魔女と弟子 《最後の一年》
「ルーナ、あれから神殿の方は大丈夫?」
レントは、あれから、私が一人で無理をしていないか度々確認してくる。
本当は、レントも一緒に調べることが出来たらいいけど、隠し部屋に入れるのが私一人なので、それも気にして心配みたい。
「大丈夫だよ。でも、ほとんど日記みたいだから、必要な所だけ読むようにしてるの」
最初の結界の魔法使いであるルナリアさんが残した記録は、ルナリアさんが生きていた数百年分あるけど、殆どが日記になっていた。
他人の日記を読むことは、何となく気が咎めるので、関係なさそうな所はスルーして、必要な内容を探すようにしている。
「じゃあ、神殿に行ってくるね。ラピスの事よろしくね。」
「任せてくれ。じゃあ、お互い頑張ろう」
私は神殿へ、レントはラピスと魔法訓練へ、それぞれ向かう。
ルナリアさんの事は、もちろんラピスには内緒だ。絶対に怒られる自信があるので、レントにも、ラピスには言わないよう口止めしている。
♢♢♢♢♢♢♢
ルナリアさんの記録を読み進めると、日記と魔法陣の研究の主に二つの記録があることに気づいた。
私が最初に見つけたのが、一番初めに書いたと思われる記録なんだけど…。
『あの腹黒王子の裏切り者!絶対に許すまじ!私の事大切だと言っておきながら、なんて、裏切りなの。もう信じられない。バカ王子――』
…と、始まる衝撃的な文章で、ルナリアさんが、王子に裏切られて一人目の魔法使いになった事が書かれていた。
その後も、ずっと王子に対する文句が書かれていて、それだけで一冊終わるくらいで、相当怒ってたのが分かる内容だった。
それから、時々王子に対する愚痴等が書かれているけど、自分が居心地良いように、家を作ったり、魔法陣の場所には神殿を造ったり、その周囲には魔法で森を作った事が書かれていて、今ある場所は全てルナリアさんの作り出した物で驚いた。
望まない形で結界の魔法使いになったのに、落ち込むことなく前向きで明るくて、記録を見る限り素敵な人だったんだろう。
記録の中には、ラピスとの出会いも書かれていた。ルナリアさんとラピスは知り合いというか、親友だったみたい。今はルナリアさんの事話せないけど、いつかラピスにルナリアさんとの思い出を聞いてみたい。
日記以外の物として、結界の魔法使いについても記録が残っていて、これについては魔法陣について調べたことが書かれている。
その内容から、本当はルナリアさんを生け贄として永遠に結界を維持する為の魔法陣だと記されていた。
だから、本当はルナリアさんが目覚めて動いてることが有り得ないことだと、何が原因でこうなったのか、これからどうなるのか調べてみると書かれている。
それが事実なら、結界の魔法使いが代替わりするのは、本当はなかったことだった?
もしかしたら、理由が分かればこの連鎖を終わらせることが出来るのかもしれない。
私は、高鳴る鼓動を抑え、魔法陣に関する記録を読み進めていった。
本当の魔法陣は、光属性の魔力を永久に吸収して力を使うものらしく、本来はルナリアさんがその役目を永遠にする予定だった。
でも、予想外のことがあった。それが闇魔法で、その影響を魔法陣が受けたことで、本来の魔法陣とは違う物に書き変わったらしいとルナリアさんの記録には書かれていた。
(闇魔法ってあまり聞かない。魔法陣に干渉するほどの魔法って、いったい誰が?)
早く先が読みたくて、続きを探す。
「ルーナ!迎えに来たよ。もう、夕方だからそろそろ終わりにしよう」
外からレントの呼ぶ声が聞こえる。もう少し読みたかったけど、時間切れみたい。あまり遅くなってラピスに知られてもマズイし、私は逸る気持ちを抑えて、その日は帰ることにして、また明日続きを探すことにした。




