫だぞ。
強化進化でも黒い火が出てたが、サラマンダーとか言ったら出ないわけがない。
そして次の瞬間、俺の考えは正しかったと証明された。
「グッ、ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「えっ」
「ガッ」
「こ、これは……以前のより!」
俺の身体から赤と黒の炎が迸り出ていて、もし警告が間に合わずに近くに居たら燃やしてたであろう規模で、俺自身が燃えている。
強化進化の熱さとか可愛いもんだったわ。
はぎゃあああああああああああ!!!アツイアツイアツイアツゥイイイイッ!!!
やめてやめて燃やさないでっ燃やさないでよっ!!
ああああああああああもうやだああああああああああっ!!
「ブラックゥウウウウウウウウウウウウウウ!!!?」
「ガオオオオオオオオオッ!!?」
「ぶ、ブラックさん……信じてます!!」
燃え続ける事約三分間、獄炎で出来た物凄いカップラーメンのご登場となりそうだ。
だってもう熱くはない、身体には気持ちの悪い皮やら鱗やらがあるだけなのだから。
さぁ、脱ぎ捨てて見せてやろう……新たな俺を!
「あ、ああ……」
「なっ、ええ……?」
「ガ、ガウ……」
真紅の鱗に黒い角と甲殻、身体はリザードにおける最大の体長を超えた。
まさしくこれこそ、サラマンダーと呼ばれるにふさわしき外観だ。
『B・グレイトホーンリザード、改めサラマンダーだ……よろしく頼む』
「ええええええええええええええええええええええ!!!?」
「ガ……オ……?」
「ミミさん、気を確かに!?」
パトリシアは以前進化を見届けたメンツと同じ反応をしてるし、ミミは思考を放棄して放心状態、唯一驚いたものの正気なのは経験者のプランちゃんだけ。
こうして俺はようやく、望んだ野望たるドラゴンへの進化へ一歩足を踏み出したのだ。
リザード編はこれで終了、次回よりサラマンダー編始まります




