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ーーーーあれから三日が経った。
狩り場での成果は主にアリではあるものの上々であり、魂による魔力還元で俺はますますパワフルかつスピーディーになった。
因みにティアマト様への報告も一度あった。
その時聞いた魔力による大きさの変化については、その個体における最大値で止まってしまうらしい。
「俺も結構大きくなってきたよな」
「成長が早いのう」
「「うらやましいなぁ……」」
「あなた達もすぐ大きくなりますよ……きっと」
オーさんほどではないが、間違いなく大きくなった感覚はある。
かつてプランちゃんとの差は大したものではなかったが、今は大きく離れている。
親子だって言われても違和感ないかもしれないくらいには。
そしてもう一つ、報告時に行ったことがある。
「……それより今日になって生えていた、頭に雄々しくそびえる角ですよ!ますます強そうでかっこよくなってるじゃありませんか!」
「お兄さん、また進化ってやつしたんだね!」
「わしは尻尾でも驚いとったのにのう、うっかり別の魔物かと思ったわい」
「うおー!オレも角欲しい!」
それは強化進化、ブーストタックル頭突きで条件を満たせたので頭に角が生えた。
これによりB・グランドホーンリザードになった。
身体の方にも条件があるのかティアマト様に聞いたが、はぐらかされてしまった。
世ノ中甘クナイ。
しかし、これで新自前スキル“ホーンバニッシュ”を得た。
頭部の角により、突き上げて吹き飛ばすスキルだ。
左右側頭部から生えた大きく立派な角で突き上げられた敵は、いっそ哀れなことになりそうだ。
スキルの回しとしてはブーストタックルからのホーンテイル→ホーンバニッシュor強酸液が安定かな。
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B・グランドホーンリザード【龍王の眷属】
スキル<自前>
ホーンストライク 尻尾で強烈な攻撃を加える
ホーンバニッシュ 頭部で猛烈に突き上げ、吹き飛ばす
スキル<魂>
胞子の息吹 大量の胞子を吐き出す、主に目くらましに使用 【キノコの魔物】
ブーストタックル 自身の瞬発力を引き上げて突進をかます 【猪の魔物】
強酸液 強めの酸性の液体を吹きかける 【アリの魔物上位種】
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魂による新スキル獲得は現状停滞気味。
弱すぎる魔物はスキルが刻まれていないし、強い魔物はそもそもこの辺にあまりいない。
狩りを何度も行ったうえで判明した事実だ。
そして群れの拡大も同様に停滞。
フォレストリザードは見かけても残念ながら死体であり、プランターリザードは数が少ないので全く会えない。
他のリザード族は基本この森にいないらしいので、手詰まり。
龍王の眷属としての能力である、魂の眷属化もあるっちゃある。
けれどこれは自分の魔力を注ぐことになるものだし、多分弱かったり頭が悪い魂を眷属にすると無駄に命を散らす可能性もある。
もっと優秀な魂に遭遇出来た時に行いたい……まぁ、そんな機会来るかは知らんが。
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――――時だ、時が来たのだ。
蠢くアント族の群れ。
巣穴より這い出て列をなす。
――――女王の為に、捧げよ、捧げよ。
ついに侵略に打って出る腹積もりの様だ。
のどかな辺境の人里に悲劇が迫る。
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「ねねねっ、そこのキミ少し良い?」
「え?……あっはいィ!どなた様でしょうか!?」
「……ランド?」
あたしは獣人族猫耳種のパトリシア。
本来は街のギルドに所属する冒険者で、“テイム”のスキルを持ってる。
そんなあたしが何故わざわざ辺境であるこの村のギルドに来たのかと言うと、ある噂が耳に入ったからなのだ。
「あたしテイマーだからさ、例の噂聞いてきちゃったんだ!キミたちでしょ?初めて遭遇したのって!」
「うっ……まぁ、そうですね……」
「ああ、うん、そうね……」
ありゃ?どうにも歯切れが悪い。
でも肯定はしてるってことはいるんだよね!
「黒くて強いリザード……未確認の超希少種!やっぱいるんだ!」
噂通りならリザードとは思えない強さなわけだし、もしテイム出来たら……!
そう思うと楽しみになってきた!
あたしは相棒のリトルマウンテンベアのミミを見て微笑む。
向こうもやる気満々みたい。
あたしは声をかけた第一発見者たちに軽く礼を言ってギルドを出て、早速黒亜の森に出かけた。
ーーーーそこで何が起こるのかも知らずに。
小さいからこそまだ脅威じゃないですけど、デカくなった途端虫ってかなり脅威ですよね(じょうじ並感)