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黒亜の森。

昔この辺りは亜人が住んでいる場所であり、そこへ人間たちが侵攻して現在の状態にあるそうな。

その亜人が獣人族なのかは知らないけれど、少々複雑な気分だ。

名前が示すように、黒で彩られた森の木々を掻き分けてあたしは進む。

ミミが辺りを探ってくれている、嗅覚と聴覚に優れるマウンテンベアの索敵は非常に優れている。

例の黒いリザードの発見も、案外容易かもしれない。

と思ったんだけど……。


「何よ、この数はぁ!」

「「「「「ギギギギギギギィ!!」」」」」

「ガアアァァァッ!」


なんだか妙にアント族に遭遇する。

確かアントの巣が隣の森にあるというのは聞き及んでいたけど、いくらなんでも数が尋常じゃない。

まぁあたしは街のギルドに進出できるくらいの実力はある冒険者だけど、何度も何度も戦いが続くとこう……疲弊する。

ミミがいてくれるだけ余裕があるのかもしれないけれど、田舎と高くくってソロで挑むべきじゃなかったかもなぁ……。

なんて考えている間に、場にいたアントは掃除出来た様子だ。


「とりあえず片付いたし……一旦、帰ろっか?」

「ガウ」


そうそう、引き際って肝心。

焦って命危険に晒しちゃ本末転倒だよ。

あたしはミミを引き連れて森の出口へ歩き出して……幾何もしないうちに足を止めた。


「ソルジャーアント、五匹って……」

「グオオオォォォ……」

「「「「「キィ、キィ、キシィ」」」」」


大物が列をなしている。

今までは下位個体のスカウト複数体に、上位個体のソルジャーが一体くっついているくらいだった。

けれど今度はソルジャーによる複数部隊、確実に危険度が跳ねあがっている。


「慎重に行くわよ、機動力なら私たちの方が勝ってるんだから!」

「ガウ!」

「「「「「キィ、キィ、キシィ」」」」」


戦う意思を固めてあたしとミミが構えをとったけど、肝心の敵はと言えば先ほどから不気味な音を出している。

攻撃してくるわけでもないし、一体なんだっていうの?

そう思った刹那、全身に悪寒が走る。


「----ッ!?」


ミミもそれを理解したのか、身体が震えている。

暫くしてアントソルジャーたちの背後から、より大きく禍々しい影がやって来た。


「あ、アントエリート……!?なんでこんな場所に!?」


スカウトが斥候、ソルジャーが兵士。

そしてエリートとは……クイーンを守りし、親衛隊。

次期女王候補であり、戦闘力はクイーンとほぼ同等……その強さは人類における精鋭、王国騎士レベル。

けれど彼らはクイーンを守ることが使命のため、決して巣を出ることがないそうなのに……。


「「「「「ギギギギギギギィ!!」」」」」

「シュギイイイイイイイィ……!」


……ソルジャー単体ならあたしだけでも倒す自信がある。

ソルジャー部隊でもミミと協力すれば、苦戦しつつも倒しきれると思う。

しかしエリート率いるソルジャー部隊となると、全く勝てる気がしてこない。


「シィギ……!」

「「「「「!」」」」」


ソルジャーがエリートに声を掛けられると、即座に左右に避ける。

そしてエリートが前に進み出てきた。

私とミミ相手なら、自分だけでも十分だと言わんばかりに。


「ガウ……!」

「チャンスね、まともに勝負したって勝てるわけないけど……上手いこと攻撃を躱してすり抜けれれば!」


逃げるが勝ちよ。

あたしとミミは駆け出す、万が一ソルジャーが接近してきたとしても、この距離の感じなら走り抜けられる。

走るたびにアントエリートに近づく、今までのどんな出来事より怖い体験を現在進行形で味わっている。

けどその甲斐はあった、無駄じゃなかったんだ……エリートの強酸液や牙を掻い潜って、足と足の間を抜けることに成功した。

勝った、そう確信した。

ーーーーそんなあたしはそれがヌカ喜びだとすぐに知った。


「ウガァ!!?」

「ガッゴホッ!なぁ……に、が……あああああ!!!」


抜けたと思ったそのすぐあと、背後から霧状の何かが襲う。

油断していたあたしとミミはそれを浴びた挙句に、吸ってしまった。

身体の後ろの部分と内側が、焼ける様に熱いィ!

