魔女と弟子 《二年目》
「ルーナ。お前の頭は飾りなのか?つい最近、無理しないように言ったつもりなんだが!」
ラピスが来るなり、私の頭をドスドスと指でつつきながら、凄く恐い顔で睨んでいる。
ラピスの斜め後方には、レントが気まずそうな顔で、私からそっと視線を外した。
うぅぅ。レントの裏切りものぉぉ。
「痛い痛いぃ。ラピスのそれ、軽くつついてるつもりでも、龍のそれは、普通に痛いから、頭が取れちゃうよ。」
私の抗議に、ラピスの怒りがさらに増して、長いお小言が始まり、ひたすら謝って許してもらいました。うーん既視感。
ラピスのお説教も終わり落ち着いた頃、ラピスが真面目な顔で私に魔法について聞いてきた。
「はぁ…、ルーナお前は自分の魔法について、ルドから何と説明された?」
私の魔法?ルドからは、水魔法の事を教えてもらったけど、今さらどうしたのだろう。
「水魔法については、大体教えてもらったよ。それがどうかしたの?」
「他には?光魔法について聞いているか?」
えっ?光魔法?たぶん、ルドは何も言ってなかったような気がする。
そもそも、私は水属性だから、光魔法なんて使えないと思うんだけど、違う属性の魔法が使えるって聞いたことないよ。
「光魔法のことは聞いたことないよ。私とは関係ないから話さなかったんじゃない?」
私の返答に、ラピスは顎に手を当て何やら考え込んでしまった。
「違う。関係あるから言わなかったんだ、あいつ何考えてんだ。でも、これは…」
ラピスの声は小さくて何を言ってるのか聞き取れなかったけど、少し考えて決心したように私の方を見た。
「確かにルーナは主属性は水だが、光属性も持っている。お前は気づいてないが、お前の作る薬は、光属性の影響で、普通より効果が高い。無意識に魔法を発動しているんだよ。」
私が、光属性?二属性持ちなの?今までも使ってたって、そんなつもりなかった。
「どうやって?私、光魔法の事は何も知らないよ。それなのに、どうやって使えるの?」
「無意識にって言っただろ。お前は薬を作る時に何か願ったりしなかったか?例えば''早く治りますように''とかな。その時に魔法を使ってたんだよ。だから、魔力の消耗が激しくて倒れたんだ」
そういえば、願ってたかも…早く感染症が落ち着くようにとか、みんなが不安のない生活に戻れるようにとか、それだけで、魔法って使えるの?嘘でしょ。そんなの聞いてない。
「外にいる時に、魔女印の薬は良く効くって聞いたことがある。魔女だから特別なのかと思ってたけど、光魔法が付与されてたのか」
レントが納得顔でこちらを見ている。私の薬って、魔女印の薬って言われてたんだ。それも聞いてないよ。普通の薬と同じだと思ってた。
「一応、言っておくと、お前が使う治癒魔法は水魔法ではないぞ。水魔法は回復は出来るが治癒は出来ない。」
えっ、水魔法では、治癒できないの。同じ水魔法を使うレントの方を見ると、レントは首を横に振った。
「俺は治癒魔法は使えない。」
じゃあ、本当に光属性も持っているの。でも、ルドは……。
いや、ルドは何も言ってない。光とも水とも何も言ってなかった。ただ、魔法を教えるって、最初に水の玉を出したから、私が勝手に水属性だと思ってたんだ。だから、ルドが教える魔法もそうだと思ってた。
何で光属性のこと黙ってたんだろう。知らなかったのかな。でも、それなら治癒魔法を教える意味が分からない。
「ルドは、知ってて黙ってたの。どうして黙ってたのかな。光属性って何か悪いことがあるの?」
私が外にいた頃は、平民が魔力を持つことは罪だと言われていた。光属性は、珍しい属性で滅多に現れない。貴族や王族でも殆ど居なかった。それなら、平民の光属性は重罪だった?
あの頃の事を思い出すと、罪人という言葉に不安で押し潰されそう。
「安心しろ。悪いことは何もない。ただ、ルドは…あいつは昔からお前の事が大切だったからだ。言っただろ。ルドは過保護なんだよ」
悪いことはない。と言われて少し安心したけど、まだ納得出来たわけではない。
それなら、なぜ黙ってたのか、過保護って言葉で全て納得なんて出来るわけがないよ。
「取りあえず、あの頃は話す時期じゃなかったんだろ。ルドの考えは俺も知らん。それよりも、これからのことだ。薬を作るなら、なるべく光魔法は使うなよ。何も願うな、考えるな」
無理やり話を終わらせた。確かにルドの考えは誰にも分からないけど、これ以上は何も聞くなってことだよね。ルドとラピスは何を知ってるんだろう。
「何も願うなって言われても無意識だし、なるべく頑張ってみるけど」
二人のことは気になるけど、まずは薬のことだ。作るのが好きだから、ずっと続けたい。それには、願わないこと。でも、何も考えないって難しい。
「それなら、俺が一緒にいるから大丈夫だ。これからは、俺が一緒に隣で見張ってるから大丈夫だと思う。」
そうだった。レントが一緒に薬作り手伝ってくれるんだった。
私の知識も全て教える約束だ。レントがいるなら、そっちに気が取られるから大丈夫な気がしてきた。
「レントが?いいのか前は嫌がってただろ」
「ルーナが倒れるよりは、近くで見てた方が安心だからな」
「ルーナ…ねぇ」
ラピスはレントを見ながら、不満げな顔を見せたが、レントがいるならと一応納得してもらった。
私は、消耗した魔力が戻るまでは、規則的な生活を送り、二人から大丈夫だと許可が出るまで、1週間も休む羽目になった。




