11
体調を崩して休んでいましたが、復帰したので初投稿です。
今の自分はリザードで、邪龍であり龍王たるティアマト様の眷属。
分かってはいるのだが……やはり魂は人間なのだ。
今生の自分の同族を狩る存在と分かっていても、あんな悲劇的な場面見せられたら助けたくなるものだ。
相対したのは今まで遭遇したアリの上位種だったが、魔力で強化されつつ進化した俺にはなんら障害ではなかったな。
「あんな大きな相手も全く苦も無く倒すなんて……ブラックさん、カッコいいです!」
「あんちゃん、つええ!」
「お兄さん、クール!」
プランちゃんとアニイモ兄妹が喜んで駆けてきた。
人間を助けると言った時は危険だと反対していたが、あの上位アリを放っておくと自分たちも後々危ないことと伝えると、納得はしてくれた。
まだ出会ったばっかりだけれど、上手く連携が取れて満足満足。
……さて。
「「「……」」」
改めて助けた人間である三人組を見る。
分かりきっていたことだが、三人の目には警戒と畏怖の色が見られる。
いくらプランちゃんが薬草を渡したからと言って、さきほど自分たちを追いつめたアリたちを一方的に殺した俺が怖くないわけがない。
言葉を話す手段があれば敵意がないことを伝えられるのだが、俺はただ力が強いだけのリザードなのだ。
このまま視線を交わしていても平行線なので、動いてもらう為に俺は尻尾を強く地面に叩き付ける。
「「「ひっ!?」」」
揃って立ち上がり、後ずさる。
大きい音は心理的に激しく揺さぶるには効果的だ、恐れてる相手からの物ならなおさらだ。
しかし威嚇の声などは出さない、別に敵対すると言う意思表示ではないのだから。
寧ろ早くここから逃げろと言う警告だ。
もう一度尻尾を打ち鳴らす、今度は三人はビクリと震えて引き腰になる。
「こ、攻撃は……して、こない?」
「襲う気はない、ってことなの?」
言葉が理解できるという事を伝えるために頷くのも一つの手だったが、それは面倒が増えそうな気もしたのであえて理解できない体で行く。
さらに尻尾を打ち鳴らし、目つきを悪くして唸る。
遠回しに苛立っている風を装っているのだ。
これで他の二人よりも冷静になるのが早かったらしい壮年の男性が、俺の意図に気付いたようだ。
「む……もしかしたら、早く去れと警告しているのではないであるか?」
「リザードが!?い、いや……群れを作ってるくらいだし、それぐらい頭良くてもおかしくないか……」
「だ、だったら早く帰りましょう!そりゃ早く街に帰りたいけど……命の方が大事よ!」
それを皮切りに三人はそそくさと背を向けて走り出した。
追われることを気にしてなのか、女性がこちらをチラチラ見ていたが……すぐに見えなくなった。
「あいつら襲ってこなかったなぁ」
「お兄さんの圧倒的な強さに恐れをなしたのよ、お腹に響くくらい力強い尻尾叩きだったもの」
二匹の話は流しつつ、俺は大きなアリを見据える。
オーさんの妙な感じってコレだったんかな?
単にこれだけだってんなら拍子抜けだが……どうも俺まで嫌な予感がしてきた。
まっ、悪いことは今は考えないでおこう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
大きなアリの魂に刻まれていたスキルは、“強酸液”と言う蟻酸の酸性を強くした液体を相手に吹きかけるものであった。
三人組の内の若い男性の手が爛れていたのを見たので、結構強い酸だと思われる。
“胞子の息吹”は攻撃性が低いため、同じ遠距離攻撃でも使い分けをしていこう。
他のアリたちは全部カジカジして魔力に変換、美味しいです。
「(そろそろ使えるスキルをまとめておこうかね)」
自分の手札を予め整理しておいた方が、咄嗟に使えそうだしな。
俺は改めて自分の中に意識を集中する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
B・ホーンテイルリザード【龍王の眷属】
スキル<自前>
ホーンストライク 尻尾で強烈な攻撃を加える
スキル<魂>
胞子の息吹 大量の胞子を吐き出す、主に目くらましに使用 【キノコの魔物】
ブーストタックル 自身の瞬発力を引き上げて突進をかます 【猪の魔物】
強酸液 強めの酸性の液体を吹きかける 【アリの魔物上位種】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
こんなものかな。
今のところ自前のスキルが強化進化で得たホーンストライクしかないあたり……リザードの不憫さが分かる。
いや、全リザードがそうだとは限らないんだけども。
……こうして色々整理して思ったのは、もしかしたらまだ強化進化の余地があるのではないかという事だ。
尻尾を頻繁に使って獲物を仕留めていたら、条件を満たして強化進化出来た。
つまり他の場所も意味があるかもしれない。
上手くやれば、頭や背中にもとげとげとか角が生える強化進化があるかもしれない。
「ブラックさん!魔物です!」
「準備OKだぜ!あんちゃん!」
「お兄さん、指示を!」
せっかくだ、試してみよう。
俺は進化して強くなり、龍の眷属を増やしていかないといけないんだ……ならやる価値はある。
俺はあえて強くなった尻尾を一時封印し、ブーストタックルによる頭突きや体当たりを主軸に敵を仕留めることにした。