弟子と魔女
【レント視点】
ルーナの体調が戻ってから、俺は常に彼女の傍にいることにした。
目を離すと直ぐに無理をしてしまうから、初めは無理しないよう、ただ見張っているつもりだった。
ラピスからも、そう言われていたし、それに何故か、彼女が気になって仕方なかった。
でも、毎日一緒にいる内に、そんなこと関係なく、ただ傍に居たくて、一緒にいると楽しくて、俺から彼女に近づいていった。
作ったような無理した笑顔ではなく、以前のように笑う彼女は、キラキラ輝いて見え、俺にいつも幸せをくれる。
そんなある日、ルーナが一緒に行きたいところがあると、俺に声をかけてきた。
大好きな薬作りを休んでまで行く場所だから、何か重要な所かと少し緊張しながら、ルーナについていった。
「着いたよ。見て、綺麗でしょ」
そこは、前にも来たことがある神殿の原っぱだった。
しかし、今は…。
目の前には、色とりどりの花が一面に広がっている。
その瞬間、幼い頃に母親と行った丘の上の花畑の景色を思い出した。
(ルーナは、あの時の事、覚えていてくれたのか。だから、ここに連れてきたのか。)
ここに来るまでの俺にとって、母親との一番大切な思い出だった。
最後にその景色が見られなくて、本当はとても悲しかった。もう、一生見られないと思うと寂しかった。
それを、ルーナはわかっていたのか…。
「ありがとう」の言葉だけでは足りないくらい、ルーナの優しさが素直に嬉しかった。
そんなルーナだから…俺は……。
どんな時でも優しくて、人のために一生懸命になれる温かい人。
そんな、温かさを知ってしまったら、俺は、離れたくないと思ってしまうんだ。
あと、一年と少し。もし、ルーナに俺の気持ちが知られたら、優しい彼女はどんな顔をするだろう。喜ぶ?悲しむ?それとも困る?
どちらにしても、結果は変えられない。それなら、気持ちは知られない方がいい。
俺は、結界の魔法使いとして、ここに残り、ルーナは、役目を終えて外に出ていく。これは、決定事項だ。
ルーナは、役目を終えて、やっと自由になれるんだから喜ぶべきだ。
でも、これだけは、許して欲しい。
俺はひとつだけ、ルーナにお願い事をした。
「16歳の誕生日プレゼントに、魔法石を使ったお揃いのペンダントが欲しいんだ。」
「ペンダント?いいけど、魔法石はどうしよう。森の中でも手に入るかな。見たことないけど」
「それなら大丈夫。ラピスから魔法石の作り方を教えてもらったんだ。」
これくらいの願いならいいよな。
傍にいることが出来ないなら、せめて思い出に、身につける物が欲しかった。
自分の魔力を凝縮して作る魔法石は作るのが難しく、練習の時間も含めるとかなりの時間がかかった。
でも何とか、俺は赤い魔法石、ルーナは青い魔法石をそれぞれ作ることができた。
そして、この森に来て2回目の16歳の誕生日は、お互いの魔法石を使ったペンダントをプレゼントしあった。
ルーナには赤の魔法石が、俺には、青の魔法石がそれぞれ首元に光っている。
お揃いって事が、恥ずかしいらしく真っ赤な顔のルーナが可愛らしい。
ラピスが、不機嫌にこちらを見ている。たぶんラピスは、俺の気持ちに気づいてる。
でも、これで最後にするから許して欲しい。明日からは、この気持ちは忘れる。なかったことにするから、誕生日の今日だけは、好きでいさせてくれ。




