魔女と弟子 《二年目》
「ルーナ、先に畑見てくるから、支度が済んだら庭に来てくれ。」
「えっ!ちょっと待って。私も終わったから一緒に行く!」
あれから、私とレントは毎日一緒に行動している。
ラピスから、薬作りの許可が出てからは、午前中に、薬草採取と薬作りをして、午後はラピスと魔法の訓練の為に湖まで一緒に向かう。
あと一年と少しで、私は外の世界で1人で生きなくてはならない。その時に、光魔法が発動しまくってたらマズイと言うことで、魔力制御を覚えることになった。
ラピスからは、「外では光魔法は使うな」と言われた。貴重な魔法だから、利用しようとする悪い人が居るかもしれない。私も厄介事に巻き込まれるのは嫌だから、意識的に魔法をコントロール出来るように訓練することになった。
ここに来た時は、ルドと二人だけだったけど、今はレントとラピスもいて、毎日が賑やかで、あの頃とは違った楽しさがある。
(毎日楽しくて、幸せだな。こんな毎日がずっと…)
それは……考えちゃいけない。こんな日が、ずっと続かないのは、わかっているんだから。
結果は願っても変わらない。願った分だけ、変わらない現実に悲しさが増すだけ。
絶対に変わらない未来を嘆くより、幸せな今を大切にすることを考えよう。
一緒にいる間は、私の全てでレントを大切にすると約束したんだから、約束は守らなきゃ。
私が今、レントに出来ることは何だろう。
♢♢♢♢♢♢
「レント、今日は一緒に行きたいところがあるから、午前中の仕事は全部無しにしよう。」
ここに来たときに、森の中の案内は済んでいるけれど、あの頃は、まだ少し寒くて時期が早かった。でも、今ならまだ間に合うかもしれないと思いレントを誘って、とある場所を目指す。
「結構歩いたけど、どこに行くんだ?」
「着いてからのお楽しみだよ」
向かう先は、森の端にある小さな神殿。
そこは、神殿以外は何もないところだけど、目の前は広い平地になっていて、普段は緑が広がっている。
「着いたよ。見て、綺麗でしょ」
「…っ」
普段は緑でいっぱいだけど、暖かくなると、色とりどりの花が咲き、神殿を囲うように花畑が広がる。
「レントが、最後に見たかった思い出の花畑とは違うけど、これはこれで綺麗でしょ。」
「…っ。あぁ…そうだな。とても、綺麗だよ。連れてきて、くれて、ありがとう。」
レントは、目の前の景色を泣きそうな顔で眺めながら言葉を紡いだ。
あの日、丘の上で花畑を見られず、悲しそうな表情を浮かべるレントが忘れられなかった。
同じ景色は無理だけど、いつか、この場所に連れてきてこの景色を見せてあげたかった。
「丘の花畑は、母さんと、よく…行ったんだ。一緒に手を繋いで、弁当食べたり、花かんむり、作ってもらったり、こんな…綺麗な場所だった。ありがとう…ルーナ。」
(やっぱり連れてきてよかったな。)
今日のこの日が、レントにとって幸せな記憶として、残るといいな。これから先もずっと寂しくならないように。
それから私達は、しばらく、二人で目の前に広がる色とりどりの花を眺め、ゆっくりした時間を楽しんだ。




