魔女と弟子 《一年目》
弟子を迎えての、初めての朝。
私は、いつも通りの時間に目が覚めた。まだ外は薄暗く、ベットから出ると、部屋全体が冷えていて、ブルッと体が震えた。
上着を羽織り、朝食を作るためキッチンへと向かう。
昨日の夕食は、まぁまぁ上手く出来たと思ったのに「不味い」と言われたので、朝食は、少し本気を出してみようと思う。
きっと、「美味しい」と言わせてみせると意気込んで、メニューを考えていると、廊下から足音が聞こえてきた。
廊下の方へ目をやると、レントがこちらへ向かって歩いてくる。
私に気がつくと、眉間に皺を寄せて不機嫌そうに、キッチンへと入ってきた。
(そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいのに、何だか少し落ち込むなぁ)っと思っていると、レントに声を掛けるタイミングを無くして、二人ともしばらく黙ったまま、その場で立ち尽くす。
(気まずい…)
沈黙に耐えきれず、思いきって声をかけようと口を開くと、先にレントの方から挨拶してきた。
「あー、その、おはよう……ございます?」
「お…おはようございます。えっ?何で疑問系?」
挨拶だけじゃなく、思ったことが、そのまま口に出てしまい、あっ!と気づいたときには、彼の顔は、みるみる真っ赤になり、こちらを睨んでる様に見えた。
(もしかして、怒らせちゃったかも)
どうしようと、焦った私は………一旦この場から逃げることにした。
「あー、えーと、その、朝食を作ろうと思ってね。庭の野菜取ってこようかなって。ハハッ。そうだ!ラピスも呼んでこようかな。あっ!ラピスはね、湖に住む水龍で、朝はいつも一緒に朝食を食べるの。今日は朝食作りも手伝ってもらおうかな。そうしよう!じゃあ、朝食出来たら、呼ぶから部屋でゆっくりしてて!」
早口で一気に話して、くるりと後ろへ向きを変えると、外に出るため裏口へ向かう。
すると、真っ赤な顔のまま、黙って聞いていたレントが、「待って!」と声をあげた。
「朝食は、その、俺が作る。」
「えっ?なに?」
声が小さくて、何を言われたのか分からず聞き返す私に、不機嫌さが増した彼が、大きな声で言い返す。
「だから!俺が作るって言ってんの。昨日の夕食マズかったし、俺の方が上手く作れるし。」
「料理出来るの?」
私の言葉に、馬鹿にされたと思ったのか、若干怒りのオーラが見えた気がしたが、料理ができるのが当然だと言うように、こちらを見る。
「孤児院でも毎日作ってたし、魔女よりは100万倍、美味しいものが作れる自信がある!」
ウッ!ここまで言われて悔しいけど、たぶん間違いではない。料理だけはムリなんです。
しょうがない。逃げる予定だったし、私も久しぶりに美味しいものが食べたい。
「では、お願いします。ラピスの分も、3人分で。食材はあるもの何でも使って下さい。」
なぜか、敗北感を味わいながら、私は外に出て、湖へと転移した。
「ラピスー!!ねぇ!ラピスゥゥ!起きてぇ!出てきてぇ。」
突然、朝早くからの私の訪問に、眠そうにしながらラピスが水面から顔を出す。
「うっせーな!何だよ、こんな朝早くから。」
寝てたのを起こされて、不機嫌MAXなラピスが、こちらを睨んでいる。
「迎えにきたの。一緒に朝食を食べようと思ってね。」
私の言葉に、ラピスはさらに睨みつける。
「ふざけるなよ。そんなことの為に俺を呼んだのか。今まで一度も朝食を一緒に食べたことないのに、なに考えてんだ。」
確かに、今までは一人で食べていた…が、今日は緊急事態なのです!レントに嘘までついてラピスの所に来たのに、絶対に来てもらわないと困る。
「一度も、ではないよ。一度一緒に食べたことあるけど、不味いから、一生私の作ったもの食べないって言って、それ以来食べてないだけでしょ」
そうなのです。昔、感謝を込めて料理を御馳走したのに、不味いって食べてくれなかったんだよね。一生料理持ってくるなって酷すぎる。
「わかってるなら帰れ!お前の料理は一生食わないって決めている。俺は寝るから帰れ」
そのまま戻ろうとするラピスに必死に声をかけて、引き留める。
「今日は、私じゃなくて弟子が作ってるから大丈夫だと思う。それより、弟子と二人は気まずいから、ラピス助けてよ」
水面から顔半分除かせて、ジト目で見てくる。
「お願いします。ラピスがいたら安心だし、楽しいし、頼りになるし。」
あと、もう一押し。
「お土産!昨日お土産買ってきたよ!あとで渡そうと思ったけど、今行けば、朝食食べながら、渡せるな。ラピスの好きな果物や、お菓子もたくさん買ったんだけどな。」
大きな音を立てて、水面から出てきたラピスは、直ぐ様、人型になり私の目の前まで降りてきた。
「さっさと行くぞ。」
良かった。これで二人きりは避けられる。安堵した私は、ラピスと共に家に戻った。
家に戻るとそこには、とても美味しい料理が並べられ、私もラピスも大満足で朝食を堪能しました。




