魔女と弟子《一年目》
レントがここに来て、約半年が経った。
私は、何とかレントと仲良くなりたくて、レントを見つける度に声をかけているが、相変わらず「うん」とか「別に」とか、素っ気ない返事しか返ってこない。
午前中は、ラピスと魔法について学び、午後は家にいる筈なのに、部屋で勉強してるのか、図書室にも庭にも居ないし、今では食事の時に会うのが殆どだった。
結局、何も変わらないまま半年が経つ。
ラピスにも相談したが、シッシッと手で払いながら、面倒くさそうな顔で答える。
「男には、色々あるんだよ。ガキじゃないんだから、自分の事は自分で出来るし、構う必要ないだろう。」
自分は、レントと仲良くなってるのにズルい。最近は、全属性の魔法が使えるラピスをレントが尊敬の眼差しで見ている。
レントは、元々、少し魔法が使え、小さな炎を出すことができた。幼い頃に、無意識に炎を出してから、魔力があることに気づいたらしい。
驚く事に、今の時代、平民の魔力持ちでも、罪にはならないらしい。多くはないが、平民でも、魔力持ちは現れるため、罪人と処刑されることは無いらしい。レントが今の時代に生まれてて、本当に良かったと思う。
ラピスに指導してもらってからは、火属性の攻撃魔法を中心に、凄い早さで上達していて、あのラピスが珍しく褒めていた。
水属性の魔法も少し使えるらしく、回復魔法も最近学び始めたようだ。
♢♢♢♢♢♢
今日は、久しぶりに昼食後に、レントと顔を合わせる機会ができた。
私は、嬉しくてお茶に誘う。ちょうど午前中に、外からお菓子が届いたので、一緒に食べようと思っていたのだ。
「レント、時間があるなら一緒にお茶の時間にしない?ちょうどお菓子もあるんだ。」
私の声かけに、表情も変えずに 「いらない」と、短く告げるレント。
「でも、せっかくだし、お互いの近況報告しながら、どうかな。えーと何か困ってることない?」
今日こそは、一緒に過ごしたいと諦めずに誘いをかける。
すると、不思議そうな顔で、こちらを見て問いかけてきた。
「なんでそんなに俺に構おうとするの?放っておいて欲しいんだけど」
心底分からないと言うように、こちらを見てくる。
「それは、仲良くなりたいから。せっかく一緒に住んでるし、少しでもレントが楽しく過ごせるといいなと思って。」
「あんた…本当に……大事にされてきたんだな。」
声が小さくて何を言ったのか、聞こえなかったが、レントの表情が険しいものに変わった。
「あのさ、はっきり言うけど、俺はあんたと仲良くするつもり無いから。関わる意味がわからないし。あと2年ちょっとの関係だろ。時期が来たら、出ていくヤツと仲良しごっこして何の得があるわけ。どうせ居なくなるなら、放っておいてくれ。」
レントは、そのまま立ち去って行った。
私は、その場で動けず、呆然と立ち尽くす。
「…ッ、ごめ…ごめん…なさい。」
レントに言われて、初めて気づいた。そうだった。ルドが居なくなったように、私も3年後は、ここを出ていくんだ。
レントに会うまでは、役目を終えたら森から出て、自由になれるって喜んでたのに。
それは、レントの前から消えるってことなのに、私、最低だ。
レントに会ったら、会えた嬉しさで忘れてた。生まれた時から感じてた存在に、頼られたくて、仲良くなりたくて、一緒に居たくて、自分が居なくなった後、レントがどんな気持ちになるか考えてなかった。
「ごめんなさい…ごめんね。レント」
レントが、私のこと嫌うの当たり前だった。こんな自分の事しか考えてない人の事なんて、信用できないし、好きになるわけないじゃない。本当に馬鹿だったな私。
その日私は、レントに申し訳なくて、部屋に籠って泣いた。
それからは、何となく気まずくて、話しかけることが出来なかった。
レントからは、今までも話しかけられたことはないから、私が声を掛けなければ関わることはなくなる。これで、レントも安心して過ごせるだろう。
そんな日がしばらく続いたある日、それは起こった。
レントが大怪我をして、意識のない状態でラピスに抱えられ帰ってきた。




