弟子と魔女
【レント視点】
ルーナが神殿に隠し部屋を見つけてから数ヵ月が経った。
初めの結界の魔法使いルナリアの書記ということで、今度こそ結界の魔法使いについて何か分かるかもしれないと、ルーナも俺も期待が膨らむ。
本当なら俺も手伝いたかったが、隠し部屋を見ることが出来ずに断念した。俺は本当に何も出来ない役立たずだ。
ルーナが神殿で、ルナリアさんとの記録を読み始めた頃は、少し焦りの様なものが見えた。
読むもの殆どが日記になっていて、ルナリアさんと腹黒王子?のことや、日常的な出来事ばかり書かれていて、魔法使いについての記述がなかったからだ。
毎日、笑顔で帰ってくるが、少し笑顔がぎこちなく見えた。
そんな日が暫く続いたが、その日は違った。
いつもより帰りが遅いので、神殿に迎えに行くと、俺の呼びかけに、目を輝かせて嬉しそうなルーナが転移魔法でパッと現れた。
「遅くなったから迎えに来てくれたの?ありがとう。つい夢中になっちゃって時間忘れてたよ」
「いや、あまり遅いとラピスも怪しむから。それより何か良い事があった?何だか嬉しそうだ」
今日は、いつものルーナらしい満面の笑顔で、とても可愛い。
「えーとね、分かっちゃう?実は魔法陣の事が少し分かりそうなの。もしこれが分かれば、この連鎖を止められるかもしれないの。」
嬉しそうに話すルーナは、さっきまで読んでいた内容を俺にも教えてくれる。
その内容は、俺もとても興味をひいた。
正直、光属性のルナリアさんを生け贄にするところは、王家の屑さに腹が立つが、闇魔法の干渉など、とても気になる内容だ。
誰が魔法陣の性質を変えたのか。それがなければ、ルナリアさんは今も魔法陣に魔力を吸われていたはず。
結果的に闇魔法は、ルナリアさんを解放したことになる。ルナリアさんを助けたかったのだろうか。
例えそれで結界の魔法使いが代替わりする事になっても、一人を犠牲にするよりは良いような気がする。
でも、俺はルーナと一緒に生きていきたい。だから、魔法陣の謎を何とか解明したい。
ルナリアさんの記録は、ルーナしか読めないが、一緒に考えることは出来る。何か悩んだときは助けになりたい。そう、思っていた。
「ルーナ最近元気がないけど、何かあった?」
嬉しそうに魔法陣の事を話していた日から、時間が経つにつれて、ルーナが気落ちしていくのが分かる。
ルナリアさんの記録の中に、解決の糸口が見つからないのか、それとも他の何かか。
心配で声をかけるが、「大丈夫」と、力なく笑うルーナに何も言えない。
意気地なしの俺が、どう元気付けようか考えて、数日経った頃、ルーナが目を腫らして、明らかに泣いたのが分かる顔で神殿から帰ってきた。
「ルーナ!どうしたんだ!何で泣いてるんだ!」
心配で、つい大声で怒鳴ってしまった。ルーナは、俺の声に驚いたようだったが、泣き顔を見られて恥ずかしそうに小さく笑った。
「何でもないよ。心配かけてごめんね。ただルナリアさんの日記を読んで少し感傷的になっただけ。」
ルーナは、人の日記を読むことに抵抗があったはずだ。必要ないところは、読まないって言ってたのに、それに最近は日記じゃなくて、魔法陣の研究資料を読んでたはず。
もしかして何か悪い情報が見つかったのか。
「ねぇ、レントは、もし大切な……家族とか…友達が役目があって、それをするにはレントと離れなくちゃいけないってなったら、レントはどうする?」
何だその質問は…?それって、結界の魔法使いのことか?やっぱり…解決策が見つからなかったのか…?。
それなら…俺は……。
「俺なら、絶対に諦めない。大切な人とずっと一緒に居るために、役目だろうが何だろうが全部ぶち壊して、俺と大切な人の為にやれる事をやる!」
ルーナの目が涙で滲む。
「何となく…レントならそう言うかなって思ってたよ。ありがとう」
「これで…決心がついたよ」
ありがとうの後は、声が小さくて聞こえなかった。
でも、ルーナが泣いてた理由は、何となく分かる。結界の魔法使いのことだ。多分、代替わりの連鎖を断ち切る事が出来ないんだ。このままでは、俺が役目を引き継いで、ルーナは出ていかなくてはいけない。
でも、ルーナと離れたくない。もし本当に解決策がなくても、さっき宣言したように、俺は、絶対に諦めないと誓った。




