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「ごめんね」のその先は   <魔女と弟子の最後の時の過ごし方>            作者: 文月みい


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魔女と弟子 《二年目》

 今日は、朝から少し体が怠い。早く沢山の薬を渡すことが出来れば、一気に色々な事が改善できると思って、ちょっと張り切りすぎたかもしれない。

 

 (無理はしてない。無理は絶対にしてないよ。二人に約束したから、ギリギリ無理しない程度に抑えたからね。約束は破ってないからね)


 独り心の中で、言い訳しつつ、昼食を取るために一階に下りた。


 丁度、レントも午前中の訓練を終えたらしく、先に昼食を食べている。


「魔女の分も準備出来てるよ。」


「いつも、ありがとう。」


 いつもなら、美味しそうな匂いに刺激され、食欲も増しておかわりする元気もあるけれど、今日は特に食欲がなく、手に持つスプーンも重く感じる。


(食べないと…。せっかく作ってくれたし…)


 無理やりスプーンを動かして、食事を何とか口に運ぶ。何とか半分近くは食べきったけど、それからは手が止まってしまう。


(はぁ、ちょっとお水もらおうかな)


 お水を取りにと、立ち上がった瞬間、急に目の前がクラクラして、あっ!と思ったときには、立っていられずそのまま体が前に倒れていくのがわかった。


 その時、「ルーナ!」と焦った声と、こちらへ必死で手を伸ばすレントの姿が見えた気がしたが、私の意識はそこで途切れてしまった。




♢♢♢


『…ルーナ…、ルーナ…、目…さま…て…。』


 (誰…だろ…う。声…がきこえ…る?)


 泣きそうな声。悲しいのかな。どうしてだろう。この声…の人が、悲しいのは…嫌だな。

 泣いて欲しく…ないな。大丈夫だよって言ってあげなきゃ…、泣かないでって…。


 少しずつ、目を開けると、ギュッと右手を強く握られる感触に、横を見るとレントが泣きそうな顔で私を見ている。


「よかった!…よかった!…どこか痛いところはないか?気分悪いとかは?」


「……フフっ。前に似たようなこと…あったね。あの時は…レントが倒れたけど…私と同じこと…言ってる。」


 顔を見ると、たくさん心配したのが分かるので、申し訳ない気持ちがあるけど、以前と逆の状況で私と同じ事を言うレントに少し嬉しくて笑ってしまった。

 

 レントは、そんな私の様子に安堵の表情を見せたが、私が笑ったのを見てムッとした顔で、視線をそらした。


「心配かけて、ごめんなさい。」


 ここは、素直に謝ろう。


「倒れるから、びっくりした。なんでそんな無理したんだ。ラピスとも約束しただろう」


「二人も心配してたし、少しずつ感染症が落ち着いてるのも聞いて、早く終わらせたかったの。たくさん薬を渡せば、それだけ早く終わって、二人も安心するし、色々解決するなって思ったの」


 レントが、意味が分からないと言うように、こちらに視線を向ける。


「心配させたくないなら、普通無理しないだろ。感染症減ってるなら作るペース減らせばいいだろ。やってること逆なんだよ。」


「そうなの…かな。この方が早いと思ったんだけど」


 でも、確かに、結果無理したことになって倒れたから間違っていたのかも。


「これからは俺も、薬作るの手伝うよ。一緒に居れば、その、色々平気だろ」


 えっ、今、薬作り…手伝うって言ったの…。


「いいの?前に、嫌だって言ってたのに」


 ここに来たときに、とても嫌そうだったのに、いいのかな。私は一緒に薬作り出来るのは楽しそうだし、誰かと一緒に出来ることは嬉しい。それに、弟子に私の知識を伝えるのも夢だったから、お願いしたいくらいだけど、レントは、無理してないのかな。


「何か、色々考えてるみたいだけど、別に嫌じゃない。俺が、魔女と一緒に居たいだけだ。」


 私と、一緒に居たいだけ…。


「その方が、魔女のこと見張ってられるし、また変な考えして、無茶しないよう見てられるからな」


 なんだ。一緒に居たいって、私の事を見張るためか。……ん? 何で少しガッカリしてるの?わたし…。


「わかったわ。それじゃあ、私の薬に関する知識をレントに全部教えるね。」


「そうだな。ゆっくり休んで体調が戻ったら、よろしく。今は、まず体を休めてからな。えーと、何か欲しいものとか、して欲しいことある?」


 …して欲しいこと。言ってもいいかな。でも、さっきは呼んでくれたし、これから一緒にいる時間が増えるなら、もう少し近づきたい。


「名前で、ルーナって呼んで欲しい。さっき、ルーナって呼んでくれたでしょ。また、呼んで欲しい」


 予想外の返答に、レントが戸惑っているのがわかる。少し考えてから、私の方をじっと見つめて、小さな声で「ルーナ」って言ったのが聞こえた。


 ただ、名前を呼ばれただけなのに、緊張して胸がギュウとして、今まで感じたことない感覚。嬉しいような恥ずかしいような…変だな私。

 ルドに初めて名前を呼ばれた時とも、初めてルドの名前を呼んだ時の緊張とも違う。なんだろうこの気持ち。


「おい!大丈夫か?顔真っ赤だぞ。熱が出てきたんじゃないか」


「だ…大丈夫。少し…寝るね」


「わかった。おやすみ。ルーナ」


 ルーナって名前が特別に聞こえる。あぁ、私やっぱり疲れてるんだな。今はまだ何も考えないで、思考停止して取りあえず今日は休もう。 


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