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「ごめんね」のその先は   <魔女と弟子の最後の時の過ごし方>            作者: 文月みい


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魔女の弟子が生まれました

【現在】


 私は、魔法使いのルーナ。

 “魔女の森”と呼ばれる森の奥深くに、一人で住んでいる。外の人達からは、結界の魔女と呼ばれている……らしい。

 

 魔法使いになってから、森から出たことがないので、外の世界の事はよく知らないけど、たまに飛んできた鳥達が、そう話してるのを聞いたことがある。 

 

 私が知ってる物語では、魔女って悪いイメージやおばあさんのイメージで、ちょっと納得出来ないから、“魔法使いのお姉さん”と呼んで欲しいけど、そもそも私を見たことも話したこともないから、魔法使いの女性ってなると、みんな魔女ってことになるんだろう。


 一応、私は善良な魔法使いです。前の結界の魔法使いから役目を受け継いで、今年で、約300年以上500年未満になります! 

 

 実際、どのくらい経ったのか、よく分かってない。途中から面倒くさくなって、数えるのを止めてしまった。

 自分自身の身体は、結界を維持するために魔力を極限まで使って、ほぼ成長が止まっているので、見た目と生きてる年数は、全く合わない。 

 

 

 前の結界の魔法使いは、私の師匠だった人だ。3年間、ルドに魔法や薬の作り方や生活のあれこれ等、沢山のことを教えてもらった。

 

 この森に来てからの、私の唯一の家族だった。


 あの日、ルドが目の前から消えた時から、私はルドの言葉通り、常に笑顔でいた。

 

 朝起きて、身支度を済ませ、朝食を食べて、薬草採取をして、薬を作り納品する。畑の管理や家事を終えて、夕食後にお風呂に入って眠る。

 

 そんな忙しい日々を繰り返し、ルドが消えて1ヶ月が経った頃に身体に異変が起こった。笑顔を作ろうとしても、笑えなくなってしまった。

 

 毎日の生活を繰り返す中で、ふとした瞬間にルドが居ないことを実感してしまう。

 

 例えば、食事中にスープを飲んでいて、''ルドの作るスープをこれからは飲めない''って気づいて悲しくなるし、薬草採取の時、隣を歩いていた人がいないのに寂しく感じる。今、一生懸命頑張ってるのに、いつもみたいに「頑張ったね」って頭を撫でてくれる人がいない。

 

 ルドが居ないことを、全身で嫌という程、実感した時に、笑うことが出来なくなった。

 

 何もやる気が起きず、それからは家の外に行くのも嫌になった。


 そんな日が1週間ほど過ぎた頃、ふと湖のことを思い出した。なぜだか、そこに呼ばれてる気がした。

 

 私は一週間振りに外に出て、湖に向かって歩いてみた。湖までは歩くと距離があるが、歩きながら、最後に二人でピクニックに行った日のことを思い出していた。


(手作りのアップルパイ食べたいって言ってたのに、結局食べること出来なかったね。新しい薬草の話ばかりで、ここに咲く花のこと見てなかったな。あれ?…でも、こんなにたくさん咲いてるのに、気づかなかった…?)


 湖までの道には、小さな紫色の花が続いていて、ルドの瞳の色を思い出させた。まるで、湖までルドが見守っているようで、胸がギュウと締め付けられた。


 湖に着くと、以前と違った美しい景色に言葉を失った。

 

 湖は透き通った綺麗な水面に、陽が反射してキラキラと輝き、その周囲には、前は無かったはずの沢山の小さな紫色の花が咲いていた。


 ここまでの道で見かけた花も、以前ルドと来たときには、やっぱり無かった。

 

 それならば、一体いつから咲いてるのか?


(この花は誰が…?)


 その瞬間、急に強い風が吹き、一斉に紫色の花びらを空高く舞い上げ、ヒラヒラと舞う花びらが、私の方へも飛んでくる。

 

 沢山の花びらに触れて、まるでそれが、ルドに頭を撫でられてるような感覚で、温かくて、気づくと私は大声を出して泣いていた。


「うわー!ルドォォ!!」


 私は目の前でルドが消えて、ショックで、悲しくて、一人になって寂しくて辛かった。

 

 でも、その気持ちを認めてしまうと、ルドが居なくなったことも認めなければいけなくなり、それが苦しくて、無理矢理にでも笑うようにしていた。

 

 笑って頑張っていたら、ルドがまた頭を撫でに帰って来てくれるような気がして…。

 

 でも、もう頭を撫でてくれる人はいない。これからは、一人で生きていかなければいけないんだ。


「ルドのバカァァ!一人にしないでよぉ!」


 今まで我慢していた分の涙が溢れてきて、ずっと泣き続けていると、湖の方から大きな音と共に水面が盛り上がり、見たこともないほど大きくて綺麗な水龍が現れた。

 

 水龍は、泣き続ける私を見つけると、面倒くさそうに溜め息をつき話しかけてきた。


「お前の泣き声が煩くて昼寝もできない。いい加減泣き止め!お前、ルーナだろ。ルドから聞いていたが、本当に面倒だな。」


ルドの名前に反応して、水龍を見上げると、チッと舌打ちした水龍が更に話しかけてくる。


「お前、やっと泣けたのか。だからって人様の家の前で、大声で泣き続けるのは迷惑だ。一旦泣き止め」


 水龍は、そう言うとシューと小さくなり人型に変化した。そして、私の前に立つと頭をガシガシと撫でた。

 それは、とても乱暴でルドとは違うけれど、私は何だか嬉しかった。


「ルドからも頼まれてるし、しょうがないから俺様が友達になってやる。感謝して泣き止め」


 私はそんな水龍の言葉に、可笑しくて小さく笑った。



 その出会いから数百年、ずっと水龍と私は友達で、水龍の事をラピスと名前で呼びあい、親友と言っていいくらい仲良しだ。

 

 ルドが私に別れを告げる前に、“反りが合わないヤツ”と言っていたケンカ相手が、実はラピスで、あの時ルドは、「自分が消えた後は、ルーナの事を頼む」とラピスにお願いしていたらしい。それで、何故ケンカになるのかは疑問だか、男同士の何かがあるらしい。

 

 それと自分が消える前に、紫色の花を魔法で植えたのもルドで、魔法で作った花なので、ほぼ永久的に咲き続けるそうだ。ルドの優しさを感じて、とても嬉しかった。


 そんなこんなで、ルドから、結界の魔法使いの役目を引き継いで数百年、もしかしたら、そろそろ次代の魔法使いが現れるかも、何て思っていたら、本当に現れた。


 正確には、今日生まれた。


 歴代の魔法使い達の記録にも書かれていたが、定期的に次の魔法使いは生まれるが、生まれた瞬間に分かると書いてあった。どんな風に感じるのか分からなくて不安だったが、それは杞憂だった。

 

 それは、何の前触れもなく急に起こった。身体の奥の方、魔力?で繋がってるような、言葉にできない妙な感覚で、どこに居るのか大体の場所まで常に把握できる。


 やっとだ。やっと代わりが現れた。まだ迎えに行くことは出来ないけれど、あと14年したら、迎えに行って、更に3年間魔法について全て教えたら、私は役目を終えることができる。これで、安心だ。


 歴代の魔法使いの記録によれば、役目が終わると、止まっていた時間が流れだし、残った寿命分は少しだが外の世界で生きられると書いてあった。


 少しでもいい、普通の人生を生きてみたい。数百年待ったんだから、あとたった17年なんて、あっという間だ。


 外の世界を夢見つつ、いつか会える弟子に恥じないように、もっと魔法の腕を磨こうと改めて気を引き締める。


 

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