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「ごめんね」のその先は   <魔女と弟子の最後の時の過ごし方>            作者: 文月みい


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魔女と弟子 《最後の一年》

 あれから、少しでも時間があれば書庫で記録を調べているが、神殿の事を記録したものは無かった。


 歴代の魔法使い達の記録は、主に自分達の生活の事や、魔法についての事、代替わりの事など、後継の魔法使いが困らないように残しているもので、特に新しい情報は見つからなかった。

 

 そして、気になることが、もうひとつ増えた。それは、ルドの記録がひとつも残ってないこと。


 ルドは、何か魔法についての研究をしていたはず。普通なら記録を残すはずなのに、メモひとつ残ってないなんて、おかしいと思う。


 書庫や、元ルドの部屋であるレントの部屋も探したけど、何も出てこなかった。


 何も情報がないまま、時間だけが過ぎていく。関係ないならそれでいい。

 未来が変わらないなら、幸せな今を大切にするって決めた。


 でも、もしも、何かの切っ掛けで、変わる事があるのなら…希望を持たずにはいられない。




♢♢♢♢♢♢♢


「ルーナ、今日は午後から一緒に魔力訓練だろ。お弁当持って、早めに湖に行かないか?」


 今では週3日、ラピスのところで魔力制御の練習をしている。

 最近は、かなり上達したので、週に1日でもいいかなと思うけど、ラピスからは駄目だと言われた。うぅぅ、信用されてない。


「わかった。丁度これで終わりだから、先に準備してていいよ。」


 たまに、お弁当を持って湖で食べることも増えた。レントの料理は本当に美味しいから、ラピスも楽しみにしている。


「お待たせ!」


「じゃあ、行こうか。」


 湖までは、歩いて向かう。寒い時期なら転移魔法の方がいいけど、暖かくなってきた今の時期は、散歩しながらが丁度いい。


 レントと二人並んで歩く。神殿に行った時より気持ち離れて歩く。

 

 あれから、レントの隣は緊張してしまうので、何となくバレないように距離を取ってしまう。


 湖に着くまでは、魔法の話や美味しかった料理の話、新しく育ててる野菜の話など、思い付くまま、おしゃべりする。

 

 殆ど、私が話して、レントは聞き役。それでも、出会った頃の冷たい表情ではなく、私を見る目は優しい。


「ここに咲いてる紫の花って、湖までずっと続いてるよな。湖にも広がってるし、常に咲いてる。新種なのか?」


 珍しくレントが話しかけてくる。紫の花が気になってたらしい。


「新種と言うか、魔法の花なの。ルドが最後に咲かせてくれて、魔法の花だから枯れないんだよ」


 話を聞いたレントが、驚いた顔をしながら私の方を見た。


「こんなに、広範囲に魔法をかけたのか?ルドって人は、すごい魔法使いだったんだな。」


「そうなの!ルドは魔法だけじゃなくて、何でも出来て本当に凄い人なんだよ!」


 ルドの事を凄いって言ってもらえて、嬉しくて、つい大きな声を出してしまった。


「ルーナは、その…ルドの事を…好き…だった…のか?」


 レントから意外な質問が返ってきた。


「もちろん好きだよ。」


 私が、そう答えると、レントの表情が固まったまま、顔色が悪くなっていく。


「レント!大丈夫?顔色が悪いけど、午後の訓練休んだ方がいいんじゃない」


 レントの手を引いて、来た道を戻ろうとすると、「大丈夫」と立ち止まった。


「その、ルドのこと…好きって…それって、どういう…」


 どういう?ルドと私の関係を知りたいのかな?ルドと私は、師匠と弟子の関係で、レントも知ってるはずだけど。それ以外ってこと?


「ルドは、師匠でもあるけど、優しいお兄さんって感じかな。私には二つ年の離れたお兄ちゃんがいてね、優しくて頼もしくて、ルドも同じで頼りになるから、お兄ちゃんみたいだったよ。」


 レントの顔色が少し戻ったように見える。


「兄のような存在って…。好きってそういう…こと…か?」


 何かぶつぶつ言った後、安心したように歩き出した。

 レントのよく分からない行動に、私は一人混乱してると、レントが気づいて私の手を引いて歩き出す。


「早く行こうか。ラピスが待ってる」


「えっ?えっ?どういうこと。」


 私は一人、訳が分からずに、繋いだ手をどうすることも出来ず、その後は、二人黙ったまま湖まで歩いた。



 湖の側には、すでにラピスが待っていて、私達を見て、眉間に皺を寄せる。


「遅かったな。腹減った。早く準備しろ」


 とても、機嫌が悪そう。時間的には、そんなに待たせてないと思うんだけど、相当お腹が空いてるのね。


「遅くなって、ごめんね。今日は、あっちで食べようか?すぐに準備するね」


 レントと二人で、急いで準備する。準備が出来ると、ラピスも一緒に三人で食べる。


 不機嫌だったラピスも、美味しい食事に機嫌も戻ったみたい。


(お腹空いてて不機嫌って子供みたいだな)


 ラピスを見て少し笑うと、パチンとデコピンされた。


「何か失礼なことを考えただろう。はぁ、お前の考えてることは見当違いだ。本当に無自覚過ぎて、お前ってヤツは…。」


 呆れたようにこちらを見るラピスに、おでこを擦りながら抗議する。


「もう!水龍のデコピンは痛いどころじゃ済まないんだから!おでこが無くなったらどうするの」


「手加減してるんだから、そんなわけあるか」


 そんな私達を見て、レントが我慢できずに笑っている。


 いつも通りの二人だな。よかった。レントの様子がおかしかったけど、今は体調も戻ったみたい。


 やっぱり、二人と一緒は楽しいな。こんな、何でもない普通の日常が一番好きで、失くしたくないな。


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