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独白
あれから様々な出来事が生まれては、流れていった。
それについてはまた違う誰かか、歴史が語るだろう。
わたしの話はここで終わりだ。
死に際は人生が駆け巡るように思い出されるというが、さすがに意識が朦朧としてきた。
「これ以上、悪人にならないで下さい」
そう呟いてわたしを刺したカイドウは、折り重なるようにわたしの上に倒れている。
お前は生きろ、そう言ったのに
「いつか、あなたに誓いました。どこまでもお供すると。すぐに御前に駆けつけます」
自ら命を絶った。
遠くで人の騒ぐ気配がする。
掠れた視界に数人の足元が見えた。
狂ったようにわたしの名を連呼しているのは、イコマだろう。
自分の事より他人ばかり心配する、この友人には伝えたいことがある。
感謝か、謝罪か、あるいはその両方。
口を開こうとしたその時、ふと体が軽くなった。
声がする。
愛おしくて堪らない、あの鳴き声が。
――西で
ああ、わたしの愛姫が西の果てで待っている。
わたしは神は信じないが、スズは信じる。
盲目的に信じる。
ゆっくりと目を閉じた。
幸福のあまり微笑んでいたかもしれない。
スズ。今、いく。