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「ごめんね」のその先は   <魔女と弟子の最後の時の過ごし方>            作者: 文月みい


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魔女と弟子 《一年目》

【レント視点】


 朝、目覚めると、知らない天井が目に入る。


(そうか。ここは、魔女の家)


 昨日、突然現れた魔女は、俺が次の結界の魔法使いになると、だから俺を迎えに来たと言っていた。

 

 魔女は信じられないくらい綺麗な人だった。


 誰だよ、魔女は500年近く生きてるから、シワシワのヨボヨボのお婆さんなんて言ってたの。全く違うじゃないか。

 

 その吸い込まれそうな、青くて綺麗な澄んだ瞳に見つめられ、目が合った瞬間に身体が動かなくなった。

 

 魔女は、俺を見た瞬間、その綺麗な青い瞳を輝かせて、満面の笑みを浮かべ、嬉しくてしょうがないとでも言うように、こちらを見ていた。


 俺が、結界の魔法使い?信じられなかった。今まで魔力を持っていても良いことなんてなかった。魔力なんてなければいいと何度思ったことか…。

 

 気づけば俺は、魔女に酷い言葉を投げつけ、伸ばされた手を咄嗟に払ってしまっていた。

 魔女の驚いてショックを受けたような顔に、少し胸がズキリとした。


 その後、院長先生と一緒に話を聞いてても、あまり頭に入ってこなかった。王命と言う言葉は、流石に驚いたけど、結局は断ることは出来ないってことだ。こちらの意思は関係ない。やっぱり魔力なんて持ってても録なことにならない。

 

 そんな風に思った時に、報奨金の話が出た。孤児院に報奨金が渡るなら、喜んでこの話を受けようと思った。親がいない俺を院長先生もシスター達も大切に育ててくれた。今その恩が返せる。

  

 魔法使いになること、報奨金を孤児院に寄付することを頭を下げてお願いすると、ガタッと誰かが立ち上がる音と、慌てた声が聞こえた。


「頭を上げてください。こちらこそ、突然の提案に話を聞いてくれて、ありがとうございます。」


 それは、とても優しい声で、可愛らしく笑みを浮かべる顔に、俺は直視できなくなった。

 


 魔女と行くと決めてからは早かった。孤児院のみんな以外に会いたい人もいないし、荷物も少ないからすぐに魔女と共に孤児院を出た。


 最後に心残りがないかと聞かれ、まだ母親が生きていた頃に、よく遊びに行った丘の上の花畑が頭に浮かんだ。

 最後にもう一度、一面に広がる花畑が見たいと思い、魔女に行きたい場所があると言うと、黙って一緒についてきてくれた。

 丘の上に着くと、時期的にやっぱり花は咲いてなかった。少し残念な気持ちになったが、こればかりはしょうがないと諦める。

 

 ふと、左側に目を向けると、母親と手を繋いで歩く小さな女の子の姿が目に入った。


(俺も、母さんとあんな風に手を繋いで、歩いていたな。あそこは、一緒に弁当を食べた場所だ。あっちでは、花かんむり作ってもらったな)


 花は咲いてなくても、母親との思い出は、温かな記憶として、俺の中にしっかりと残っている。

 

 よし、これで大丈夫だ。


 それからは、あっという間に転移魔法で、魔女の森の中に入った。


 魔女は、得意気な顔で、扉を開いて中に入り魔法を使い部屋を明るくしていた。俺の驚いた反応に、満足したようで夕食を御馳走してくれた。 


 お腹が空いてたし、魔女の手作りと聞いて、少し楽しみにしてたのに……。


 料理が激マズだった。あまりの不味さに、何だか腹が立って、また酷いことを言ってしまった。


 魔女のショックを受けて泣きそうな顔に、少しだけ、罪悪感が湧いたが、今回は俺も被害者だと思う。


 夕食後に、半泣きの魔女に部屋に案内された。向かいは、魔女の部屋らしい。


 今日は、色々あったし、最後に魔女に対する配慮が足りなかったと、気になって仕方なかったが、習慣とは恐ろしいもので、ベットに入ると、すぐに眠りについた。


 

 そして、いつも通りの時間に目覚めると、知らない天井に、一瞬、混乱するも昨日の事を思い出して、すぐに冷静になる。


 静かな部屋に、外から小さく音が聞こえた。魔女も起きたらしい。


 耳を澄ますと、廊下を歩く音が聞こえたので、どこかへ向かったようだ。


 俺も身支度を整えて、部屋を出る。


 1階に下りると、奥の方から人の気配がした。廊下を進むと、キッチンから見ている魔女と目が合った。


 昨日の事を思い出して、言い過ぎたことを謝ろうか考えてると、話しかけるタイミングを逃して、二人とも黙ったまま沈黙が流れる。


 あまりにも気まずくて、この雰囲気を変えるため、勇気を出して声をかけてみる。


「あー、その、おはよう……ございます?」


「お…おはようございます。えっ?何で疑問系?」


 その魔女の言葉に、カァーと顔が熱くなる。恥ずかしくて死にそうだ。敬語なんて全く使わないから、語尾が上がって変な風になってしまった。

 

 恥ずかしさを誤魔化すために、ギュッと真っ直ぐに魔女を見る。

 なぜか、怯えたような魔女が、何か早口で捲し立て、そのまま、外へ出ようとする。


(今、朝食を作るとか言ってなかったか?)


 昨日の料理を思い出して、すぐに魔女を引き留める。


「朝食は、その、俺が作る。」


「えっ?なに?」


 魔女に聞き返された俺は、もう一度強めに朝食を作ることを主張する。


「料理出来るの?」


 魔女のその挑戦的な言葉に、俄然やる気も自信も漲ってくる。

 孤児院でも料理は手伝って作っていたし、魔女の料理より、絶対に俺が作った方がいいに決まってる。


 自信たっぷりな俺に、魔女はひきつった笑顔で、外へ出ていった。


 

 魔女がいつ戻ってくるか、分からなかったので、すぐに食べられるように、簡単な物を作ることにする。


 カリカリベーコンに具だくさんのオムレツ。パンがあれば良かったけど、無かったのでパンケーキを焼いた。


 朝食を並び終えるタイミングで、魔女と長身の男が戻ってきた。


 二人とも目を輝かせて、朝食を食べ終える。二人の満足したような顔に安堵した。


 そして、長身の男、ラピスとか言う男に、

「これからはお前が料理担当だ」と、任命されたが、これからの自分の為にも喜んで受け入れた。

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