凄まじい痛みに転げまわるあたしとミミ。

アントエリートは存在こそ知られているものの、戦法に関する情報は少ない。

未知の攻撃があたしたちを蝕み、そして敵の接近を許してしまう。


「ヒッヒッヒヒィッ!!」

「「「「「ギギギ……!」」」」」


情けない声を上げながらあたしは身体を引きずって、ソルジャーたちにナイフを振るう。

ミミはまだ転げまわっており、まともに動けない……孤独な戦いだ。

いいえ、戦いにすらなってない。

ただの生きたいがための必死な足掻き。

ソルジャーたちはあたしの足掻きに近寄りがたそうにしていたが、一匹が鳴くと同時に動きが止まる。

すると一斉に彼らはあたしに強酸液を発射した。


「いやぁあああああああああああああ!!!!!」


痛い痛い痛い痛い!熱い熱い熱い熱い!!

五匹分の強酸があたしの全身を襲う。

服越しでも酸は染み出し、目や肌を焼き爛らせる。

光を失い、痛みと熱さが全身を駆け巡る。

それでもショックで死んだりしない……生きたままクイーンのエサにするためにわざと手を抜いたのかもしれない。

意識が少しずつ朦朧としてくる、そんな中……不思議な声を聞いた。


『今に死に行こうという哀れな娘よ、お前はその状態から救われたいか?』


死の間際なせいで起こった幻聴だろうか。

いえ、何だっていい……もうこんなのはいやだ、助けてほしい。

生きたまま食われて死ぬなんて怖い。


『では今後お前は俺の物だ、良いな』


何でもいいから……早く……!


『分かった、それでは少し眠っていろ』


えっ?

と疑問に思った時には意識が闇に落ちた。






☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆







プランちゃんを率いた俺は、アリ達の侵略を受けた森を掃除しながら突き進む。

下位個体ならプランちゃん単体でも狩れるし、トドメを譲れば上位個体も魂を得られる。

混乱の中でアリ以外の魔物を狩るのは至難。

故にそれらのスキルについては追々とし、アリを順当に狩っていく。

上位個体の強酸液はプランちゃんも覚えたので、攻撃方法としては十分だろう。

それに狩った魂で魔力を得て、俺と共に駆け足で強化されていく。


「シャアアアアアアッ!!」


アリを投げ飛ばして、気に叩き付けるプランちゃん。

力が付いた途端パワーファイターな一面が出てきた気がする。


「プランちゃん、ナイスファイト」

「フフフ……ブラックさんの眷属に相応しい存在になってみせますよ!」


気合十分で何よりです。

と、森の出入り口付近まで来たところで異変が起こる。


「いやぁあああああああああああああ!!!!!」


……人の悲鳴だ。

俺は速攻で駆け付けると、その姿を捉えた。

長く白い毛並みで、猫の耳が生えた獣人の少女と言うべき外観だ。

残念ながら顔つきは爛れており、最早判断がつかない。

そして彼女の傍らには熊型の魔物と、上位個体のアリ。

さらに上位個体よりもさらに強そうな巨大なアリがいた。

俺は強酸液をブレス状に吐き出すと、上位個体たちにまとめて当てる。

彼らは普段自分が他人に当てているものを逆に受けて、這う這うの体で逃げ出した。

さて……。


『今に死に行こうという哀れな娘よ、お前はその状態から救われたいか?』


最近覚えた念話で、白猫少女に声をかける。

少女はかなり瀕死であり、早く助かりたい様子だ。

しかし確認は重要だよな?


『では今後お前は俺の物だ、良いな』


よし確認は取った、我ながら阿漕な事をするものだ。


『分かった、それでは少し眠っていろ』


プランちゃんにやったように、尻尾を振り下ろしてとどめを刺す。

途端に熊が怒りの唸り声をあげる。

主従関係だったのだろうか……まぁ、もう関係ない。

お前も家族だ。

俺は反省を活かしてしっかり熊をぶち殺した。


「シュギギギギギギギギィ!!」


俺が振り向くと、巨大なアリが威嚇してきた。

これは今までのとは一味違うな。

俺はプランちゃんに下がるよう命じて、進み出る。

さぁ、戦闘開始だ。

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