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02

ひんやりとした風が当たり目を開ける、その先に広がるのは暗いジメジメした森だった。

先ほどいた龍王様といた場所も暗かったが、この森の方がまだ発光する植物などでギリギリ明るさがある。

ジッとしてるのも時間の無駄なので、早速歩き出したが改めて異世界に来たのだと実感する。

木が蠢いていたり、大きな虫が跳ねてたり、スライムらしいものが跳ねてた虫を捕らえて捕食する生々しい瞬間も目に入った。


『(元人間の俺がこの生存競争を生き残り、龍の勢力を広げていくなんてできるんだろうか?)』


そんな漠然とした不安が沸いたが、かと言って大人しく食われて死にたいわけでもない。

とにかく手近な目標を立てよう。

一つ、拠点の確保。

二つ、食料の安定供給。

三つ、戦力の獲得。

拠点は身を隠し休んだりするのに必須、食料は生きるのに必須、戦力は勢力拡大に必須である。

ただ二つ目以降は情報が少なすぎるから、まずは拠点の確保が最優先と言ったところ。

頼りの龍王様は寝てしまっている、俺自身で頑張らないと。


「ギャア!ギャオオッ!!」


黒い身体を利用して、暗い森をスニーキングで進んでいると不意に草陰の奥から悲鳴が聞こえた。

何となく声の感じからして同族っぽかったので、意を決してこっそり覗き見ると案の情であった。

俺と体色は違うが、巨大なトカゲが血みどろで倒れていた。

そしてその傍らには……元同族、人間がいた。


「これで今日の依頼目標は達成だね」

「ああ、フォレストリザードの皮も肉もたっぷり手に入ったぜ」

「今夜は焼肉であるな」


若い男女と壮齢の男性のトリオ、どうやらリザードを狩る仕事をこなしていた様子だ。


「やっぱ爬虫類系のモンスターは美味しいな」

「強そうな見た目だけど、あんまり強くないよね?」

「身体が大きく鈍重ゆえに狩りやすくはあろう」


なんと、現地視点だと寧ろ弱い部類のモンスターなの!?

いやそりゃ機敏に動きそうな虫や、物理攻撃効き辛そうなスライムに比べたら……まぁパワー重視で当たらなければどうという事はないみたいに思われる可能性もあるけどさぁ。

そんな風にショックを受けていたらトリオは意気揚々と狩った獲物を持って去っていった。


『(これも、ドラゴンがいない故の影響なんだろうか?)』


生命力や再生力が高くて力も強く厄介、そんな爬虫類系モンスターのイメージの代表はやはりドラゴンだからな……。

弱いイメージがあるとより手軽に狩られやすい、このままでは衰退する一方ではないか。

このままではいけない、龍王様が落胆されてしまう。

目覚める前に少しでも状況を改善しなくてはな。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆







数多の草木を掻き分けて進み、ようやくたどり着いたのは小さな洞窟。

これくらいの規模なら一時的に拠点にする分には申し分なさそうだ、ただし敵対心のある先客がいなければだが。

俺は洞窟に少し足を踏み入れて、様子を確認する。

非常に静かで思ったよりも深くできている、これは安全かとホッとしたその時。


「誰じゃ、お前さんは?見たことがないのう」

「!?」


突然の声に驚き跳びあがったが、その先にいたのは傷だらけで俺より二回りは大きく見える巨大なリザードだった。


「……どうもブラックリザードです、あんたは?」

「わしはオールドフォレストリザード、運よく長生き出来た分無駄に大きくなった老いぼれじゃよ」


緊張した俺を見てカラカラ笑うオーさん(命名)

そんな彼の様子を見て少し力を抜いて、俺はコミュニケーションを取ることにした。


「お察しの通り俺はここらの者じゃないんですけど、同族って随分……」

「ふふ、そうさなぁ……少なくともわしの同種たるフォレストリザードは、主に人間に一方的に狩られておる」


やはりそうなのか、あのトリオが強いとかじゃなくて本当にリザード側が弱いのか。

でも他のモンスターと比較しても、負けないと思うんだけどなぁ。


「何故こんなにも狩られるんでしょうか?」

「決まっておる、人間にとって有用なものが得られるという事じゃな……肉も皮も骨も全部のう」

「彼らに需要があるとして、このままじゃ同族たちは……!」

「……駆逐による滅びは避けられんのう」


ああそうだ、俺の世界でも人間の欲の為に滅んだ生物がそこそこいるんだよな。

こちらではリザードだった、と言うだけの話か。


「なるほど、こりゃ必死に頑張らなきゃですね」

「む?何の話じゃ」

「それはもちろん」


俺は真剣なまなざしでオーさんに告げた。


「戦うんですよ、生きるために!」

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