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「シャガアアアアアアア!!」

「シィギギギギギギギギ!!」


にらみ合う俺と巨大アリ。

相手は今までの奴より更に驚異の、特上位個体ともいうべき存在。

魔力に換算すればどれほどとなるか、或いは刻まれたスキルは……正直楽しみなところである。

まずは様子見をと離れてみていると、相手も同様の動きである。

マネをしてるんじゃなければ、相手も冷静で狡猾ってことだな。

情報が欲しいんだが、相手が動かないんなら仕方ない。

俺はおもむろに近くにあった木を噛みちぎり、特上位個体にブン投げる。

奴は驚き、霧上の物を吹き出す。

すると爛れた木が勢いを減らしてアリにぶつかる、ダメージになった感じがしない。

だが分かった、こいつは霧状に酸をばらまく力がある。

細かい液弾や、収束したブレスよりも拡散性に優れるために広範囲に影響をもたらす。

そして極めつけは……その後の木の様子だ。

酸の霧を浴びた葉っぱが萎れた、これはただの酸液ではありえない。

ともすれば。


「シャアアアアアアアア!!」


俺は尻尾で木を数本なぎ倒すと、一本……また一本と投げつける。

そのたびにアリは焦って酸の霧を吹き出す、何度も、何度も……。

途中で胞子の息吹を間に混ぜ込んでも、アリは作業的に霧を吹き出し始めた。

いくら強かろうが、脳みそは単純だな。

霧が届かない位置から気を投げたり、胞子を放ったりしていると、向こうの様子が変わってきた。

足が震え、挙動が変になり、そして葉っぱが萎れなくなっていく。

ーーーー時は来た、俺はブーストタックルにより猛スピードで突貫した。


「!?」


面喰ったアリは防げずに吹き飛ぶ。

俺は追撃とばかりにホーンバニッシュで、上空に打ち上げようとする。

しかしアリは抵抗の為に必死に酸の霧を出してきた。

先ほどまでの物を諸に喰らっていたら、俺も負けていたかもしれないが……。

今のは実質目くらましにしかならない。

俺の鱗は魔力で強化されて、強酸程度ではわずかに焼けたようになるだけだからだ。

目をつぶっていても、臭いで分かる……俺は問題なくアリを上空に打ち上げる。


「シュギイイイイイイイイッ!!?」


お前は強いよ、間違いなく。

ただ……相手とタイミングが悪かった。

トドメに放ったホーンストライクにより、アリが真っ二つになった手ごたえを、俺は確かに感じ取った。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「相変わらず圧倒的な強さでしたね!」

「まぁ、今回は運も良かった……一歩間違えば危うかったよ」


逃げ出した上位個体のアリ達を二人で狩り終え、プランちゃんと頬を擦りあって無事を確かめ合う。

それから俺は自分の中に意識を集中した。

魂たちが浮かび上がる、先ほど狩った上位アリ達に特上位アリ。

そして白猫ちゃんと熊の姿がある。

一応スキルの確認を……。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


B(ブラック)・グランドホーンリザード【龍王の眷属】


スキル<自前>

ホーンストライク 尻尾で強烈な攻撃を加える

ホーンバニッシュ 頭部で猛烈に突き上げ、吹き飛ばす

念話       他者の心と直接語ることが出来る


スキル<魂>

胞子の息吹    大量の胞子を吐き出す、主に目くらましに使用 【キノコの魔物】

ブーストタックル 自身の瞬発力を引き上げて突進をかます 【猪の魔物】

強酸液      強めの酸性の液体を吹きかける 【アリの魔物上位種】

毒液       蝕んで相手を弱らせる毒の液体を吹き出す 【アリの魔物特上位種】

テイム      自分以下の実力の相手を使役させられる 【テイマー/神の祝福】      


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


毒液、予想通りだが良いスキルじゃないか。

恐らく白猫ちゃんのがテイムだな、神の祝福とは……ちょっと興味あり。

珍しそうなスキルだし、残したい気持ちがないわけではない……が今は優秀な仲間が欲しい。

俺は白猫と熊の魂に魔力を注ぐ、無論眷属にするためだ。

元の状態でもある程度戦えるため、必要最低限の魔力のみ注ぐ。

すると二つの魂が光って、一人と一匹は新たに龍の眷属として現界する。


「あれ……ここは……?」

「ガウ?」


困惑気味の二名に念話を送る。


『気が付いたか』

「あっ、その声……ってああ!!?」

「ガウッ!?」


不意に立ち上がって、一体どうしたというんだ?


「あなたが噂の黒いリザード!」

『ほう、噂になっているのか……』

「えっ、ていうか……喋れるの……?」

『心にて直接語り合う、念話と言う形でだけどな』


どうやら人間側で俺は噂になっているらしい。

あの時生かした三人組が知らせたのだろうか、だとしたらいい仲間候補を寄越してくれたと感謝するべきかな。


『ともかく、今のお前たちには現状を知る権利がある……落ち着いて聞くといい』


俺の説明に一人と一匹はしばらく黙って、しっかり耳を傾けていた。

説明が終わると、白猫は手を挙げた。


「えっと……つまり、あたしたちには既にその眷属としての力が備わっているってこと?」

『そうだ、お前たちも俺同様進化の余地があるかもしれんな』

「おおお……」

『ただし、裏切りは許さん……その時は二度目の死を味わうと思っておけ』

「う、うん!分かってるって!」

「ガウ!」


軽く脅しをかけると熊は素直に、白猫はちょっと動揺していた。

まぁ、そうならないことを切に祈る。


『自己紹介がまだだったな……俺は特に決まってないが、現状種であるブラックリザードから準えてブラックと呼ばれている』

「ブラックかぁ、あたしは獣人族猫耳種のパトリシア!この子は相棒でリトルマウンテンベアのミミ!」

「ガウ」


プランちゃんには普通に二名の名前を教えた。

今後行動を共にするのだ、分からないと不便だろう。


『俺たちは勢力を広げるために戦っていくつもりだ、パトリシアにもこれから協力してもらう……約束通り俺の物として、役目を果たせ』

「あのままじゃ酷い死にざまになってたのは間違いないし、新しい人生を与えてくれたことに感謝してる……だからあたし精一杯頑張るよ!」

「ウーガウ!」

『よろしく頼むぞ』


どうやらとりあえず問題はなさそうだ。

新たに白猫獣人パトリシアと子熊のミミを仲間にして、俺たちは女王の待つ巣へと歩き出した。

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