14
プランちゃんを殺し、さらに即座に復活させた。
その事実は俺に対する疑惑を深めることになった。
強化進化についても、この世界のリザードは行えない。
その上先程の事で、疑惑が疑念に変わる。
「一体どういう事なんじゃ?」
「あんちゃん、何者なんだ!?」
「し、正直に答えてよ!」
「私も知りたいです、今の私がどういった状況なのか……」
「……実はーーーー」
こうなっては致し方ない、事情を話そう。
それに前までの状態ならば信じてもらえそうになかったが、今ならば……。
俺は話した……龍王にして邪龍であるティアマトとの出会い、そしてここに来た理由と目的。
そして自分が何者で、プランちゃんがどういう状態なのかを。
皆は俺の話を聞くたびに、リザードなりの百面相をしていた。
話が終わると同時に、皆が同時に頷く。
「ありがとうございます、納得がいきました!」
「どおりで変じゃと思っとったわい」
「角が生えたり急に大きくなってたのも、その力でだったのかぁ」
「すっごーい!」
俺としては問題なく受け入れられて嬉しいんだけれど、どうもあっさり過ぎて肩透かしをくらった。
こんな風に深く考えてしまいがちなのも、俺が人間の魂だからか……或いはリザード達が純粋過ぎるのか。
「異世界からの侵攻と言うと聞こえが悪いが、わしらリザード族としては非常にありがたい話じゃ」
「オレたちも眷属になれば、強くなれるんだしな!」
「私もなりたいなぁ」
「けど、これは俺に殺されないといけないからな……死ぬほど痛いぞ」
「「うげぇ……」」
プランちゃんが苦笑いしている、あれしかなかったんだ……すまない。
「事情は分かりましたよブラックさん、私はあなたにこれからもついていきますからね!」
「ああ、眷属として……家族としてよろしく」
「えっ、あっ、はいぃ……」
やる気に満ち溢れたプランちゃんが突如しおらしくなる。
まぁ、死に際の告白をしてすぐ復活したわけだし……な。
結束を新たにしたところで、先ほど起こった悲劇から状況を分析する。
「アリの数が多すぎる」
「森がいつになくざわついとる」
「何か……血の匂いが濃いぜ」
「ちょっと、怖い」
森全体の様子がおかしい、それは間違いない。
そしてアリが俺たちの拠点付近に十数匹現れた、これは今までにないことだ。
つまり……。
「恐らくだが、アリが群れ単位であちこち侵略し始めていると思う」
「つ、つまりあれ以上の……」
「そうだ、さっきの奴らは尖兵に違いない……これからどんどんやってくるぞ」
「むぅ、いよいよもって危険じゃ……守りを固めるか?」
オーさんの言う通り、拠点の守りは必要だろう。
しかしそれじゃ根本的な解決にならない。
下手打てば缶詰にされた挙句、洞窟で餓死する。
蓄えがない籠城ほど愚かなものなんぞない。
「守りは固めるが、戦いとしては短期決戦とする」
「ほう?」
「オーさん、アニー、イモトは洞窟に残って障害物を設けつつ、迎撃準備をするんだ」
「あんちゃん姉ちゃんは?」
「敵の本丸……女王の巣を叩き潰す!」
三日四日であの戦力増強、恐らく女王が生みまくったのだろう。
あの大きいアリが現れたあたりから、既に侵略の準備を本格的に進めていたのだろう。
それに気づかなかったのは痛いが、もう俺は学んだ。
女王を殺し、巣を潰せれば、奴らの群れとしての力はガタ落ちだ。
後は栗拾いでもするように、余裕をもって残党を始末すればいい。
無論最初のころの俺ならば無理無謀も良い所だったが……力を蓄えた俺だからこそ、出来ることもある。
転んでもただでは起きんぞぉ!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
これは悪夢なのだろうか、夢ならば覚めてほしい勢いだ。
細々と討伐以外の依頼をこなして、俺とカルパとシャーウッドさんは昼飯を食いに行くところだった。
しかし妙に村の門前が騒がしい、駆け付けてみると……黒い波が来ていた。
「アントが攻めてきたぞ!!今までで最大規模だぁ!!」
衛兵も、冒険者も、傭兵も、狩人も……とりあえず戦える奴は皆集まりだす。
アントと言うとトラウマになりつつある開いてなんだけどなぁ……俺以外の二人も震えている。
おまけに以前のなんか比べ物にならない数、怖くないはずがない。
そういえばあの黒いリザードを探しに行ったテイマーさん、大丈夫なんだろうか?
悪夢を前に現実逃避もかねて、そんなことを考えた。